見出し画像

ない歌「冬の花火」はある: 2023年1月17日

以前こちらの記事で書いた匿名ラジオのイベントの中で、ラジオから生まれた"ない歌"を実際に歌う。というコーナーがあった。今日はその歌「冬の花火」の話。

そもそも匿名ラジオは、現実にはありえないことをしゃべる回が圧倒的に多い。「クレヨンしんちゃんのメンバーと飲み会をすることになったときのベストな席配置」とか。二人の想像力が垣間見えるのがおもしろくて、固定ファンが多いのも頷ける。

私はまだ2018年くらいの回を聴いているので歌が出てくるところまでたどり着いていないが、DVDの副音声を聞く限りでは「いかにもありそうでない歌を作ろう」みたいなノリでできたようだ。ARuFaさんはこの「ない歌」で観客を泣かせちゃおう、なんて企んでいたらしい。

DVDの特典で聴ける冬の花火Full ver.を聴いた方はわかると思うけど、ARuFaさんはもちろん、ダ・ヴィンチ・恐山さんもめちゃくちゃかっこよくていい声をしているし、編曲もすばらしくて、決してお遊びの歌ではない。

J-Pop育ちの人間にとって、自分の体験がちょっと重なる程度のちょうどよく抽象的な歌詞、Aメロ・Bメロ・サビ・Cメロの構成、泣かせのコード進行、どれをとっても完璧に「ありそう」だった。というより、イベントで観客の前で歌った時点で、もうこの世に「ある」のだ。この歌は。どういうことなんだ。

ない歌で観客を泣かせようというARuFaさんの目論見としては、「泣ける…!でもなんで私、会社員がワイヤーアクションで飛んで、ない歌を歌ってるのを見て泣いてるの??」と混乱させたかったのかもしれない。だけど比較的遅くに二人を知った私は、若者が頑張ってラジオのネタを完成形にしたことのほうが先に感情に来てしまい、ウワァすてきな曲だなァ!!とまっすぐに感動してしまった。素直か。

だってすごいことですよ。このイベントのためにカラオケでたくさん二人で練習して、ボイトレとかしてみたくなったよね、なんて言ってるの。ARuFaさんはともかく、恐山さんが人前で歌ったりしそうにないじゃん。それをこんなに真剣にやってくれて!嬉し…!!

もうやりたいこと全部やってほしい。めちゃくちゃ応援したい。一生楽しそうにしててくれ。おもしろいことをまじめにやるのが1番おもしろいよ。

応援したい気持ちが高まりすぎて『冬の花火 JOYSOUND』で検索したが、カラオケには入っていなかった。それはそう。やっぱり冬の花火は「ない歌」なんだ。匿名ラジオ界隈から一歩出たら「ない」、究極の内輪ネタ。しかしそういうものほどハマると深い。冬の花火はここにだけ圧倒的に「ある」。

将来老人ホームでうっかり冬の花火を口ずさみ、歴戦の匿ラリスナーがあぶり出される未来があるかもしれない。この発想自体が匿名ラジオみたいで、ちょっと嬉しくなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?