北朝鮮が日本に向けてだけミサイル発射を繰り返す理由を考えるべき

北朝鮮が日本に向けてだけミサイル発射を繰り返す理由を考えるべき  2022年10月6日に掲載

 日本時間10月4日午前7時22分に北朝鮮北部の慈江道・舞坪里(ムピョンリ)から発射された弾道ミサイルが、同7時28~29分に高度1000キロ弱で青森県上空を通過し、7時44分に太平洋上の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。

 9月26日から29日まで米空母・ロナルド・レーガンも日本海に展開して米韓共同訓練が、30日には日本も加わり日米韓で共同訓練が行われたため、北朝鮮はこれに反発して9月25日からミサイル発射を(今回も入れて5回)繰り返している。

 北朝鮮の日本上空を通過する弾道ミサイル発射は2017年8月と9月に続いて3度目であるが、今回の飛行距離は4600キロと過去最長で、グアムまで射程圏としたことになる。

 10月4日の日本政府の対応は、7時27分にJアラートを北海道と東京都の島嶼部に、同29分に青森県に発信したが、東京都の島嶼部は間違いで、青森県には上空通過後に「避難するよう」警告したことになる。さらに青森市では、あらかじ登録していた4000人にメールが届かず1時間かけて手動で送信した。

 そもそも1000キロ近い上空では迎撃が不可能で、発射から数分で日本に到達するため「本気で狙われた時」は役に立たない。

 しかし根本的な問題は、なぜ米韓あるいは日米韓の共同訓練に対し、北朝鮮が日本に向けてだけミサイル発射を繰り返すのか? 

 舐められているからである。

 これまで北朝鮮がミサイルを発射しても日本政府は「遺憾である」と口頭で抗議するだけで(だいたい北朝鮮とは国交がないので中国政府に「伝達」を頼むだけで)、実力行使を全く行わないからである。

 さすがに10月4日には岸田首相がNSC(国家安全保障会議)を招集し、同日夜にはバイデン大統領と電話協議を行っている。米国もロナルド・レーガンを日本海に呼び戻し、海上自衛隊と在日米海兵隊の戦闘機12機が東シナ海上空で共同飛行訓練を行い、5日早朝には米韓が日本海の「標的」に向けてミサイル4発を発射して反撃能力を見せた(ただ命中は2発だけで、別に韓国が発射したミサイルは基地内に落下している)。

 経済制裁とコロナ危機による国境封鎖で国民が飢えている北朝鮮が、これだけ高額のミサイル開発と発射を繰り返すことができる理由は、中国、ロシア、それにイランといった「独裁国家」、場合によってはインドと、パキスタンといった上海協力機構(SCO)オブザーバー加盟国から「核兵器、ミサイルの開発・製造」を請け負っているからと考える。

 「独裁国家」でも上海協力機構加盟国でも経済制裁のリスクがあるため「おいそれと」核兵器やミサイルの開発・製造を拡大するわけにはいかない。そこで北朝鮮が「まとめて」請け負うわけであるが、それで金一族が潤い、核兵器を含む最新鋭兵器を自ら装備でき、イスラム過激派などブラックマーケットで「顧客開拓」ができる。

 それで米韓あるいは日米間の共同訓練に北朝鮮が「代表して」日本に向けてだけミサイル発射を繰り返すことになる。

 北朝鮮のミサイル発射も「技術的な調整」「デモンストレーション」のためである。また近いうちに核実験を行い、潜水艦発射型ミサイル(SLBM)や極超音速兵器の開発を急ぐはずである。

 日本に向けてだけミサイル発射を繰り返す北朝鮮の背後には、少なくとも中国とロシアの「意向」が入っていると考えるべきである。

 それでは日本はどうすれば中国、ロシア、そして北朝鮮に舐められなくて済むのか?

 まず日本のミサイル配備は迎撃用に限られているが、これを敵基地攻撃にまで早急に広げる。敵基地攻撃は安部元首相が暗殺されてから急激に議論が萎んだままである。

 そして今後のミサイル攻撃の主力となる潜水艦発射型ミサイルの開発に注力する。この際、使用する潜水艦は航続距離とパワーが違う原子力潜水艦が好ましい。2021年9月に発足した米英豪による原子力潜水艦の開発および配備の仕組みがAUKUSであるが、これにぜひ日本も参加すべきである。もともと日本の潜水艦製造能力は高い。
 
 要するに日本も「攻撃型」の装備を積極的に整える方向に転換し、その変化を大っぴらに中国、ロシア、北朝鮮に知らしめなければならない。「どうせ出来っこない」と思われているから舐められるのである。

 確かに明らかに中国や北朝鮮の「意向」を反映する勢力や大手マスコミがいるため簡単ではない。また財務省がすでに緊縮財政路線に踏み切っているため予算の制約も大きいが、ここは国家存亡をかけて変わらなければならない。安部元首相に代わる「強いリーダー」が早急に必要である。

 また北朝鮮は本日(6日)早朝にも弾道ミサイル2発を発射した。モタモタしている余裕はない。

2022年10月6日に掲載