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開口困難な方への効率的な口腔ケア

看護師9年目にして、口腔ケアの勉強会に参加してみた話。

介護施設で働いていると、病院で患者さんと向き合う時間に比べて、圧倒的に長い時間ご入居者と関わることができます。
加齢や病気の進行に伴い最期を迎える方が多くいらっしゃって、その「最期」というのは人によっては数日だったり、数ヶ月だったり、数年だったりします。
いずれにしてもその最後の始まりは「口」に関係する障害が多いと感じます。
経口摂取が困難になり、痰が増えて自己喀出できず吸引が必要になり、誤嚥性肺炎を起こす、といったケースですね。

誤嚥性肺炎というのは、普通は飲み込んで食道に落ちていくものが、飲み込みの機能が弱ってしまい文字通り誤って嚥下して、通常無菌のはずの気管から肺にに入って肺炎を起こす、というものです。
食事摂取していなくても、口腔内の細菌は多いので唾液を誤嚥して発生する不顕性誤嚥が多いです。

なので、口腔ケアは健康に長生きする上で、めちゃくちゃ大事なケアです。

私はいままで、看護師1年目に教えてもらった基本的なことや、本で読んだこんな内容を意識しながらケアしていました。
「開口が難しい場合はKポイントを刺激する」
「ジェル塗布して軟化させてからケアする」
「舌の動きを出すように他動運動を取り入れる」

ただ時間がない!!

正直、決められた時間の中で多くのご入居者を毎日ケアして、他にもしてあげたいこと沢山ありますし、その他のイレギュラーな事態もどんどん起こりますから、歯医者さんのように何十分も口腔ケアに時間をかけている訳にはいきません。

その上、口腔ケアしようとしても「開口してくださらない」ということがまぁよくあります。全力で口を開けまいとしている人のKポイントに触れたって口は開かないんです。
そりゃあ1日3回も口を開けられて不快なことを無理やりされるのは嫌ですよね。大体が吸引しながらで苦しい訳ですし。
「ごめんなさいね」と言いながら何度口をこじ開けて吸引・口腔ケアさせてもらったことか…

痰がごっそり取れるのがクセになって、昔は私も口腔ケア大好きだったのですが、施設で看護師始めた頃からかな、毎回嫌がられるのも悲しくて口腔ケアを全力で出来なくなっていました。

そんな時、紹介してもらった勉強会のテーマが「効率よく口腔ケアする方法」だったのです。開口しにくい人のケアのコツも紹介されていました。
勉強になった点を一部書き起こしてみます。
私個人の解釈を含めていますのでご了承くださいね。

講師は医療法人永寿会恩方病院 歯科・口腔外科 歯科衛生科長 斉藤しのぶ先生
演題は「動画や写真でわかる 効率よく進められる口腔ケアのコツ」です。

基本的なスポンジブラシの使用方法
・口腔ケア中、スポンジブラシを水で洗う前後にティッシュでスポンジブラシについた水分や痰を除去する。
→除去した汚れを再び口の中に入れないため。

・スポンジブラシは回転させながら使用する。
 舌のケアは下方向に押さないで回転させながら手前に移動させる。
 葉脈のようになぞる。
→下に押すと嘔吐反射が出て嫌がられてしまう。

開口してもらいやすいコツ、噛まれないコツ
・口をこじ開けない。
・押さえつけない。
・力を入れすぎない。
→逆効果。口を開けなくてもケアはできるので焦らず時間をかける。

・スポンジブラシで口唇を触る→隙間から歯列の外側を触る→左手はピースの手で口唇を開いて歯が見えるようにする→歯の隙間からブラシを入れる
→大きくゴシゴシせず、小さくその場で磨く。ワンタフトブラシも使える!

斉藤先生すごく丁寧に話してくださって、でもそんなこと分かってるんだよなぁ、、、
と騙されたつもりで真面目に実践してみたところ、
お?なんだろう今日は百発百中で開口してくれるぞ…!!
つまり口腔ケアは「急がば回れ」ということなんですねぇ。勉強になりました。

基本を忘れてしまっている、9年目のあかんごしでした…
繰り返し学ぶことって必要なんですね。
時間がないと開き直っていた自分が恥ずかしいです。
初心に戻って患者さんのことを考えられた、ありがたい機会でした!

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