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愛のメール②

ラジオネーム:カワラ番長

「おやじ!母乳一杯!」

残業終わり。
疲れ切った身体をカウンターの椅子に預け、俺はおやじに一杯の母乳を注文した。客は俺一人だった。

この街に越してきて、すぐの頃。
何気なく立ち寄ったこの居酒屋だったが、入った瞬間、不思議と故郷のような居心地の良さを感じた。
おやじが一人で切り盛りしているこの小さな居酒屋は、決して繁盛店というわけではないが、細かなところまで配慮が行き届いた、暖かい店だった。
俺がこの店の常連となるまで、そう時間はかからなかった。

「燗……人肌の温度だったね……」
おやじは、そう口数の多い人じゃないし、俺も俺で、あまりぺちゃくちゃとお喋りしながら飲むのは好きじゃない。
人によってはとっつきにくい店だと思うかもしれないが、仕事で疲れた俺にはこの距離感が心地いいのだ。

絶妙な温度に燗がつけられた母乳が運ばれる。
おちょこに注ぎ、くいっと飲み干す。
飲み口のいい暖かい液体が、喉を通り過ぎる。
ああ……心と身体が洗われていく……。

気付くと俺は、一匹の小さなサラマンダーに変身していた。
俺はカウンターの上の物を蹴散らしながら、おやじの豊満なバストに向かって飛んでいった。おやじはそのはちきれんばかりの双丘で俺を包み込んで、こう言った。
「お客さん……弁償してくれよな……」
俺はその言葉を聞くと、さらさらと細かい塵になって消えた。
居酒屋には、静寂が戻った。

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