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俳句 舞いあがれ12月

検品や肩を凝らして十二月
十二月コストダウンの嵐中
十二月ヘッジファンドの息子来て
年守父の机の娘の絵
新事業飛び込み成せり年の夜

病み上がり手足伸ばせぬ冬の朝
リストラや冬めく日我に宣告
大寒や機械の手入れ手も縮み
梱包や大寒の日も手休めぬ
懐炉入れ最後の砦の眼差し

冬深し検査結果や胃潰瘍
察し逃げリーマンショック冬の旅
ベタ過ぎて病氣シーン林檎擦り
冬の暮父の様態ばんば待ち
退院を祝ふその先冬の海

縁側の好きを仰ぎて星月夜
秋を待つ天文台の星の裏
祖母捌き飛び跳ね鱗桜鯛
揺れ動き眠る縁側秋日影
黒電話みかん目をやり父の事

夏宵の並ぶ星座を諳んじて
古墳掘り土の話の夏休み
手び練りてかんころ餅や秋を待つ
翡翠色染めてチャペルや夏深し
辿り着くなみなれなく夏の波

春休み翼休めて五島凪ぐ
あつあつとかんころ餅と日向ぼこ
想い出や登校拒否の春終わり
縁側のトレーニング真似て四月
和歌送り紙飛行機のきみの春

牛タンを土産に帰りアノラック
面映ゆし息子の記事や十二月
郵便屋入社延期と冬の朝
帯広の豚丼の味冬宴
足捻挫椿の五島祖母の待ち

待てど来ぬ内定通知年の暮
受注量減りゆく師走世界危機
スーパーの息子に任しおでん味
仙台の牛タンの味卒業し
歓びて不安知らずや春の宵

途中下車父と合わせて冬初め
冷たしお好み焼きハート描けば
窓越しの幼馴染の十二月
告白は十二月の夜父母の前
雁渡し就職試験空は待ち

丸暗記口述審査秋めく日
秋の空野外飛行の目的へ
ラベンダー水平遥か秋落暉
手を握り秋夕焼の十勝岳
染めて色白樺林秋夕焼   

秋雨の空港の待つ明日審査
離婚書やポストの遠き秋時雨
母なのに女なのに機長になり
思ひ出す夏の空飛ぶ人力機
最終審査秋の初風君を待ち

教官機右に安心土用東風
晩夏飛ぶ釧路湿原水溜り
格納庫夏の帯広開けて待ち
無事帰り暑い最中の抱擁ぞ
秋分や最終審査近く待ち

南風良しセカンドソロの昂ぶりぬ
携帯や恋バナ長し夏の宵
テイクオフ十勝の夏の空の色
黒南風や着陸地変え釧路へと
ロールイン夏の釧路へ機首は向き

月並みな風邪の見舞いのアイスかな
熱冷めりアイスクリームのお礼を
鬼教官チェックポイント南風
帯広の麥の秋風一人飛び
夏の朝飛び立つを待ち格納庫

若夏の管制塔やファーストソロ
一人飛ぶ夏雲の上身震ひて
靑芝や着陸訓練百回
ソース掛く夏のお好み冷めて味
特訓や汗かき寝入り知恵熱か

夏浅し二度と会わない別れ道
若夏や不適の判子探す指
夏の宵二段ベッドの空いていて
告白や机の下の夏めく夜
格納庫夏の光が練習機

プリソロチェック夏の十勝や目につかぬ
不安待つ審査発表夏の午后
万緑や私情挟まぬ審査官
パイロット適応力を夏の風
麥の秋フェイルの友の初涙

舞いあがり機軸保ちて夏の空
花の日や離婚届とソロテスト
夏の雲管制官の和む声
後輪の優しく触れて夏めく地
一安心陽炎燃ゆる誘導路

緑の畑中札内の夏の空
やり直しタッチアンドゴー五月晴
放課後のシュミレーションや夏空へ
夏めく夜機長は一人揺らげども
夏の雨予定の狂い修正し

帯広の翼の揺れてあいの風
夏浅しパネル相手の練習日
夏めく夜操縦桿の手を握る
風薫るパワーアイドル着陸へ
青嵐意見の合わぬ飛行前

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