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贈る側から、贈られる側へ。|『そうか、君は課長になったのか』

先日、主人が「これこれ」と言って手に取った本。「入社2,3年目くらいのときかなぁ。仲良しの先輩が課長になったから、あげたわ~」
聞けば、先輩は10以上も年次が上だったよう。上下関係はフラットな会社だったけれど、それにしても「おまえなぁ~」と言いながら受け取った先輩と、当時私にとっては同期だった主人の関係に、思わずにやけながら今回私も読みました。

私がこの本に興味をそそられたのにはもうひとつ理由があって、著者がこれを書くにあたり影響を受けた本として、「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」をあげていたから。私も繰り返し読み、また香港にまで持ってきているほど、仕事のマインド上でお守りのように思っている本。

実際、この「そうか、君は課長になったのか。」は、手紙で細やかに愛情豊かなアドバイスを書き送る形をそのまま踏襲しています。

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」では、息子の学生時代からビジネス(会社)を任せられるまでが取り上げられているのですが、本著はそれよりももうちょっと身近な課長という立場だからこそ、誰もが課長というポジションを挟んで体験する、理想と現実のギャップにまつわるあれこれが綴られます。

できるだけ部下の良さを伸ばしてあげたい、
会社で活躍できる環境をあげたい、
ライフワークバランスも大事、
成果主義、仕事の報酬は仕事で…

ある意味では、会社員的理想を最大限掲げたような切り口で、課長としてどう対処していけばいいか、という話はまぁよくあるものではあるのですが、それらがうすっぺらくないのは、父や兄を思わせるような温かさと、やはり一段高い視点があるからだと思います。(ちなみに、東大卒、東レで同期トップで取締役に就任されています)

(良いところをみつけよう、伸ばそうとしても)可愛げのないのもいる、それでも箸にも棒にもひっかからないのもいる、なんて、「いや、本当そうなんですよ。どうしたらいいんですかね〜」と思わず言いたくなるような気さくなお人柄がありながら、社内政治と仕事としてなすべき志を両輪として均質に語り、どちらも欠くべきではないと言うようなバランス感覚に、日本の大企業らしさがあり、また知性を感じます。

かつて私が会社員だったころ、上司が好んで語っていた「虫の目、魚の目、鷹の目を持って仕事を行うように」という言葉。あの時は、わかったつもりでできていなかった。それを改めて教えられる著でした。そして、あの時この本を送った先輩と年が変わらなくなった主人が、今、何を思って読むのかというのも面白い。そうやって違う自分が同じ考えに触れられるって、読書の醍醐味ですよね。



よりたくさんの良書をお伝えできるように、頑張ります!