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「重戦機エルガイム」をもういちど好きになる

「重戦機エルガイムⅠ ペンタゴナ ウインドウ」をみました。8月にBS12で放送されていたものを。おそらく20年ぶりくらいに。TVシリーズを再編集したOVA作品で、主人公ダバが、自分の出自を周囲に明かすまでの物語になっています。

「エルガイム」は、キャラクターもメカニックも永野護さんがデザインを担当されている、ただでさえ必要な設定の量が膨大になるロボットアニメではかなり特殊な状況の作品ではあるのですが、第6話くらいまでの、シリーズ初期の映像を中心に編集された今作では、そのキャラクターを、メカニックを魅力的に伝えようと、当時のスタッフのかたがたがとても気を配っていらしたことが、映像の端々からうかがえます。

第1話にあたるパート、主役メカ・エルガイムが盗賊団に狙われるシーンでは、エルガイムをのせて走り続けるワークスの上で、振り落とされないようにしながらの肉弾戦を繰り広げられるのですが、きわどい状況ということもあり、登場人物たちから目が離せなくなって。さらにはエルガイムの各部が画面に映り込んでゆくことで、そのサイズ感や、脚部の内側のディテールなどがじわじわ把握されもして。また、けっこうな速度で移動しているので、登場人物たちの髪は、風を受けてなびき続けていて、ただ立っているよりも、そこにいる感じがあって。視聴者にとっては初めてみるキャラクターやメカニックが、等身大の感覚から実感しやすいつくりになっています。

また、ゴロゴロと崖を転がり落ちるアム、とか、おなかが空いて、他人がつくった食事を黙って食べちゃうギャブレー、とか、初期話数では身体の重みや人間の生々しい面が強調される描写が多くて。永野護さんによる、草食系とでもいうべきか、それまでのアニメキャラとはテイストの違うデザインとのギャップが、なんとも言えない味わいになっています。第6話にあたるパート、銃で牽制していたレッシィに、一瞬の隙をつかれて蹴りを喰らわされるアム、しかし蹴りを食らわされた脚をつかんで反撃!さらにそれに対抗するレッシィ!というシーンはあまりのバカバカしさに、心底ふたりのことがいとおしくなりました。野性味あふれ過ぎる作画で、永野キャラの面影はきれいさっぱりなくなっちゃってはいるんですけど。

たぶん毎週TVをみていたひとがシリーズをふりかえるためにつくられているので、いつの間にやら主役メカが変わっていたり、知らないベレー帽のおじさんが仲間になっていたりという感じなのですが、王家復興!という一点に絞って、第1話から第33話までの物語を1時間弱に編集してしまう潔さは、なかなかに清々しいものがあります。最初にダバの目的を明確にするためなのでしょう、永野護さん自身が原画を担当されたという、第14話でのポセイダルとの対話が、冒頭でみられたのも嬉しかったです。

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