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そうだ、「ナディア」みよう

そうだ、ナディアみよう。1ヶ月前ふと思い立ち「ふしぎの海のナディア」を毎日1話から2話ずつみていました。おもしろすぎて、日によっては1日3話みることもあったりして。放送当時はごめんなさい、ナディアたちが忍者みたいに走ってる感じにビデオテープを早送りしてしまっていたエンディング映像も、いまは染み入るものがあって。森川美穂さんの歌声に聞き入りつつ、そうだよな、この当時の作画スタッフってこんなに少人数だったんだよなあ。なんて思いつつ、スタッフクレジットを読んだりしていました。

そんなふうにしていると、シリーズ中盤くらいまで、いわゆる演出家のかたではなく、アニメーターのかたが「絵コンテ」または「演出」、あるいは両方に配されている回がしばしばあることに気づいて。モチはモチ屋という感じに、作業の担当区分が細分化されているアニメの現場では、これはなかなかにめずらしい布陣であったりします。

だいぶざっくりと、画づくりのことだけいうと、「絵コンテ」では構図を決める作業が、「演出」では、それを元にアニメーターのかたが描いたレイアウトが問題なければそのままGOサインを出し、方向性が違っていたら紙を載せて軌道修正する、という作業があるのですが、それらを絵のうまいアニメーターのかたが担当するということは、プランニングの段階でも、途中の段階でも、絵ぢからが大きく画面構成に影響するということでもあり。わかりやすくいうと、完成画面がビシッとキマッた構図になる確率がすごく高まる、ということになります。

まだ物語の序奏段階ということもあり、第8回くらいまでの「ナディア」には、これまでそれほど思い入れがなかったのですが、その時期はまさにそのアニメーターのかたがたが絵コンテや演出を担当されている回ばかりで。大人になって、というか実際に演出チェックを受けたりしながら画面をつくる仕事をするようになって再見してみたら、その内容の豊かさや、画面の緊張感、何より、こういう画面にしたい!という意志が、すごく心に響いてきて。

第2回では、何もない長いながい道を、飛行機の滑走路にする、という場面があるのですが、その長い道も、道です、という説明にとどまらない、ちょっと抒情的な、雰囲気のある絵で。おそらく、ほかのカットで人物の後ろにちょこっと映る森なんかも、ちょっといい感じになっているのでしょう。現在開催中の「ふしぎの海のナディア展」では、この長いながい道の背景美術も展示されていて、嬉しかったです。

それにしてもこのシリーズ、当時の制作体制と作業人数、スケジュール感でどうやってコレ成立させていたのだろう?というのがふしぎになる映像ばかり。動画以降の作業行程は海外スタッフが担当されていたということで、ロングショットの絵など、本来の意図がぼやけてしまっている部分もなくもないにしても、その誤差を差し引いても絵ぢからのつよい絵ばかりで。勢いで全39回を駆け抜けてしまったものの、どうすればいいの?と、思うくらいにまだまだ胸の奥はもどかしくて。これからも折にふれてこのシリーズを追いかけてゆくことになりそうです。空ゆく飛行機を追う、少年少女みたいな気持ちで。

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