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「重戦機エルガイム」の大人の世界

「重戦機エルガイムII フェアウェル マイラブリー」をみました。TVシリーズ終盤を50分ほどにまとめた映像で、主人公ダバの旅立ちを描いていた「Ⅰ」からは一転、彼の仇敵であるポセイダルの人間関係が、むしろ物語の主軸であるかのような構成になっています。そう感じるのは、この映像をみるのが20年ぶりであることも関係しているのかもしれません。

ポセイダル、フル・フラット、アマンダラ・カマンダラ。舞台となるペンタゴナワールドで、表社会と裏社会のそれぞれで影響力の大きい3人が、じつは意外なかたちでつながっていた!というのが主人公ダバからみた世界の真実、ではあるのですが、それは彼自身がアムやレッシィとの、くっついたり離れたりを繰り返す、刺激的な三角関係をこれからも続けていった場合たどり着くであろう未来の可能性の一つでもあって。

物語のクライマックス、破壊されてしまったmk-Ⅱに替わる力を得るためにアムが操縦していたエルガイムmk-Ⅰをキスを交わしながら受け取るダバ。というロボットアニメ的にもラブコメ的にもたいへんにエモいシーンがあるのですが、キスをするアムは乙女チックに頬を赤らめたキス待ち顔をしているというのに、よくみると、ダバはキスをするときも目を閉じない、ニコリともしない無表情であったりして。そのゾッとする温度感の差に、もしかしたらもうこのときすでに、このままいったら自分もアマンダラ化することを彼は予期していたのかなと、今回ひさしぶりに再見してみて思ったのでした。ダバが別の女(オリビー)に夢中なのは火を見るよりもあきらかであっても、彼のために力を尽くし、その後をついてゆこうとするふたりの姿も、その未来を予見させるもので。20代の頃はしょうじき、なんで?と思っていたダバの最後の選択も、いまならわからなくもないところです。

それから、ポセイダル側の心情も、大人になっても、生活が安定していても、消化しきれていない欲望がけっこうあるその感じが、いまだとちょっとだけわかるものがあって。若者をもてあそびたくなる支配者的なお楽しみをする心境はさっぱりわからんのですが、シルエットをおおきくみせる重そうな肩飾りをつけてみたり、中年のヒゲ親父の姿になったり、前髪をメガ盛りした大人女子になったり、永遠の若さを得られるはずなのに、若造とナメられず世間で生きてゆくために地味な工夫をしている3人の姿に、あぁがんばっていらっしゃる…と、ふしぎと共感してしまうのでした。

■「重戦機エルガイムⅠ」をみたときの感想はこちらに。

「重戦機エルガイム」をもういちど好きになる

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