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俳句 ブギウギ 三月

四月来る楽し買物籐の籠
春眠や慣れぬ仕事の後悔が
これ観よと魚氷に上る唄ふ声
目を覚まし桜がさねの舞台袖
鼻つまみ人参は口へと向かふ

風薫る滑る縁側馬ごっこ
GHQ蠟國鳴くも旅行許可
吾子一人庇に届け紙風船
秋を待つ普通の母の決める道
吾子と歌夏の別れの風呂上り

角の立つ丸き卓袱台終わる夏
吾子の声耳から逃げて秋の空
丸ケーキは六分の一忽草
秋初め初めての家文初め
秋されや帰国前夜の星条旗

母帰国吾子の頬触る今朝の秋
板チョコや秋のアメリカ大きくて
闘病の父と娘と瀬戸の秋
裸電球水着の女の古写真
吸い口の温まぬ水や秋の夕

龜抱きレンズに笑顔秋の声
けふ明日が行き着くところ秋の山
人世旅出合ふ感謝を山帰り
秋団扇語らぬ父の語り事
替え唄を歌い合ひ逝きばったんこ

秋没日写真はみ出て斜の構え
松落葉足患ひて産みの母
秋の声母夫父と遺影かな
秋光の終の写真や龜抱き
金時計光り形見の秋景色

秋真昼ポスター選び右左
幼子ごとアイスクリーム選びたり
早秋の物別れの喫茶店
無理矢理の野山色づく座敷芸
ラインダンス客も巻き込み秋舞台

六月の大勢の中バースデー
板塀の温風至る裏小路
貧乏な魚屋育ちごみ鯰
お節介竹の皮脱ぐ反抗期
電話の音誘拐犯の夏は来ぬ

切り抜きのサイズいろいろ落し文
毛虫這ふ下校の吾子の影遠き
カーテンや小さき隙間の風涼し
半ズボン土管の広場だだ広し
マッチ棒夏のぼろ家のひとときぞ

夏夕べ待ち人の街大時計
本物と梅雨のロビーの逮捕劇
蛇のゐぬ電線ドラム積む広場
夏の夜の電気スタンド取調
目の前にかつ丼のあり梅雨あがる
揃ひ終へ刑事と別る夏の暮 

友のゐぬ学校帰り百日紅
音楽も吾子も一番蝸牛
夏夕べ一人広場の友や待ち
親育つこの子の背中麦の風
ありがとう言い合ふ夕餉送り梅雨

落葉踏む吾子のかけっこ早くなり
カステラの秋ぞ隔たる切り揃ひ
ライバルやトップの娘今年絹
風爽か旧知の友と楽屋裏
古亭主まさかの愛ときりぎりす

紅白の新旧揃へ大晦日
更生へ誘拐犯の庭木刈る
きつつきや聞こえるように大き声
露寒のアイスコーヒー引き締めて
脚立乗り篭一杯のオリーブの実

話せない遅刻遅刻と秋の晴
師宅辞す虫の居所秋の雲
秋の雷なによ言ひぐさ攻め言葉
焦燥の楽しさ忘る風の色
レコードの針の踊りの無月な日

勝負前運動会を出る出ない
子育ても勝負の世界秋の声
玄関へ声を残して秋の朝
リビングの紅茶の香り秋日和
牛蒡引く悔し恥ずかしこの企画
二人乗り野山色づく決めて道

紅白のクリスマス待つカーデーガン
ヘヤーメイクドレスのブーケやカトレア
大トリの歌ふ準備や大晦日
留守番の大年越しの踊るブギ
年の夜の撥ねる舞台のテレビジョン

大晦日高エネルギー歌ひきる
燃え尽きて糸を引き正月の雨
年始客客を虜のきみの歌
絶縁と歌わぬ君と三日かな
馬日の夜席を外してマネージャー

残る秋静かな響きピアノかな
雁渡し人待ち顔の門の前
星走るわくわくあの娘楽しそう
鴛鴦や二人の世界妻も無理
茸飯覆すこと出来ぬとは
冷ゆ会見今は大人のマネージャー

秋惜しむ引退理由年いって
そぞろ寒最後の花火輝きぬ
冷やかやマイク一本迫り来て
さやけしや苺ケーキのお疲れさん
踏ん切りのバトンタッチや秋暮れて

漸寒や座り続けぬピアノ前
朝冷えやこと報告の喫茶店
秋の昼門扉挟みて出る出ない
口閉じて歪みガラスの秋の庭
秋惜しむ引退の歌客の待ち

散る桜歌わぬ母はどんな母
菜の花やこんないい子はマミーの子
清明の花束溢る楽屋かな
花吹雪最後の舞台見納めぬ
黒鍵や夏の初めの〆舞台
夏立つや涙で踊り二階席
虹の立つスパンコールの舞ふ舞台
五月尽舞台にふわり指キッス
麦の秋義理と人情この家族

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