【検証】 「リメイク料理」 を連鎖してみた
はじめまして。
趣味がないため、食べることが生き甲斐なえだんぬと申します。
いきなりですが「リメイク料理」をご存知ですか?
例えば、
・シチューにチーズやマカロニを足してグラタンをつくる
・おでんにカレー粉を足して「おでんカレー」に変える
といった「余った料理をもとにつくり変えた別の料理」のことを指すそうです。
料理をつくり過ぎてしまったり、食べ切れなかったりしたときの救世主。
先ほど述べた「おでんカレー」なんかは、普通のカレーとは一味違う「出汁の効いたカレー」になって大変おいしいとのこと。
かくいう私はリメイク料理自体あまりつくったことがありません。
(当日中に食べ切ってしまうせいで料理が余らないから)
「鍋を食べたあとのシメの雑炊」をリメイク料理と呼んでいいならば何度もつくったことがあります。
(よりいっぱい食べられるし、おいしいから)
先日、不意にこんな疑問が湧きました。
先ほど挙げた「おでんカレー」がわかりやすく、
おでんをもとにしたことで出汁の風味が加わり、完成したカレーがよりおいしくなった実例と言えるでしょう。
このことから、料理のリメイクを重ねることでおいしさが増し続け、最終的にはとんでもなくおいしい料理になっている可能性があるのではないでしょうか?
早速、検証することにしました。
1日目
初日。ベースとなる料理をつくる日です。
今日つくったものが翌日以降の料理に強い影響を与えそうなので慎重に決定します。
まず、味や風味が強すぎないことを条件に入れます。
単純に「初日につくったものの味しかしない」といった状況を避けるためです。せっかくなので変化を楽しみたいところ。
次に、煮込み系の料理であることも条件に含めてみます。
こちらも単純に汎用性が高そうだからです。
また、おそらくですが「料理の旨みを引き継ぐ役割」は、具材自体よりもスープが持っているのではないかと考えています。
万が一、私が具材を全て平らげてしまってもスープは残るため、味の引き継ぎが途絶えてしまうのを防ぐ役割も持ちます。
色々考えた結果、1日目はおでんをつくることにしました。
早速、材料を揃えてつくっていきます。
出汁をとったり、具材を切ったり、下茹でしたり……
一般的なおでんの作り方との違いがないため、ここでは割愛します。
完成したものがこちらです。
一晩くらい寝かせて味を染み込ませたいところ……
ただ、この検証をしているのが夏場ということもあり、衛生面に配慮して数時間だけ放置して実食します。(あと単純にお腹が空いているため)
こうして、おいしいおでんができました!
味が十分に染みていないことが残念ですが、ちゃんと手間をかけた甲斐もあってカツオと昆布の出汁がよく出ています。
空腹が満たされて冷静になったせいか、食べている中で「なんで真夏におでんつくってるんだろう」とは思いましたが、なかなか満足な出来です。
幸先のよいスタートではないでしょうか?
翌日に備え、残りは保存容器に入れて冷蔵庫で保管します。
2日目
2日目。「リメイク料理」としては今日が初めてになります。
リメイクを繰り返すことを踏まえて、今日も香りや味が強すぎないものを選びたいと思います。
さらに言えば、1日目と同様に煮込み系の料理にして汎用性を保っておきたいところ……
繰り返しになりますが、リメイク料理の経験が浅いため、ぶっちゃけ勝手がわかりません。
「料理の方向性を大きく変えたせいで、味がゴチャついてしまう」といった可能性を鑑みて、味が極端に違わない料理を選びます。
悩んだ結果、おでんを豚の角煮にリメイクすることにしました。
余談ですが、豚バラブロックは 1kg あります。
豚バラブロックを下茹でし、卵も茹でて殻を剥きました。
そして、鍋に前日つくったおでんを投入し、
豚バラブロックと茹で卵を投入します。
ねぎと生姜、醤油等の調味料を入れて煮込みます。
数時間放置して完成です!
こうして「おでん角煮」が完成しました。
想像以上に具材が多くなったので2皿に分けました。
角煮部分(豚バラ、ゆで卵)を食べた率直な感想は、想像以上に生姜が強い ということでした。
普段、豚の角煮をつくるときはチューブの生姜で済ませていたのですが、生の生姜を使うだけでこんなに変わるとは……
リメイクとはあまり関係のない学びを得ることもできました。
加えて、ほのかに出汁の香りが生きています。
普段つくる角煮よりもなんとなく手の込んだ雰囲気が漂います。
角煮部分よりも感動したのがおでん部分でした。
一晩置いておいたおかげか具材の深部にまで出汁が染み込んでおり、加えて外側は濃いめの砂糖と醤油の強い味がします。言うなれば、レイヤーがある感じ。
予想に反してスープよりも具材に「リメイクの良いところ(味の引き継ぎ)」が出るのかもしれません。
大根の色なんか良すぎませんか。
世に言う鍋底大根でしか見れない色合いです。
もはやおでんというよりは煮染めに近い味がしました。
全体的に言えるのは、おでんをつくったときにとった出汁が良い仕事をしてくれたということでしょうか。
また、角煮とおでんで同じ調味料をいくつか使うことが功をなしてか、味に違和感のない仕上がりになっていました。
保存容器に詰め直して、冷蔵庫で保管します。
3日目
「おでん角煮」の経験から、似た味付けの料理へのリメイクであれば、味に違和感のないリメイクができるという仮説が立ちました。
悪く言えば、リメイク前と後で強い変わり映えがないとも言えます。
うっすらと「冒険してみたさ」が湧いてきました。
かといって、冒険しすぎて大失敗するのも怖い……(何より、ご飯をおいしくいただきたい)
そこで、前日の「おでん角煮」をもとに2品つくることにしました。
最悪片方で失敗しても、もう一方がおいしければなんとかハッピーにご飯を食べることができるでしょう。
片方は安全性を求めて近しい味付けの「肉じゃが」を、
もう一方は少しスリルを求めて「麻婆豆腐」にリメイクします。
まずは肉じゃがからつくります。
作り方はシンプルに、材料を切って軽く火を通し、
前日の角煮と少量の調味料を入れて煮込み、しばらく放置して完成です。
続いて麻婆豆腐をつくります。
こちらもシンプルに豆腐以外の材料を刻んで炒め、豆板醤等の材料を入れ、
角煮のスープを入れて、
切った木綿豆腐を入れ、軽く煮詰めます。
おでん角煮の具材を食べやすい大きさに切り分け、
先ほどの鍋に入れ、煮立たせた後に水溶き片栗粉を混ぜ入れて完成です。
完成した「おでん角煮肉じゃが」と「おでん角煮麻婆豆腐」がこちらです。
「おでん角煮肉じゃが」は予想通り安定したおいしさでした。
味が染みていて煮物として単純においしいです。(じゃがいもはもう少し寝かせた方がおいしいだろうけど)
ちくわやさつま揚げは形を保っているものの、箸がすんなり通るほど柔らかくなっていました。
1日目に濃いめにとったカツオと昆布の出汁も、2日目の強い生姜の香りも、だいぶまろやかになったというか、むしろ存在感が消えました。
肉じゃがの味が強いというよりは、時間経過や何度も煮立たせたことで風味が落ちた、といった状態なのでしょうか……
「おでん角煮麻婆豆腐」は思わぬ方向で想像を裏切り、和食寄りの食べ物になっていました。
豆板醤やにんにくの香りはするものの、砂糖醤油の甘塩っぱさが負けていません。
悪く言えば、麻婆豆腐に求めるガツンと感が少し物足りない感じがします。
もっと悪く言えば「丸美屋の麻婆豆腐の素で麻婆豆腐つくったよー」と言われてこれを提供された場合、「なんか一袋くらい入れ忘れてない?」と聞き返すレベルの物足りなさがあります。
和食と中華料理のちょうど中間点とでも言うべきか、
少し辣油を追加で垂らすと、脳が「あ、これ中華の味っすね」と判断しますが、
味の染みた大根を一口齧ると「あー、和食でしたね笑」と脳が判断を変えやがります。 バカ舌か?
頭が混乱したものの、おいしい料理ではありました!
にんにくの香りと砂糖醤油が白飯を促します。
今日も冷蔵庫で保管します。
4日目
前日の「おでん角煮麻婆豆腐」のまとまったおいしさから、リメイク料理の懐の広さをわからされた気分になりました。
もっと冒険しても受け止めてくれそうな安心感を得ています。
肉じゃがと麻婆豆腐、いわば、和食と中華。
味を大きく変える目的で洋食に決めました。
・肉じゃが → シチュー
・麻婆豆腐 → チキンのトマト煮
にそれぞれリメイクします。
まずはシチューからです。
鍋で鶏もも肉を炒めて、
肉じゃがを投入し、
牛乳を足し、
シチュールーとブロッコリーを入れ、軽く煮込んだら完成です。
続いて、チキンのトマト煮をつくります。
鶏もも肉を炒めた油で、にんにく、なす、玉ねぎを炒めて、
トマトとトマト缶を投入、
そこに鶏もも肉と、
麻婆豆腐を入れて、
トマト缶の水分が飛ぶように煮込んだら完成です。
こちらが完成した「おでん角煮肉じゃがシチュー」と
「おでん角煮麻婆豆腐チキンのトマト煮」です。
肉じゃがで使ったじゃがいも、にんじん、玉ねぎを活かそうと思ってつくったシチュー。
一言で言い表すとすれば、めちゃくちゃ優しいシチューができました。
ふんわりと醤油と煮込んだ野菜の風味が漂い、親しみ深いような、優しさに溢れる味に仕上がっていました。
面白かったのが大根で、これだけ調理を重ねられたにも関わらず、いまだにおでんの風味を内包していました。
シチューを食べている最中に、出汁の香りがするのは初体験。
おでんのプライドを保っていたのには驚きました。
トマト煮は今回の検証で最も期待値を超えてくれた1品でした。
トマトやオレガノをふんだんに使ったため、麻婆豆腐がかき消されてしまうかと思いきや、昨日の「和食と中華の間の味」が優しく主張してきます。
この味がトマトの旨みとやたら合ってまろやかな印象を受けました。
小さめにカットしたとはいえ、シチューではあんなに異彩を放っていた大根があまりにもおとなしくなってしまいました。
思い返せば、大根を小さくカットしたのは昨日の麻婆豆腐をつくったとき。
昨日の麻婆豆腐における大根の印象も薄いことから、単純に具材を小さくしたことが原因でしょうか。
2品食べて思ったのは、思いきったリメイクをしても、案外まとまった味になってくれるということです。
味同士が喧嘩してしまうかと思いきや、案外調和の取れた味がしました。
悪く言えば、トマト煮にはもっとガツンとした重みのある味や、路線変更による意外性を期待していたため、まろやかなで優しい味になったことが少し残念ではありました。
冷静に考えれば、約半分を優しい味がした昨日の麻婆豆腐が占めている料理なので、ガツンとした料理を求めるのは的外れもいいところでした……
リメイクの使い所は大切ですね……
こちらも冷蔵庫に入れて保存します。
5日目
この検証をしているのが真夏で、暑い日が続いています。
料理を傷めてしまっては元も子もないので、今日を最終日として締めくくりたいと思います。
3日目からつくり分けた、現・シチュー と 現・麻婆豆腐。
言い換えれば、3日目からそれぞれが異なるおいしさを持っているはず。
このことから、これら両方の料理をもとにして料理をつくれば、より多くのおいしさを秘めた料理ができるのでは……?
味をまとめるにはある程度の力強さが必要だと考え、最終日はカレーにしました。
インドカレーやタイカレー、欧風カレーなど様々な国で多様なバリエーションが作られているカレー。
呼称が違えば、使われている食材やスパイスも様々。
なのにどれを食べても「これはカレーだ」とわかる力強さ。
それにも関わらず多くの食材と合う包容力。
この右に出る者のいない包容力に頼ります。
とはいえ、主体性が強いと述べたように、味の強いものの代表格と言っても過言ではありません。
シチューとトマト煮の味がカレーで消えてしまわないよう、カレールーの量は規定の量よりも少なめにします。
まずは鍋にシチューとトマト煮を入れます。
カレールーを入れた時にしょっぱくなりすぎないよう、水で伸ばしながら両者を混ぜ合わせます。
……えっ、なんかちょっとおいしそう。
つまみ食いしてみたところ、「もう2、3歩何かを足せばちょっと良い料理」くらい味がしました。今まで食べたことのない、和・洋・中のどれとも言えない味。
火を通したトマト、シチュー、それとトマト煮にいれたオレガノが異様にマッチしておいしかったです。
カレーのルーを投入して、しばらく放置して完成です。
前述の通り、シチューとトマト煮の味が隠れてしまわないように、また、しょっぱくなりすぎないように、カレールーは規定量の半分だけ入れることにしました。
完成した「おでん角煮肉じゃがシチュー麻婆豆腐チキンのトマト煮カレー」がこちらです。
早速、味を見てみます。
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完全に2日目のカレーです。
シンプルにおいしいのですが、どんなに味わっても普通につくって一晩寝かせたカレーのおいしさなんです。
もっと「トマト感が強い」「ミルク感がある」「和風のテイストが〜」みたいな一味違うカレーを想像していました。
制作途中につまみ食いした「シチューとトマト煮を合わせたもの」の個性が消えていました。
食べ進めるなかで思ったのは「もっと具材入ってなかったっけ?」ということ。
おでんのさつま揚げやちくわがまだ入っているはずなのに見当たりませんでした。溶けた?
別の視点で見ると、5日目は調理らしい調理を一切していません。
包丁を出すこともなく、使ったのは鍋とおたまだけ。
調理工程も少なく、煮込むだけでおいしいカレーにありつけました。
「前日の料理を使うことで楽においしくいただけること」
きっとこれがリメイク料理の良いところの1つなんだろうなと実感するとともに、世間の家事が上手な人はこのことをとっくに知っているんだろうなと言うことが直感でわかりました。
最後に
日にちで言えば5連鎖、品数で言えば7連鎖、料理をリメイクしました。
料理のリメイクをほとんどしたことがなかったので、個人的には面白い知見が溜まりました。
一番の驚きは、5日間かけた成果物が「2日目のカレー」になったことです。
最後に私の得た知見をまとめて、締めさせていただきます。
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