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フーコという名の小さなお店

東京の小さなセレクトショップ「フーコ」の展示が始まります。

店主の趣味を小さなハコに詰めこんでいる「趣味の店」が好きで、そこに昭和の香りがするとついついのぞいてしまうのですが、そんなどこか懐かしくて、ワクワクする空気感が「フーコ」のお店にも漂っています。

店主フーコ(森下)さんが選ぶもの、作るもの、その視点にはいつも発見があり、ユーモアもあり、お店としての感性やスタンスに共感を覚えています。
そして、フーコさん自身の飾り気のない人柄にも親しみを感じます。

そんなフーコさんてどんな人?なぜ「フーコ」というお店を作ったのか、ちょっと聞いてみました。

服飾の世界へ

「昔から服が好きだったんですか? 」

小学生の時にマドンナを知って、ハイファッションの世界に目覚めたそうです。
絵を描くことも好きだったフーコさんは、美術かファッションか進路に迷い、美大行きを勧めた親の意向を振り切って、服飾の学校へと進学します。

卒業後はアパレルメーカーへ就職。ブランドショップの販売員に始まり、店長、商品企画、MD、販促など、企業の総合職として順調にキャリアを積んでいきました。
当時はブランドの服が売れる時代でした。担当した店舗が売上げ全国一位になったり、服を売ることにやりがいを感じていた時期だったそうです。

益子へ

アパレルメーカーに10年以上勤務する中で、ファッションの在り方も変化していきます。これまで売れていた服が売れなくなり、トレンドのアテが外れて在庫を抱え、セールを繰り返す状況が多くなってきたのです。ファストファッションも台頭してきた時期ですね。

フーコさんは時代の移り変わりを感じていました。
ブランドでシーズンものを売って行くことの辛さと、会社が求める右肩上がりの成長に矛盾と疑問を持ち始めたのです。育ててくれた会社には感謝しつつも、トレンドを追いかけるのではなく、もっと普遍的な価値に対して時間を使うことのほうが自分は幸せになるのかもしれない、と考えるようになってきました。

そんな時、手に取ったインテリア雑誌に栃木県の益子にあるSTARNETというお店が載っていました。その中で紹介されていたSTARNETのスタッフ星恵美子さんのプレハブ小屋の住居に衝撃を受けます。実は私たちもその記事には衝撃を受けました。自然素材の材料をDIYによって設え、質素でストイックでモダン、星さんの生き方、センスが滲み出ているような空間だったと記憶しています。

「こんなすごいセンスの人が栃木にいるんだ、、」

と、思ったそうです。
STARNETを検索し、ホームページを見ていたら、たまたま求人が出ていました。これだ、と思ったフーコさんは応募し、見事採用となります。

13年間お世話になったアパレルメーカーを退社し、STARNETへ入社することになりました。と同時に住まいも東京から益子へと移り住むことになります。
フーコさんは10年単位で自分の人生を考えていて、益子にも10年は腰を下ろす覚悟でした。そして新しい生活が始まって間も無く、東日本大震災が起きるのです。

震災を経て

STARNETの代表、馬場浩史さんは原発(放射能)への懸念を感じておられました。
当時、STARNETは、東京、大阪にも店舗を出していて、スタッフにもできるだけ西の方へ行くことを望んでいたそうです。フーコさんは東京の人なので、東京の店舗を希望し移動しました。ほぼ半年で益子から東京への出戻りです。

starnet東京での日々の中、馬場浩史さんがご病気で他界されました。
そして様々な事情が重なり、フーコさんは独立を視野に入れ、STARNETを離れることにします。

私も知り合いを通じて一度だけ、大阪で馬場さんとお話をする機会がありました。深く優しい目が印象的な方で、まわりを魅了する大きな存在の人だと感じたことを覚えています。

「フーコさんがSTARNETで得られたものって、何ですか? 」

「アパレル会社に所属しているときは取引先も企業だったけど、STARNETではそれが作家さんという個人だったことが新鮮だったんです。今では普通のことだけど、、
みんなそれぞれ自分の人生を生きていることが衝撃でした。
馬場さんに魅力を感じ、STARNETだから展示をしたいという作家さんと働かせてもらいながら繋がり、出会えたことは自分だけでは得られない財産です。」

starnet東京は馬喰町にあり、フーコさんもお店の近くに住まいを移しました。
初めての東京下町暮らし、両国周辺の雰囲気に「なんて居心地がいいんだろ」と思ったそうです。この下町ライフが墨田区への愛着となり、「フーコ」店舗との出会いへとつながっていきます。

自分のお店「フーコ」

STARNETを退社したフーコさんは、墨田区で物件探しを始めます。
馬場さんを通じて親交のあったランドスケープ・プロダクツでアルバイトをしながらその時を待っていました。そして、元ウエディングドレスの仕立て屋さんという小さな物件と出会います。

「ここだ!」

場所と物件を見てすぐに決めたフーコさんは、開店の準備に取り掛かります。

お店の内装とデザインは、STARNET時代に担当していた革作家の曽田耕さんと、美術家の吉谷博光さんに依頼をしました。曽田さんには「フーコ」のオリジナリルアクセサリーの製作もお願いします。
作家の作品以外で、お店のオリジナルの服(カットソー)も作りたいと思っていました。でもどこで作ってもらえるのか全くわかりません。一から探し始めていくと、小ロットで縫製を引き受けてくれる工場が隣町にありました。墨田区はカットソーの町だったのです。そういえば、良い染屋さんも近くにあるとフーコさんに聞いたことがあります。こんな小さなお店に対しても良くしてくれるきっぷのいい社長さんにはとても感謝しているそうです。

「周辺には横のつながりってあるんですか?」

「んーどうだろ、私は人付き合いにマメではないんです。
(集まりがあっても)私が呼ばれないだけなのかもしれないけど、町自体もそんなに人と人が密ではないというか、、それがこの町の良さなのかもしれないですね。」

「フーコ 服と小物の小さな店」というお店が東京の下町にオープンしたことを顔見知りのSNSを通じて知りました。新しいお店に目ざとくない私たちですが、「このお店気になる、、」と直感的に思いました。楽しそうな「趣味の店」の匂いも感じ、なんとなくEDANEとつながる予感がしたのです。

ミラクル

フーコさんとは大阪で初めてお会いしました。
梅田の百貨店の催事に参加されていることを知り「見にいってみよう」ということになったのです。「フーコ」の商品も魅力的でしたが、「はじめまして」とは思えない親しみをフーコさんに感じたことが印象に残っています。

その後、こちらが東京に行く用事があり、フーコさんのお店にも立ち寄る予定でした。ところがインスタには「臨時休業」の文字が、、実はフィーリングが合えばEDANEでの展示の依頼をしてみようと思っていました。

「フーコ」訪問をあきらめ、待ち合わせている知人と会うために「J - Cook」というお気に入りのカフェに向かいました。すると、

「あれ、フーコさん?」
「あ、エダンさん」

J - Cook」にフーコさんがいたのです!
めったに来ない青山で、めったに来ないお店で(めったに来ない東京で)、お互いに待ち合わせをしていたという奇跡の出会いに二人で驚き、ご縁を感じました。このミラクルな出会いが2019年の「フーコ、EDANEに行く!」の展示へとつながっていきます。

写真:「フーコ、EDANEに行く!」

セプテンバーフーコ+

「フーコ、EDANEに行く!」「セプテンバーフーコ」と続き、今年で3年目の展示となる「セプテンバーフーコ+」が始まります。
今回は「フーコ」セレクトの装いに加え、今年1月にノッティング織りの展示をしていただいた草曜舎さんの「ぱんつ」も初お目見え。お馴染みのMt.Shasta ApothecaryJuniper Ridgeのワイルドクラフト商品も並ぶため「+(プラス)」という記号が付きました。

今年も魅力的な商品が届いています。
フーコさんは18日(土)19日(日)20日(月)に在廊します。ぜひ遊びにいらしてください(予約制となります)。
初日は台風が来ているようですが、、どうぞ皆さま気をつけてお越しください。
EDANEでの時間が楽しいひと時となりますように。Enjoy!

ワタシなりの”かわいい”を探し始めて早6年目。
店を通していろいろな出会いにも恵まれ、作り手の方々の感性や作品からエネルギーをもらってここまでのびのびとフーコを営んできました。
40代も半ばになったワタシ。
年齢とともに益々暮らしをより気楽に過ごせるようなものへ心惹かれるようになってきました。
毎日をハッピーに過ごせるよう定番品。みなさまとご一緒に楽しめたら嬉しいです。

フーコ

セプテンバーフーコ +
2021年9月18日(土)〜26日(日)
オープン 11時〜16時(予約制)
お休み:21日(火)

<ご予約について>
件名「フーコ予約」で、
「お名前」「ご来場の日時」「人数」を明記のうえ、
edane@me.com へご予約ください。

フーコ 服と小物の小さな店
東京都台東区寿1-20-11  1階
ことぶきこども園通り沿い

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