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まんぷく俳句 11月

11/5
たどりつく五月の海へはしゃぐきみ
夏の部屋吹き込む汐香浜の砂
夏の暮アトリエの椅子はしる筆
二人の前波とたわむる夜光虫
11/6
学び行く蒸され列車赤穂へと
五月の波潮汲む足へ砂流る
夏日照り盥の水が生温き
11/7
眠けれど夏の夜中の机上案
81枚鉄板並べる夏の浜
夏風の吹き込む座敷伏せ頼み
夏没日募集貼り紙新しく
11/8
風そよぐ夏の海岸杭を打ち
真夏の夜夢が膨らむ塩作り
夏の飯天手古舞で塩足りず
11/9
焼けた鉄板並べる浜も風の死す
熱くなり浜の鉄板南風吹く
土用凪浜の宿舎の雑魚寝かな
夏の浜清しき乙女あらわれて
11/10
浜に鉄板夏の雲ない作り塩
夏の空負けじと唄い士気高め
鉄板の先光煌めく夏の海
夏日向あふれる桶や波打ち際
11/12
夏の光かざして見せる認可証
波がくるじゃり音静か夏の昼
記念写真夏の光がまぶしくて
カマス積む炎暑ものせぬ塩の香ぞ
11/13
尋ね人貼り紙あせし夏の市
蛸がないたこ焼きを喰う暑き日々
夕涼み塀越し聞こゆハーモニカ
夕蝉や赤城の山も赤くなり
11/14
あいの風カマスに詰めし白き塩
開襟シャツ鯛を捌きて腕をみせ
炎天下岸辺に座り糸を垂れ
蝉が庭これが最後の債権者
11/15
入道雲釣り糸光る防波堤
土用明け沢庵の汁まな板に
夏日影出来立て塩が白きかな
夏日向札束数へ指の唾
11/16
夏の朝光り一束玄関へ
描き続け頬まで汚す夏の宵
土用前金なく歩く闇市場
炎昼やうでを上げたる靴磨き
11/17
会長室風が吹くぬく夏衣
夏市場混雑にいて尋ね人
夏涼し出せぬ言葉が枕の高さ
風薫る告げてみごもり弾む声
11/19
風光る白き塩盛り量る枡
臨月の腹を撫でたり春の風
春の昼慢心梯子踏み外し
花冷えのあるじ居ぬ部屋書置きし
11/20
春の光広場に集い空仰ぎ
春風と凸凹道が眠気よぶ
春まけて腹の子けりて云うそとへ
忘れ霜美味しラーメン啜る音
11/21
春深しパンツ干す竿まだ青し
尋ね人ラヂオが人の春は来ぬ
春終わる貼り紙に書く尋ね人
春の宵出てゆきし人待つつらさ
11/22
北窓を開くモデルがははを切りとりて
春障子座敷に集う思案顔
うららけし薪割り音が響きけり
陣痛やのどけし時をいつぺんに
11/23
春の海波打ち砂利を引き戻し
波終わるパシャと続く春の夕
春日受け出産未だかと耳向けて
産み疲れ春の障子白きかな
11/24
夏小波じゃりが奏でる子守歌
夏日射す栄養不足説く博士
蛋白質探す足元蛙飛び
天の川見えぬと妻の目をのぞき
11/26
炎熱や鉄板流る水踊り
熱風の玄関開けて立ち話
青嵐イーゼルの横吹き去りぬ
扇子出す夕凪ぐ部屋の商談
11/27
夏の岬まわりて試す手榴弾
夏風邪やうろたえるママ手放せず
炎熱を耐え製塩も不満足
開襟シャツ試作で汚れ替え間なく
11/28
夏の海エイと気合で石を投げ
武士の娘諍い鎮め夏の宵
夏の夢枕夫婦が道を姉が説く
熱帯夜鬱憤加増爆発へ
11/29
浜昼顔おだやか波音帆かけ舟
夏日さけ話はずます風も入り
塩作り鉄板映す夏の雲
夏の夕餉未来を語りて腹満ちす
11/30完成品握りバンザイ晩夏かな
夏市場不評の品売れ残り
夏の昼まずいいらない先暗く
秋近し売れ先決まる人の為

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