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「島耕作」との近くて遠い「交際」

キャリア史上最大のバタバタ感をまたもや更新してしまっている今日この頃、「取締役 島耕作」を再読しています。取締役になった島が、九州で、そして、日本を離れ中国で奮闘してゆくお話。

40代のはじめ、「課長」から最新作まで一気読みした頃は、女性関係がずいぶん控えめになったな。島、いっつも会議やってるな、ぐらいに思っていたものですが、いまはこのシリーズをとてもおもしろく感じます。ヘルプで途中参加的な仕事が多かった当時とは、会議や打ち合わせの時間の意味合いがだいぶ変わってきたし、女性関係に傾けられていた情熱が別のかたちに変わってゆくのも、島よりは一回り年下ではありますが、ちょっとわかる。

かつて上司だったひとたちや、その近親者が次々と病気でいなくなってゆくのはとても切ない、けれどその悲しみを引きずってる間もないぐらい、やるべきことは次々と増えてゆくし、いっつもある会議でもシャンとしていなくてはならない。この作品特有のドライな温度感で描かれるそんな日々がじわりと心に沁みてしまって。

とはいえ共感、ではなく、あくまで沁みる、というくらいで。モリモリにタスクが詰まっているなか、右に行くか左に行くかを選択するときの優先事項が、自分の場合は仕事とか、自分らしく生きること、とかではなく、かなりの割合で「家族」…島やその他の登場人物たちがほぼほぼ選択することのない部分であることに、「取締役」を読んでいてあらためて気づいてしまったのでした。お世話になっていたところから独立した頃は、もっとドライに「仕事」を選択するような人間だと思っていたんですけど。

家族の体調が心配だから打ち合わせの時間は変えていただく、とか、作業時間は短くなるが、朝のおむずかりをなんとかしてから保育園に送り込まねば、とか、良い仕事をする、という心構えの次に考えているのは気がつけば家のことばかり。きっと「島耕作」世界では「出世しないキャラクター」とカテゴライズされてしまうのでしょう。でも、数年前は思ってもみなかったそんな自分が、わりときらいではないです。

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