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気がつけば夢は叶っていた

2019年、「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-」というTVアニメ作品で風景をデザインする仕事をしていました。総監督は栗山貴行さん。監督は小坂春女さん。小坂さんは、きのう話をしました映画「メイクアップ!セーラー戦士」を監督されたかたで。こんな仕事がありますがどうでしょう?と、オファーをいただいたとき、それが理由で即・参加を決めたのでした。

アニメの仕事をしていると、こんなふうにむかしみていた作品で仕事をされていたかたとご一緒する機会がしばしばあって。仕事のただなかだともう、その作品のために全エネルギーをかけてしまうこともあり、さらには、もう何十年と仕事をされているかたがヨシとする仕事をする、というハードルがあるので、あまり意識しているヒマもないのですが、たぶん、学生時代にうっすらとあった「これをつくったひとに会ってみたい」という夢は、何度となく叶えているのでしょう。

いまはその機会がない打ち上げの席や、打ち合わせの前後なんかに、あの作品みていました〜という話をすることもあるのですが、その返しのほとんどは、ひじょうにニュートラルなテンションで。当時の雑誌のインタビュー記事とかだとかなりアツい感じだったんだけどなと、ふしぎに思うこともあったのですが、それゆえに夢を叶えた実感もあまりなかったのですが、16年、この設定画をつくる仕事を続けてきてその理由がようやく、ちょっとだけわかった気がします。

自分が子どもの頃からつくり続けていらっしゃる、ずっと最前線にいるということは、どんどんその時代に合わせて新しくアップデートしているということでもあり。もちろん、当時のことを質問すればスルスルと答えが出てくるくらいにその仕事のことを大切に思っていらっしゃる、けれど、それが「いま」を進むときの何かを縛るものにはなっていない。過去作は経験、ではあるけれど、すべてではない。やはりいまを、ただこなすのではなく、未来に向けて歩いているひとだからこそ、冷静に考えるとかなり面倒なこの仕事を続けていられるのだし、多くのひとがさまざまな思いで参加している作品の、道を示すひとになれるのだと。

そういうひとになることが、立場とかではなく、そういう心のひとになることが、学生時代とは違う、いまの夢です。いえ、夢じゃない、いまそこにある、そろそろ手が届きそうな、手を伸ばしてつかまなくてはいけない現実、なのでしょう。

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