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きららパズル部について

この記事は、東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2021 21日目の記事です。

昨日の記事はふぁぼんさんの「落合陽一さんと対決しました」でした。この間日本科学未来館というところにはやぶさ2の展示を見に行ったら、常設展に落合さん監修の展示があって、「よくわからんなあ」と思ったのですが、この解説で少しわかった気がしました。

明日の記事は比類さんの「きららと音MADの関わりについて」です。私のサブカルチャーの知識はほとんどが「あ、これ音MAD素材で見た!」で構成されているので、個人的に非常に楽しみにしていた記事です。

この記事は、ペンシルパズルII Advent Calendar 2021 21日目の記事でもあります。昨日の記事も明日の記事もありませんが、ペンシルパズルI Advent Calendar 2021は全日埋まっているのでこちらをどうぞ。

本題

Advent用のパズル作りました。
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「きらら展名古屋」 Hidden Words

  1. 「まんがタイムきらら展 in 名古屋」のメインビジュアルに描かれている32人のキャラクターの名前を盤面に入れましょう。

  2. 名前は1マスに1文字ずつ、上から下または左から右に入ります。

  3. 異なる名前に属するマスはタテヨコナナメに接しません。(2つあるHARUKAは別の名前として扱います。)

  4. 盤面外側にある文字は、その行/列にその文字が入ることを表します。

  5. 同じ文字がある行/列に2つある場合、その行/列にその文字は2つ以上入ります。

penpa+リンク
Penpa+リンク

12月21日に登録していたのですが、パズル自体が約1週間早く完成してしまったので、暇ができてしまいました。その結果この文章が書かれました。


はじめに

きららパズル部とは

まんがタイムきらら作品の要素を含むパズルのことです。

ここで「パズル」といったときには、「ペンシル」パズル (書き込むことによって解答するパズル) を意味します。数独 / ナンプレはこのカテゴリーに入ります。次点ぐらいで有名なのはスリザーリンク / ループコースでしょうか。ジグソーパズルはこのカテゴリーには入りません。

もともとは、アイドルマスターシンデレラガールズ界隈の造語法において「デレマス○○部」といって「デレマス要素を持った○○」という意味を持たせるものがあり、その一つである「デレマスパズル部」にならっての「きららパズル部」です。

一般的な単語ではありません。「デレマスパズル部」のTwitterハッシュタグの使用が2018年9月に始まってから数百の問題が出題されているのに対して、「きららパズル部」タグの下で出題された問題は今までありません。東大パズル同好会OBである初月葉桜さんが何問か作って大会用のストックにしているらしいのですが、いまだに日の目を見ていません。(見たい!)

この記事は何なのか

私は漫画だとか映画だとか文学だとか歴史だとかスポーツだとかそういう全然パズルに関係ないものをテーマにしたパズルを解くのが大好きです。もっとそういう問題を出題してもらえるように、どのようなパズルがこれまでに出題されてきた/されうるかを分類してみました。

また、この記事には、東大恋アス同好会の合同誌 "#FindOurStars vol. 2" にパズルを投稿したら会員から不本意にも前衛作品扱いされてしまったため、そんなことないよという主張をしようという意図もあります。二次創作としてのパズルは十分一般的…ですよね?

そんなこんなで読者としては、きら同会員でパズルのことをよく知らない人も想定しています。葉桜さんの「パズラー向けきらら入門」をちょうど反転しているといえなくもない。 (きららー向けパズル入門???)


さて、このようなパズルを作るうえで障壁となるのは、やはりどうやって元ネタの作品に関連する数字/ヒント要素を抽出するかです。どのようにこのポイントを解決しているか、という視点でデレマスパズル部/きららパズル部/その他もろもろの問題を分類していきます。

まずはヒント数字に関する方法。

名前の語呂合わせ

ネタの見つけやすさ: かなりレア。偶然に頼るしかない。
パズルの作りやすさ: ハマれば量産できる。

キャラの名前を語呂合わせで数字に変換して、それをヒントに表出させる方針です。

このタイプの代表格は、上述のデレマスパズル部における、成宮 [なるみや -> 7638] 由愛をテーマとして作られた問題たち。問題数はざっと数えて200は下らず、7638を入れたパズルを持ち寄って毎月公開するイベントの存在も相まって現在進行形でどんどん増えていっています。もはやパズル界のミームです。

しかしどんなキャラでも語呂合わせで数字にできるとは限りません。実際「なるみや」で「る」を6とするのは若干無理気味です。きららパズル部の過去の出題例は後述のHundreds [シャミ -> 483] しか知りません。

そして語呂合わせがあったとしても、数字によっては扱いづらくなります。0や1など極端に小さい数字と8や9などの大きい数字は同じパズルに入れづらく、相性が悪いです。7638の絶妙なバランスは偶然の妙であると言えそうです。

さらに、パズルと元ネタの共通点が語呂合わせだけだと関連がかなり薄いので、「これはきららパズル部です!!」と言い切る大胆さも必要です。

誕生日などの数字が絡む属性

ネタの見つけやすさ: 語呂合わせよりは可能性が広いが、やはりバランスの悪い数字を避ける必要はある。
パズルの作りやすさ: ハマれば量産できる。

語呂合わせと同様です。より選べる数字の幅が広がっており、実用性が高いです。この方針で作られたきららネタの作品には、Hundreds (HPL #3) by 枝豆があります。

ルールはインストラクション参照。チノ、千夜、シャロの誕生日 (12/4, 9/19, 7/15)。例題にも 4(シ) 8(ャ) 3(ミ) とシャミ子の誕生日9/28が入っている。

この問題はパズルコンテストで出題された問題で、私は参加者としてこれを解いたのですが、作者に教えてもらうまでネタには全く気付いていませんでした。言われれば「あー」とはなりましたが。

他にパズルに使われがちな属性には「年齢」や「身長」などがあります。変わったところではトケタ vol.7に登場する「Xanadu ブロックパズル」があるでしょうか。どうびじゅの主要キャラ5人が組んだ美術科紹介展でのチーム名ですね。作者はまたも登場の葉桜さんです。

誕生日記念などうまいタイミングで出せば、語呂合わせよりは元ネタとの関連を出しやすいでしょうか。


次に紹介するのは数字以外を使う方法。量産はしづらいですが、その分説得力が高いです。

ヒントでお絵かき

ネタの見つけやすさ: なんでもネタになる。
パズルの作りやすさ: 一意にするのは簡単だが、量産はしづらい。

(1) ヒントの配置でお絵かき

これはほとんどのパズルで可能でしょう。

このタイプをよく作っているイメージがあるのはほうきたてさんです。

これはほうきたてさんがルールを考案した 「アイスバーン」というパズルで、盤面には河鍋蒼さんの名前が入っています。

ヒントで絵をかいて一意のパズルを作ること自体は簡単ですが、適当に作ると大味になりがちなイメージです。その点を鑑みると、なるほどアイスバーンはこういうネタをやるのに適したパズルだなあと思います。ダブルチョコとかも適しているかも。

(2) ヒント自体でお絵かき

こっちは使える種類がかなり限られます。

有力なのは「カーブデータ」。きららネタの出題も結構多いです。例えばこんな作品。とてもわかりやすく「ゆゆ式」!

カーブデータ by USBe. ルールはリンク先参照。

この手のカーブデータは、作るのは大変ですが、各ヒントそれぞれが大きく活躍するので、大好きです。大好きなので他の出題もいくつか紹介します。

(PuzSqかつきららだと他にまちカドまぞくしかなかった)

ほかにヒントでお絵かきできるパズルとしては「分数分割」や「Figure Doppelblock」が思いつきますが、カーブデータと比べると大きくヒントの自由度が落ちそうです。

ルールのシンボリズム

ネタの見つけやすさ: かなりレア。
パズルの作りやすさ: 量産もしづらい。

キャラクターの属性とルール自体を関連付ける方針です。この系統で作品を多く残している印象があるのはタイガーアイさんです。

曲の歌詞に登場する単語を盤面だけでなく同時にルール文に盛り込んでいます。関連のさせ方に非常に説得力がある傑作です。このArafのように無理なくルールに関連付けるのはかなり難しいため、実装までこぎつけている作はなかなか見ないです。

きららパズル部ではこんな作品がありました。カーブデータ系統の闇ルール…!!!

アイデアレベルではこんな提案があります。(はるみねーしょんのパズル要素 is 何?)

ヒントとして文字を表出できるパズル

(1) 覆面系

ネタの見つけやすさ: 使える文字列は大きく限られる。
パズルの作りやすさ: 難度が高くなりがちで、大変。

CodedとかCryptoとか呼ばれる、ヒントが文字で置き換わっていて、同じ文字は同じ何か (数字etc) に対応するやつです。数字以外では Gemini Loop も覆面系といえるでしょうか。

1文字1桁に対応するのがほとんどなので、登場する文字の種類数は10以内でないといけない、また1回しか登場しない文字が多すぎると何のために覆面しているのかよくわからない、など使える文字列への制約が厳しいです。

Coded系のほかにはAlternative系 (盤面上に現れる同じ種類文字のうち、ちょうど1つだけが黒マス/星/etc.になる)もここに分類されそうです。文字の種類数に関する制約はないですが、こちらも1回しか登場しない文字ばかりだと追加ルールの意味が薄くなるので、制約の厳しさは健在です。

例としてあーくさんの "Alternative Star Battle" やPrasanna Seshadri の誕生日パズル2つ (Swivelling Serpents, 30th Birthday Surprise) なんかがあります。


(2) お家へ帰ろう他

ネタの見つけやすさ: 一意にするだけなら何でも使える。
パズルの作りやすさ: 別解が出やすく、大変。

「お家へ帰ろう」は覆面系でもワード系でもないのに自然にワードを表出できる、非常に例外的なパズルです。きららパズル部では(残念ながら複数解でしたが)こんな作がありました。

ネタの入れやすさという点では覆面系よりも使えるワードの幅が広いです。個人的にはこういうお家へ帰ろうは好きなのでもっと見たい。が、別解が出やすいため、作るのに慣れがいるのかあまり見ない印象です。

他のパズルで言えば、アルコネ (pdf注意) も文字ヒントを出しやすいですが、同じ文字がたかだか2回しか使えずお家へ帰ろうよりもキツそうです。


ここから少しずつ正方形グリッド+数字/図形のパターンから離れていきます。

ワードパズル

ネタの見つけやすさ: 覆面よりもワードセットの自由度が高い。
パズルの作りやすさ: 重い理詰めになりやすい。

個人的なおすすめです。

ここではスケルトンパズルに代表される、「言葉を使うが、知識は必要ないグリッド系パズル」のことを指します。この手のパズルは海外での出題例が多く、セルビアのNikola Zivanovicによる"Word Show"はこのようなワードパズルだけからなる大会です。

Word Showの出題の1つ。世界パズル選手権で上位10人に入った選手の名前を条件を満たすように盤面に入れていくという問題。すべての問題で同じワードセットを使っており、ワードパズルの多様性をこれでもかと見せてくれる傑作コンテスト。

まんがタイムきららに関連する作品として思い当たるのは、まいなすよんさんのカナオレ「アニメ『きんいろモザイク』サブタイトルじゃ」です。

私も小さいですが恋アスネタで「にょろにょろワード」を作ったことがあります。

ワードパズルは使える言葉のバラエティも、種類自体のバラエティも、ロジカルな問題から直感的な問題までとにかくいろいろなものが作れます。私は重くて道が狭いワードパズルを解くのも作るのも好きなので、(「本題」を見ればわかる) 色々見たい!!

論理パズル

ネタの見つけやすさ: なんでもネタになる。
パズルの作りやすさ: キャラクターを問題に登場させるなら、口調を真似て書くなどの工夫が要求され、難しい。多分。

文章で説明される制約を満たす条件を求めるタイプのパズルのことです。「川渡り問題」や「天使と悪魔問題」、そしてニコリでいう「推理パズル」が有名でしょう。きららパズル部での過去の作例は思いつきません。

なんとなく作品紹介してみます。2016駒場祭ハバネロ1番 by しもりん。

日本語の人名の姓名が同音異義語に自然になりうることを使った面白い問題。

#FindOurStars vol. 2の編集会議では、会員の のこ氏が「ナナチカ探偵団にパズル要素を含めたら面白いのでは」というアイデアを出していました。面白そう!「こういうパズル作って」といわれたらすぐ作りますよ!


ここからはもはやロジックだけでは解けなくなってきます。

クロスワード

ネタの見つけやすさ: なんでもネタになる。
パズルの作りやすさ: どこまでテーマにこだわるかによる。

多くの人がパズルといわれて想像するのは数独かこれでしょう。非常に一般的な (かつ数独と違い商標登録されていない) パズルだからか、きんモザにアリスがサイレンセスターの書店でクロスワード雑誌を買うシーンがあったり、ごちうさにココアがチノから取り上げたクロスワード雑誌の問題を解いてしまうシーンがあったりしますね。

きららクロスワードは過去の出題例があります。作者はパチョ石さん。

全てのカギ、そしてアンサーキーがまんがタイムきららに関する言葉からなります。言葉の一部だけをいれるカギがいくつか見られますが、雑誌などに掲載されるクロスワードではこれは不文律的に禁止されているので、ふつうテーマに関する言葉は6, 7割ぐらいにとどまります。

逆に言えばどこまでクロスワードのルールを守るかには自由度があるので、比較的作りやすいジャンルかも。

謎解き

ネタの見つけやすさ: なんでもネタになる。
パズルの作りやすさ: 問題自体は作りやすい。問題画像作成が面倒。テスターも探さなければならない。

謎解き/パズル境界問題はセンシティブな話題ですが、この記事では自作問題の宣伝のために含めてしまうことにしましょう。

謎解きイベントの人気は非常に高く、きらら作品が登場する謎解きイベントも過去に公式に何回か開催されています。

  • 2015年「がっこうぐらし!どきどき遠足!」

  • 2018年, 2019年「ご注文は謎解きですか??」

非公式なものも含めればもっとあるはずです。

私は謎解き界隈との接点はあまりないのですが、日本で言う謎解きに対応する英語圏の"Puzzle Hunt"のプレイヤーとはよく話します。最近約100人ぐらいからなるPuzzle Huntのチームに加入しました。こんなのも作りました。

これを作って分かったことは…ペンパを離れるとなんて作りやすいんだろう!私は元ネタがあるパズルを作るときにどうやって納得いく関連性を出そうと腐心しすぎて結局作れないということが多いのですが、ことKoias Puzzle Huntに関しては地学における面白い事項をスタート地点にして自然に作ることが出来てしまい自分でもびっくり。

自由度が高ければ高いほど作りやすいんでしょうか?ともかく作っててとても楽しかったので、別作品のネタをMicare!にそのうち出すかもしれません。他の人が作ったものも見てみたい。


おわりに

こんなものでしょうか。かなり分類が多く冗長になってしまいました。ともかく、この記事を書いた目標の1つである「二次創作としてのパズルが一般的であることを主張する」ことは十分すぎるほどにできたと思います。

最後にもう一度言いますが、私は作者の個性が出るロジック寄りのワードパズルが大好きです。ABCtjeなりにょろにょろワードなりScrabbleなりみんなもっと作ってくれ~~~~~

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