衣食住からはじまる自己実現ー「クィア・アイ」

Netflixで放映中の「クィア・アイ」は、さまざまな問題を抱えた依頼人の人生の再出発を、5人のクィアがつきっきりで応援する番組です。

https://www.netflix.com/jp/title/80160037

5人はそれぞれがファッション、美容、食、デザイン、カルチャーを担当していて、カルチャー以外はいわゆる「衣」「食」「住」。

5人(ファブ・ファイブ)は、プロの技術とこだわりを持っていますが、自分の好みを押し付けることはありません。番組の前半は、ファブ・ファイブが、自宅のソファで、移動中の車で、依頼人行きつけのお店で、依頼人やその家族・友人と話しているシーンで埋め尽くされます。時間をかけて、依頼人のこれまでの人生、大切なこと、好きなことを聞き出していくのです。

ファッションでいえば、Tシャツ短パンのご老人にいきなりスーツを着せたりはしません。そのかわり、柄ものが好きな人なら、柄物のTシャツをシャツに変えてもらう。いろいろ試着してみて、シャツを着ることに抵抗がなくなれば、次はカジュアルなジャケットを合わせてみる。レストランでも仕事場でも浮かない服装が自然とできあがります。

服も、食べ物も、一つ一つ依頼人と確認し、納得しながら進む。そのプロセスで、依頼人が生きるうえでの優先順位を会得できるように計算されているんです(たぶん)。

お金のない人には、ココナッツオイルを使った手作りの保湿クリームのレシピを教える。肝心なのは、衣食住の先にあるセルフケアの重要性を体感してもらうこと。

マズローの欲求5段階説では、自己実現は最後に出てきます(生理的欲求、安全への欲求、愛情、尊敬 →→ 自己実現)。まずは衣食住を整え、深遠なる人生について考えるのはその後…ではなく、この番組では、生活の基盤を整えるプロセスそのものが内省を促し、自己実現のスタート地点になっています。

働きかけ次第で、衣食住からいっきに最上段の自己実現までの道が開けるこということを軽やかに証明してみせている番組です。




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