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第26回:完全新作劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」、明日公開です。

明日12月6日から、完全新作劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199星巡る方舟」の全国ロードショーがはじまります。TVシリーズに引き続き、こちらの作品のメカニック作画のお手伝いをしております。よろしくお願いいたします。 

映画冒頭には、地球の宇宙戦艦キリシマが登場します。TVシリーズの序盤、冥王星沖会戦等で、あざやかな赤を宇宙空間に刻んでいた大型艦です。映画冒頭、その艦橋周辺のようすがうつるカットは、3DCGではなく作画で表現されています。

戦闘で受けた傷痕なのでしょう。艦体側面にはおおきな穴が4つ開いています。画面右下のほう、宇宙空間に面しているアウトラインは不自然なかたちに歪み、焼け焦げたような色になっています。よく見れば、装甲板の表面には、ところどころこまかなタッチが刻まれています。3DCGでは、堂々たる姿をみせている艦の「素顔」が、こまかな黒い線と、均一ではない白のハイライト線とで生々しく描き出されています。 

TVシリーズ序盤、まだメカニックの表現技法が確定していなかった頃、キリシマは作画で表現されることも多い艦でした。その中には、このカットに近しいアングルの絵もいくつかあります。26本のシリーズを終えたいま、じつはこのカットは、どうしても必要な情報だけをチョイチョイ描いて、あとは既出のカットを参照にしてヨロシク☆というような、システマティックな指定だって可能な一枚だったりします。ていうかそっちのほうがラクに決まってます。

けれど実際のこのカットでは、デザイナーの玉盛順一朗さんが、作画のためのデザイン画をあらたに描き起こしています。システマティックなものではない、完成画面に出ているのと同じだけのディテールが、そこにはガッツリ描かれています。おそらくは、ただ機械的にパーツとパーツ、情報と情報をつなぎ合わせるだけでは表現できない「この時間軸の空気」を伝えるために。 

この映画では、ヤマトの艦体もまた多くのカットが作画で表現され、そのつど玉盛さんによるデザイン画が描かれています。終盤では、TVシリーズ第3話で森雪が花束を抱えていた場所の別アングルも登場します。そのデザイン画もまた、溶接痕や計器類、こまかな傷など、ちいさな画面ではつぶれてしまいそうなディテールがたっぷりな一枚です。その場所が確かにそこにあることを伝えるかたちが、しっかりと描かれています。 

地球側だけでなく、ガミラス側、それからガトランティス側のメカニックも、多くのカットが作画、または3DCGに作画による表現が追加された仕様になっています。それらのカットでは、デザイナーの石津泰志さんが大量のデザイン画を描き起こしています。どのデザイン画も、あきらかにTVシリーズのときよりも線の量が増えています。しかもあの頃よりも、さらに勢いのある線で。どうなっているんでしょう。 

…と、メカニック作画のためのデザイン画のことだけで、ひとつの話が終わってしまう、そんな人の手仕事がいっぱい詰まった劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」が、明日から全国の映画館で公開になります。あらためて、よろしくお願いいたします。 

 ■枝松聖(えだまつきお)■
1977年(昭和52年)生まれ。 
血液型A型。東京都出身。
多摩美術大学造形表現学部卒業。 
05年、「ふしぎ星の★ふたご姫」の
各話美術設定で、初めてアニメ
の制作に参加。「ブレイクブレ
イド」(10年)ほかアニメ、
 ゲームの設定デザインなどを担当、 
現在フリーランスで活動中。
「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」
には「メカニカルディテールワークス」
の役職で参加しています。

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