2023、春。

3月1日。
バイト帰りの電車に制服姿で卒業証書を持った高校生が乗ってくる。
インスタを開くと後輩たちが目を赤くしながら写真を撮っている。
気分だけちょっと高校生を味わいながら。卒業からの1年間を思い返してみる。分かっていたつもりだけど特に何もしていない。つくったものは数知れているし、今日発表されたGPAは GPAとはとてもじゃないけど名乗れないような数字だった。最近はバイトばっかしているくせにお金は溜まっていない。成長したことと言うと新宿と池袋で迷わなくなったところくらいだ。
自分としてはそこに対しての焦りや不安はもちろんあるけど、いいことなのか悪いことなのかそんな不安をも一蹴で吹き飛ぶくらいのくしゃみが毎日止まらない。

ちょっと前まで2月は2月のくせに寒すぎると文句を言っていたのに今ではすっかりあったかくなって、その代償と言わんばかりに花粉が飛び交っている。
それはもう無敗伝説を持った横綱が負けた時の座布団のように飛び交っている。
夜中の公園で1人寂しく泣いている女性が、1時間前に行ったであろう口喧嘩の悪口の数くらい飛び交う。
同点で迎えた9回、先頭打者の正面のゴロをサードがエラーした時の甲子園の阪神ファンのヤジくらい飛び交っている。

もしかしたら一個前の公園例えの下位互換を書いてしまったかもしれないとふと思う。
だけど恋人同士の喧嘩に対する解像度が低いからよく分からない。

とにかく花粉が辛すぎる。ただ毎日を生きているだけなのに毎日風邪気味みたいな気分で過ごさないといけない。
ただせっかくの春の陽気を花粉ひとつで台無しにされるのは癪に障るし、どうせなら駅までの道も花を啜りながらではなく春らしくスキップしながら歩きたい。
その願望を叶えるべく試行錯誤をしてひとつの解決策を見つけた。それはあるバンドの曲を意識的に聴くようにするというもの。
なのでここ数年、この時期は決まってスピッツを聴くようにしている。スピッツの春の歌を聴きながら出かける事で日本の春を満喫する。

ただその対処法にも最近黄色信号が点り始めている。花粉の季節にスピッツを聴きすぎたせいで、春夏秋冬関わらずスピッツを聴くと目が痒くなる。花粉の季節=スピッツが自分の中で定着しすぎてしまった。人生からスピッツを失うって結構大きい事で、もしこの花粉対策が日本中に広まったら日本が5%くらい暗くなると思う。あとカラオケで困る人が増えると思う。カラオケにおいてのスピッツは居酒屋のとりあえず生くらい定着しているはずだから。

結局今年も花粉との戦いは決着をつけずに終えそうだ。人生の半分を超える10年以上花粉を倒しきれていない時点で花粉の勝ちで決着はついていそうだがそこは日本人らしく武士道の精神に乗っ取って降参するまで戦い続けたいと思う。

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