読書記録『保健室には魔女が必要』

 今回は石川宏千花著『保健室には魔女が必要』。
 4月30日はワルプルギスの夜。それにちなんで、というわけでなくたまたまなのだが魔女が出てくるお話。

 本書の主人公はとある町の中学校に勤務している養護教諭、つまりは保健室の先生だ。でもじつは魔女でもある。彼女は七魔女決定戦なるものに参加している。それは七魔女の空いた1席を決める戦いで、自分が考案したおまじないを最も多く定着させた魔女が選ばれるのだという。
主人公は保健室の先生として、魔女として、保健室にやってくる子供たちにおまじないを教えていく。

 この七魔女決定戦の面白いところは、ただおまじないを考案するだけでなく、他の人のおまじないに異を唱える場合には決闘を申し込める、という点だ。しかもこの決闘、魔法ではなく肉弾戦で行われるのだ。

 魔女たちは人間界で普通の人間として紛れ、それぞれの方法でおまじないを流通させていく。作中に何人か魔女は出てくるのだが、その中でも主人公が一番人間に寄り添っておまじないを与えているように思った。就いている職業が学校の保健室の先生だから、というのもあるのかもしれないが。

 七魔女とは何なのか、なぜ人間界でおまじないを流通させる必要があるのか、などこの世界の魔女の詳細があまり多く語られていない所は少し物足りない感じがした。
 それでも物語でイメージされがちな「魔女」とは少し違う描かれ方をしていて面白かった。