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咎人の旅 -詩-

辿る星の跡
拭った涙の痕
沈む月にくちづけを
眠る星に子守唄を

流星の欠片を砂漠で探すふたり
歩き続ける賢者
諦める愚者

照りつける太陽
喉の渇きは理性を失わせる

毒蛇は愚者を唆し剣を授ける
賢者を殺して血を啜ればいいと

愚者の理性はとっくに崩壊していた
そして凶行に走る

歩き続ける賢者の背後からひと突き
剣を抜けばドクドクと血が溢れる
愚者にはそれがオアシスのように見えていた
賢者の血を啜る愚者
悍ましい光景を嘲笑う毒蛇

辿る血の痕
拭った血の痕

賢者は最期に「お前に託そう」と言って愚者に流星の欠片を託し息絶えた
我に返った愚者は慟哭し賢者に縋る

賢者の後を追うために剣を己に突き立てようとすると
流星の欠片が言う
「賢者に託されたなら罪を背負って生きろ愚か者め。私を空に帰しておくれ!お前の罪が赦されれば私は空へ帰れる」

愚者は咎人になり罪が赦されるまで流星の欠片と旅を始めた
流星の欠片は咎人の道を照らしてくれるのだった

辿る星の跡
拭った涙の痕
沈む月にくちづけを
眠る星に子守唄を

咎人の旅は始まったばかり

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