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点がたくさん集まって円になる。“誰か”の “いつか”のために、記事を発信したい

ウェブメディア『森ノオト』で記事を書く市民ライターさんに、これまで書いてきた記事を振り返りながら、「森ノオトで記事をつくること」について語ってもらうインタビュー企画をスタートします。
 
一人目は、2020年から森ノオト編集部に参加し、地域のエコな取り組みや福祉活動をおもなテーマに記事を書き続けている塚原敬子さんです。敬子さんがこれまで書いてきた記事は、どのような思いから生まれたのでしょうか。普段はダンス講師として活躍する敬子さんが、森ノオトで発信を始めたきっかけや、記事を書くことで得られた実感を伺いました。
 

——敬子さんは2020年から森ノオトで記事を書き始めて、現在12本の記事が掲載されていますね。森ノオトで発信を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
 
私には「1年に1個新しいことをする」というモットーがあって、その挑戦の一つが森ノオトライターでした。仕事で広報に携わっていたことがあり、発信は身近だったんです。
 
介護や子育てなど、ライフステージにおける困り事を私は割と早いタイミングで、たくさん経験した実感があります。それを今、社会の問題としてどう解決できるのかと調べていくうちに、地域にはさまざまな取り組みや居場所があることに気づきました。
困り事を抱える当事者にとって、解決の助けになるような情報を知っているのと知らないのとでは大違いだから、自分が知ったことを少しでも広めたいと思って記事にしているんです。
 
例えば、豊かな人生が円の形を描くなら、円は小さな点がたくさん集まってできていると思います。そんな誰かの人生をつくる点の一つとなるような情報を、記事として発信できたらいいなと思っています。


子どものサードプレイス(家庭でも学校でもない第三の居場所)や認知症への取り組み、資源選別センター見学の体験記など、福祉やエコをテーマに地域へ光を当ててきました

——敬子さんのこれまでの記事を振り返ると、「地域の居場所」がキーワードの一つになっていると感じられます。2021年に掲載した、たまプラーザにある私設図書館「ぷらに」は、地域の子どもたちのサードプレイスとして紹介し、反響がありましたね。
 
そう、森ノオトスタッフの方の一人が、お子さんが不登校になって気を揉んでいた時に、「ぷらに」を知って励まされたという話を聞いた時はうれしかったです。記事を通して、手を差し伸べられたんだって。
 
——「ぷらに」を取材しようとしたきっかけは何だったのでしょうか。
 
「ぷらに」の運営者の青柳志保さんは、地域活動の中で名前をお見かけしていて。図書館を立ち上げるって聞いて、私が持っていた本を100冊ほど寄贈したことが、「ぷらに」とつながるきっかけでした。「ぷらに」は小学生から25歳までの方や障がいのある子ども、不登校の子どもたちの居場所となっているボランタリーの場で、そういう図書館に寄付してたくさんの人に読んでもらえることが、本にとっても自分にとっても幸せだと思えて。そんな場を紹介したいと思って記事にしました。

取材当時から移転し、現在青葉区美しが丘に拠点を構える「ぷらに」は、「ギフトエコノミー」の考えを実践し、たくさんの寄贈者の「読んでほしい」が集まった私設図書館です。記事では設立への思いや場の様子にふれられます

——「地域の居場所」には前から関心があったのですか?
 
実家の環境が大きく影響しているかもしれません。私の実家は助産院で、「お産は待ったなし」ということで、時間問わず、さまざまな人が家にいる環境でした。誰でも中に入れてもらえて、何をしていてもいいというような所で、そんな出入り自由な居場所の大切さを私は知っていたんです。
 
——まさに「ぷらに」みたいな場所だったんですね。
 
そう、だから応援したくなる。気持ちだったり、自分ができることを与え合って……お金だけじゃないような人とのつながりの中で私は生きていきたい、と思っています。だから私は、自分の知っていることは、ちゃんと周りに伝えていきたいと思うのかもしれません。
 

人とのつながりが希薄になったコロナ禍はつらかったと、敬子さんは振り返ります。写真は敬子さんの記事の一つ「アオバック」の取材記事。この記事は社会の厳しい状況が続く中、支援が行き届きにくかった小売店のために何かできないかという、商店会の枠を超えた団結に感銘を受けて取材に動いたそう

——森ノオトで記事を書くことで、敬子さんに生まれた変化はありますか?
 
変わったというよりも、定着したという感じかな。自分が普段感じていることとか考えていることは、何もしないと漠然としたままだけど、記事として書くことで「私の根底はここだ」と改めて気付けると思います。自分がいいと思えるものを再確認できるから、本当に伝えたいと思えることを発信できる。
 
発信した情報が受け取り手に今必要じゃない情報でも、頭の片隅に残って、必要になった時に引き出すきっかけになるかもしれない。そんな流れに森ノオトで関われているとしたらうれしく思うし、そのきっかけ一つひとつが、はじめに話した豊かな円を描く“点”になるのではないでしょうか。
 
ただ、自分の思いを言葉に乗せるって難しい。言いたいことってなかなかまとまらないし、思いが強いほど客観的に考えられなくなってしまいます。そんな自分ではうまく表現できないことに、森ノオトは寄り添って、世に出せる形を一緒に考えてくれる。「こんな風に思っているのね、こう書いたらどう?」とアドバイスをくれて、それがちゃんと自分も腑に落ちるから、すごいなと思っています。
赤ペンがたくさん入ってもめげません!
 

——さすがです。これからも、敬子さんだからこそ書ける記事を楽しみにしています!
 

(取材を終えて)
敬子さんの話を聞き、いかに敬子さんの暮らしで生まれた実感が、記事に込められていたかを知りました。「誰かの頭の片隅に残り、いつか何かのきっかけになれば」という敬子さんの言葉は、私が記事づくりをしている時に考えていることと重なって、同じ思いで記事を送り出せることに心強さを感じます。
 
ライターさんの実感が生きるからこそ、記事の中の言葉一つひとつが力を持って、誰かのいつかのために心にそっと残る記事となるはず。
 
多様な感性を持った人が集まる森ノオトだからこそできる記事づくりを、これからも丁寧に続けていきたいと思います。
 
(文・佐藤沙織)
 

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