食べること、生きること

沢田研二さんが主演されている映画、
土を喰らう十二カ月を観た。

冬は雪が深くなる長野の山奥一軒家で
畑や山のものをいただきながら
暮らす日々を描いた映画で
四季の山の表情や食材、台所仕事、
出来上がった料理や食べる情景がどれも美しかった。

橋本愛さんが主演された映画
リトルフォレストを思い出した。

ああ、美しいな、と思う一方で
やはりただ1食を手に入れるためにある苦労を思う。
一つの食材を手に入れるために山に入ったり
畑の手入れをしたり。
口に入れられる状態にするまでも
まず手が切れるような冷たい水で
丁寧に時間をかけて土を洗い落とし、調理する。
そこには虫や動物のライバルが存在し
作れば後始末が必要になり、
何もしたくない日もあれば
体調が悪い時もあり、
自然の気候だって厳しい。

でも生きるために食べることって、
実はこんなにも豊かなのだ、ということも
静かに伝わってくる。
せめて一食だけでも丁寧に向き合いたい、
そんなふうに思わせてくれる映画だった。

映画のエンディングでは
沢田研二さんの歌が流れる。
キラキラとしたスターとしての沢田さんの一面と
映画の中で自分と静かに向き合い、
孤独の中で死と隣り合って暮らす老人とのギャップが
好きだった。
人はどちらにも心惹かれ
矛盾の中に生きている。
華やかな非日常と土に寄り添う生き方
どちらだけでも不安になり、
どうやって生きるべきか悩まずにはいられない。

松たか子さんも素敵だった。
美味しそうに食べる様子が本当に自然で
チャーミング。
こんな女性が離れてしまうことも受け入れるなんて
相当自分の軸がしっかりしてないと
ぶれちゃうよね、と思って観ていた。

生きるためには
体を動かさざるを得ない。
本当はそうなのに
都会でリモートワークなんてしていると
なんと体を使わないことかと思う。

子どもだってそうなのだ。
つどつどの食事のためにある手間を
私は教えられていない。
作るのが大変だったらウーバーで
頼めばいいじゃん!という
今なのだ。

子どもにとっても身体性を欠いた生活が
できてしまうことに
うーむ、どうしたものかと
悩んでしまうのだ。

そこにパーフェクトな答えはなく
どうしたものか、という気持ちを抱えながら
試行錯誤していくしかない。

うまく行かなくっても
いつかは
今日の映画の土の匂いがする
野生の佇まいが美しい食事を
心をそこに向けて作り
いただくということを
子どもと一緒にできる機会が持てますように、
と思いつつ生活しようと思う。

食の映画、いいですよね。
私は大好きです。



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