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森ノオトの記事は物語を読んでいるみたい。会ったことのない人の人生がドラマのように浮かんでくる|白川薫さん(サポーター/めぐる布市ボランティア)

森ノオトにかかわる人たちの声を聞きながら、ローカルメディアのあるまちの現在を描いていくインタビュー企画。5回目は、森ノオトのAppliqué事業部「めぐる布市」でボランティアとして関わってくださっている白川薫さんです。コロナ禍、大きな会社での仕事に終止符を打ち、現在、東京と長野で二拠点生活を送っている白川さんは、森ノオトというメディアをどう見ているのでしょうか?手芸好きの友達同士でもある、編集部スタッフの佐藤美加がインタビューしました。

——白川さんはめぐる布市の参加が、最初の森ノオトとの関わりでしたね。めぐる布市は、どうやって見つけたのですか?
 
私は新卒から26年間、UR(独立行政法人都市再生機構)で働いていたんですが、コロナ禍でこれからどう過ごしていけば幸せに生きていけるのかを立ち止まって見つめ直す時間ができて。2021年の4月に思い切って退職をしたんです。時間に余裕ができたので、もともと好きだった洋裁を習ってみようとInstagramで見つけた近所の洋裁教室に通い始めたある日、先生の過去投稿を眺めていたら可愛らしい生地を使った小物の写真に目が止まって。生地を買ったのは「めぐる布市」というところと紹介されていたので興味を持って、すぐに調べて参加申し込みしちゃいました。実際布市に足を運んでみて「こんな近くにワクワクする空間があったなんて!」と一度でハマったんですよね。元来裏方気質なこともあり、どんな人がどうやって運営をしているんだろう?ということが気になって、森ノオトの活動説明会にオンラインで参加してみたんです。
 
—— 手芸好きの方あるあるだと思うのですが、めぐる布市の活動からまず最初に知ると、森ノオトというNPOが運営していることを後から知ることになって、ちょっと驚きますよね。あれ?メディアも、コミュニティも運営しているの?何をやっているところのなの!?って(笑)。活動説明会に参加してみて、“NPO法人森ノオト”は白川さんの目にどんなふうに映りましたか?

NPOって文字面は目にしていても実際に何をしているのか、どう運営をしているのかということまではきちんと理解しておらず……。活動説明会が、森ノオトが何をしている団体なのかを詳しく知る機会になりました。理念がしっかりしていること、何をするにもみんなで一つひとつ話し合って決めているということを知ってすごくいいなと思ったんですよ。
これまで勤めていた会社は大きな組織で、その公的な性格から何事も時間がかかり堅い風土がありました。森ノオトのように、“ビジョン” “ミッション”を日々意識しながら仕事をしたり、試行錯誤を繰り返して、話し合いながら新しいことにみんなで挑戦していく、というのはなかなか難しい職場だったかも……。森ノオトの運営スタイルは素敵だなと感じています。
 
—— その活動説明会を聞いた後すぐ、めぐる布市のボランティアになることを決めたんでしたよね。この1年半実際活動をしてみて、どうですか?

“捨てるとつくるを楽しくつなぐ”という理念に共感して活動してますし、なにより、作業中ずっと好きなものに囲まれている、という状況が、やっぱりすごく楽しい(笑)!

白川さんは、普段の布市ボランティアでの布の仕分け作業のほか、ゾウノハナでのワークショップや、布小物制作のお手伝いも。2022年11月に行われた「あおばを食べる収穫祭」では、会場にかけるガーランドの制作も手伝って下さいました!

ボランティアをやっていてよかったなと思うのは、手芸の話題で盛り上がれる話し相手ができたこと!長い間フルタイムで仕事をしていた私にとって、会社以外での友達づくりって実は難しい。手芸という好きなものが一緒、活動エリアも一緒、という仲間やコミュニティができたことはうれしいなぁって。

やはり26年勤めた前職の職業柄、地域コミュニティづくりにはもともと関心があるんですよね。めぐる布市はじめ、いろいろな事業を運営しながら、森ノオトがいろんな層をターゲットにして、地域のことを知ってもらおうとしているのが率直にすごいなぁ、素敵だなぁと思ったりもしています。

めぐる布市がきっかけで、私も白川さんの友達になりました!こちらは一緒に出かけた毛糸屋さん。帽子もワンピースもカーディガンも。この日のお洋服は全部、めぐる布市で購入したもので作った、白川さんのハンドメイド作品です

—— ローカルメディア「森ノオト」も、きっとボランティア開始の前後から読み始めているんじゃないかなと思うんですが、どうですか?
 
そうですね。布市がきっかけですけれど、それから森ノオトサイトの記事の方もチェックするようになりましたね。私は横浜市民ではなく町田市民なので、最初の頃は横浜市のことにあまりどっぷり詳しくなってもなぁ、と思って、目についた自分に興味のあるタイトルの記事だけ拾い読みしていた覚えがあります。そのうちに町田含め周辺地域の記事があることも分かり、おー頑張ってるのね!って(笑)。
中でも食記事は好きでよく読みますね。自転車に乗るのが趣味なので、記事にあった気になるお店をスマホのマップにチェックしておいて、サイクリング途中に寄ってみることもよくあります。最近だと、SOCORAヨリドコも行きましたよ。どんなお店なのか、前もって読んでおいて、実際に足を運んで体験してみるというのは、やっぱり楽しい。

旅先で自転車に乗る白川さん。国内はもちろん、海外でも自転車に乗って旅するとか!こちらはカンボジアでの一コマ

—— 白川さんは今、二拠点生活をしているんでしたよね。

そうなんです。八ヶ岳の西側にある長野県諏訪郡原村の家と、町田の家を、季節にもよりますがだいたい月に半分くらい行き来する生活をしています。コロナ禍以降、夫はほとんど在宅で仕事していますし、娘の大学進学で子育てはほぼ卒業というタイミングでもあったので。
 
—— 八ヶ岳でも自転車に乗って、食べ物屋さん巡りをしたりしますか?

しますします!あちこちに置いてあるフリーペーパーを参考にお店巡りをしたり、森ノオトみたいな地元のローカルメディアをチェックしたりもしますよ。
 
—— そうなんですね!森ノオトとそのメディアには、何か違いがあったりします?

うん。ある気がする。あると思う。森ノオトはちょっと他のとは違う感じがする。でも、その違いってなんでだろう?うーん。違うんだけどな。何が違うんだろう。うーん……。言語化できないな……。(考えること数分)
 
—— じゃあ、宿題にします(笑)。森ノオトとの違いが何か分かったら、メールくださいね!


インタビューを終えて、数日後。白川さんからこんなメールが、私のもとに届きました。
 
「宿題となっていた他のローカルメディアと森ノオトとの違いについて。我ながらうーんと悩んでしまったのですが……。
へーこんなお店があるんだ、こんな商品を売ってるんだ、今度行ってみよう、という情報を単に得られるというだけではなくて、森ノオトの記事は物語を読んでいるような感覚、かな。私自身は会ってもいない取材対象の方たちの人生(のほんの一部なんでしょうが)がドラマのように脳裏に浮かんでくる気がします。取材しているライターさんが思ったこと、感じていることも合間に書いてあって、うんうんその反応わかるわ〜と共感したり、実際そこに行ってライターさんと同じ気持ちになっている自分の姿を妄想してみたり。
これまでの自分の人生において全くご縁のなかった類の人やサービスについても、世の中いろんな人や物があるんだなとしみじみ思ったりします」
 

(おわりに)
私は今、白川さんからいただいたメールを何度も読み返しています。「森ノオトの記事には物語がある」。綴られていたこの言葉がうれしく胸に響いているからです。なぜならこれは、ライターでもある私が、森ノオトで記事を書く時意識していることとも、ぴたりと重なっていたから。
この街で暮らすそれぞれの人生に光を当てて、それぞれの物語にスポットライトを当てて描き出したい。それが読み手の人生の物語と共鳴しあうとき、きっと、なにか新しい化学反応を起こしてくれるはず……。そんなひそやかだけれど祈るような気持ちが伝わっていたのかなと思うと、記事を書く時に味わう生みの苦しみも報われた思いです。
白川さんが、記事で読んだお店に足を運んだように、めぐる布市のボランティアに応募したように。それぞれの歩む人生のそばで、一歩踏み出そうとするその背中をそっと押す記事を、これからもライターみんなで作っていきたい。40名の森ノオトライターの持つ40通りの視点が、きっとこれからも誰かの心に届く瞬間をつくっていける。インタビューを終えた今、確かな希望で、気持ちがぐんと前を向くのを感じています。
(取材・執筆:佐藤美加)
 

この連載は2023年1月に迎えたNPO法人設立10周年を機に、「ローカルメディアのあるまちづくり」を、森ノオトにかかわる人たちの言葉を通じて描いていく企画です。
ウェブメディア「森ノオト」は、横浜市青葉区を拠点に、市民ライターの皆さんと共に誰かの豊かさにつながる記事を発信しています。生活者の正直な言葉で記事をつくっていくために、広告に頼らず寄付での運営を目指しています。2023年はこれからの10年に向けてバースデードネーションを実施中です。応援どうぞよろしくお願いします!
 
■森ノオト法人設立10周年バースデードネーションはこちらからhttps://syncable.biz/campaign/4135

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