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マレーシアでどこまでネイティブになれるのか

マレーシアは非英語圏ですが、東南アジアの中ではシンガポールの次に英語が通じる国で、実際外国人のほとんどは英語のみで暮らしています。政府の公式発表や公共料金の請求書などはマレーシア語ですが、レストランのメニューも、銀行の契約書も、コンドのお知らせも、ジムでインストラクターの説明も全て英語なので、それだけ英語を不自由なく扱う人が多いということです。

さて、公立や高卒でもそれだけ英語力のあるマレーシアで、さらに英語で授業をするインターに入れると、子どもはバイリンガルになるのか?小さい頃からインターに入れれば、ネイティブのように英語を操るのか?イギリスやアメリカの大学入学や就職まで使えるレベルなのか。

結論から先に述べると、いくら早いうちからインターに入れても、マレーシアではアメリカやイギリスやオーストラリアのような英語圏のネイティブと同じにはなりません。理由を一つ一つ挙げていきます。

1. インターの教員による違い

わたしの子が最初に入ったインターは、ローカルインターではありませんが、欧米人の教員はいなくて、マレーシア3民族に加え、他のアジア圏や中東の先生もいて、イントネーションも英語のレベルもそれぞれ違う先生方の授業を聞いていました。英語の先生はもちろん発音も文法も正しいのですが、例えば数学の先生の英語力はそうでもなくて、『月曜日までに提出しなさい』の前置詞が正確ではなかったり。ただ、日本人がいつでも正しく助詞を使えているかというとそうではないですし、最近はすごく/すごいの使い分けをしない人も多いです。ですから、各教科の授業はきちんとわかりやすく教えてくれるならいい、と思えば問題はありません。しかし、せっかく入れたインターで、正しくない英語が定着してしまうこともあります。漢字の書き順のように、一度定着したものはなかなか矯正がきかないこともありますから注意が必要です。

どうしても最初からネイティブイングリッシュのみで育てたいなら、KLにはアメリカンスクールもブリティッシュスクールもいくつかありますが、学費はどこも高額です。エージェントは、物価が安い、インターも日本に比べれば格安、とマレーシア教育移住を勧めますが、日本人がイメージするような、教師が欧米人、設備もきちんとあるという学校なら、日本のインターと変わらないかそれ以上です。

2. 友達はほとんどがノンネイティブです

エージェントや、インターのWebサイトには、欧米、東南アジア、東アジア、ミドルイーストと国籍豊かな子ども達が写っています。しかし、学校にもよりますが、一番多いのは、中華系マレーシア人か韓国人、これで60%以上を占める学校がほとんどです(韓国は日本より先に母子留学でマレーシア移住が始まり、その数も倍以上で、韓国人学校のようなインターも少なくありません)。また、低学年は日本人で溢れている学校もあります。家庭内も英語で話しているというお子さんはそれほど多くないので、どうしても第二言語どうしの会話になってしまいます。どういうことかというと、シンプルな言い回し。小学校高学年にもなれば発音はよく、スピードも十分なので、ネイティブ並み!と感じてしまいがちですが、文章にすればネイティブカントリーの子との差が出ます。そして、本当なら成長するに従って語彙も言い回しもバリエーションが出るのですが、そこはネイティブカントリーではないので、それほど成長しません。要するに、第二言語で使う人に囲まれて成長するのです。

例えばマレーシアでスコールはしょっちゅうです。イギリス人なら"It is raining cats and dogs." とでも表現するような雨も、マレーシアでは、ほぼ"Heavy rain"という言葉しか聞かないでしょう。強調するなら“Really heavy rain"です。日本なら大雨、土砂降り、豪雨、ザーザー振り、バケツをひっくり返したような、などの表現がありますが、日本語検定1級取得者でもここまで豊かに表現する人はなかなかいません。もちろん、言われたらわかるけれど、自分から使う段階まで育つ土壌が無いのです。前回の母語の語彙が少なくなるのと同様に、英語での表現もネイティブ並みとはなりません。

3. 時制や三単元を気にしない国民性

もちろん、日本人のように、細かいことを気にして喋れないよりいいでしょう。ただ、元のマレー語が、Sudah、もしくは昨夜/先週/去年などの日時を入れて過去形にするので、話す時やテキストで細かい時制を気にしません。Alreadyを入れれば動詞が原形でも過去文です。私の友人の一人はキャビンアテンダントをしていますが、彼女からのテキストも、時制や動詞は原形が多いです。知らない訳ではない、使おうと思えば使える、でも普段はあまり気にしません。

同じように、現在完了/過去完了、仮定法過去完了などもほとんど使われません。もちろん学校では習いますし、普段から英語に慣れ親しんでいるので、相手が使う時は正確に理解しますが、これらの文を通常使うマレーシア人はあまりいません。日本語の敬語や謙譲語のように、完了形や仮定法を正しく使えるのがネイティブスピーカーの教養の一つと聞いたこともあります。インター出身でも周りが使わないのに自分から使うはずはありません。

まとめ

散々、イングリッシュネイティブスピーカーと同じようにはならないと書きましたが、もちろん、日本で暮らすよりはるかに英語に囲まれて育ちます。ただ、マレーシアでは決してネイティブカントリーと同じにはなれないというのは知っておくべきです。母国語についてでも書きましたが、言語を深めていくというのは、その言語に囲まれて育たないと難しく、第二言語として使う国で英語で育てるということがどういうことか知ってから、インター入学を考えてほしいです。


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