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「セーラームーンEternal」にHeart Moving

「劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal」をみました。8月の終わり、Huluでの配信が始まった頃に。おもしろい、と同時に、思うところもいろいろあって。心の整理がついたら何か書こうかと考え続けていたのですが、なかなか答えが出せなくて。2ヶ月近く過ぎたいま、その結論の出ない感じ、Heart Movingなもどかしさこそが、むしろこの作品についての思いそのものだったのかなという気がしています。

2014年から「Crystal」として、より原作版に近いかたちでの再アニメ化が始まった「セーラームーン」シリーズの「デッドムーン」編にあたる物語を前後編で劇場アニメ化したのが「Eternal」。ちびうさの淡い恋心と、うさぎの想いが、前後編の構成で、どちらもとても丁寧に描かれています。ふだんのふにゃんとした声と、戦士としてプリンセスとして未来のクイーンとしての凛とした声を、場面ごとにきっちりと演じ分ける三石琴乃さんの演技が素晴らしかったです。そして話数をかけて物語を積み重ねてゆくTVシリーズよりも、限られた時間の中で、花火を打ち上げるように印象的な場面を心に刻みつけてゆく映画という表現のほうが、じつはページをめくるほどに心のときめきが高まってゆく原作のあの読書感覚により近いものがあって。セーラームーンのアニメはTVで、というこれまでのイメージを気持ちよく覆してくれました。

という感じに、物語はとても楽しんだものの、原作に近い造形だったこれまでのキャラクターデザインから変更になったビジュアルをどう受け止めて良いのか、自分の中の答えはいまだ出せていなくて。只野和子さんがデザインをご担当されるようになったのは、90年代のアニメ版を楽しんでいた身としては嬉しいニュースだったのですが、あっそうか、この世界線のレイちゃんのおじいちゃんは3頭身じゃないんだった。とか、変身や技のシーンのころっとした感じ、懐かしい…でも、現代の画面比だと、じゃっかん違和感が。など、頭の中でうまく処理しきれない部分も多々あって。90年代版リスペクトではない通常の場面、とくに前編での画面構成や人物の芝居がとても素敵だっただけに、ところどころに入り込むその感じにモヤッとするものがありました。そして、そんな気持ちになるたびごとに、あぁなんだかんだで「Crystal」シリーズをけっこう好きになっていたんだなと気づいたり。みているあいだ、いろいろな気持ちと向き合う作品でした。

と、おもにもどかしさについてばかり話してきましたが、物語を、作品を楽しんだ、というのも本当で。クライマックスでみんなの姿が変わってゆく場面はとても華やかで、見事でした。その流れるようなラインのデザインも作画も、90年代のアニメ表現では難しかった、女性らしいエレガンスにあふれていて。公開時期が時期だっただけに見送ってしまったけれど、やっぱりこれは劇場で観たかったな。と、ちょっぴり、いえ、かなり、くやしくなってしまいました。

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