見出し画像

環境・気候非常事態宣言発令の真意とは?災害が多発する理由 NPO法人地球守代表理事・高田宏臣さん(上)

近年、地球温暖化による気候変動、ゲリラ豪雨による街の冠水や土砂災害などの大規模な災害が全国で多発している。「大地が呼吸できず、これ以上環境破壊が進むと取り返しがつかないことになる」と警鐘を鳴らす人物がいる。全国で環境保全活動や啓蒙活動などを行う地球守代表の高田宏臣さんだ。

高田さんが社長を務める高田造園設計事務所では、昨年、民間会社ながら危機感を感じ「環境・気候非常事態宣言」を発している。今後、人間はどのように自然と共生すればいいか道筋を聞いた。

災害が多発している理由

――大規模な災害が最近非常に多いですね。

ここ数十年の間に、災害や河川の氾濫などの件数は加速度的に増えています。

これは、今の大地の環境が崩壊・劣化していることに起因します。山を大規模に削って道を通したり、斜面をコンクリートで押さえこんだりしてきたため、大地に染み込まなくなった水が河川に溢れ、氾濫を起こしているのです。

これは、現代土木工事の方法が関係しています。例えば、災害対策のために、海に防潮堤を伸ばし、高台を作るために流域の山を削って下流部を盛って平らにすることで、海に流れ込もうとする水が遮断されますし、山を削ることで大地にしみ込まず水を貯える場所もなくなります。また、防潮堤も水の流れを遮断しています。

山は健康であれば土の中にたくさんの空洞があり、そこにしみ込んだ水はゆっくりと河川に流れていきます。しかし、川の流域を壊すことで、そうした大地の恒常性という機能がなくなり結果として山が劣化していってしまうのです。

――土砂災害も多いように感じられます。

どこかで水脈を分断すると、大地に水が供給されなくなり、山は乾いていきます。木の表面が乾き、根っこが後退することで、古木から倒れていき、大雨が降った際には弱った地盤が原因で土砂災害が大規模化しやすくなります。

――川の増水に関して。

現在の川の護岸工事では、川の下流に水害を防ぐ目的で岸壁や川底をコンクリートで固めてしまうところが多く、川から地中に水がしみ込まない作りになっています。先ほど述べた大地の弱体化も相まって、水の逃げ場がなくなり、大雨の際に川が増水してしまうのです。

その結果、昨年に千葉で発生した台風21号では、ハザードマップに入っていない区域までが大量に冠水してしまいました。

今後も、今回のように災害があったら、その都度堤防を高くしようとか、調整池を広げようとかの対策が行われていくと思いますが、これは川の機能自体を奪ってしまうだけで根本的な解決にはなりません。ただ応急処置をしているだけなんですね。

そのため、自然破壊はもう限界点まで達しています。仕事で全国各地の森や川などを見ていますが、急激に自然は傷んできています。そうした状況を鑑みて弊社では「環境・気候非常事態宣言」を表明しました。

環境・気候非常事態宣言の表明

画像1

――環境・気候非常事態宣言とはどのようなものでしょうか。

まず、2016年12月にオーストラリア・メルボルンのデアビン市が「気候非常事態宣言」を宣言しました。それ以来、現在に至るまで世界で1,000以上の自治体が非常事態宣言を出しています。

日本でもすでに30を超える自治体が「気候非常事態宣言」を表明しています。気候変動が一定の段階を超えたら、地球上のほとんどの土地で人間の生存が危うくなるのですが、その臨界点が間近なほど、現在の気候変動や環境破壊は進んでおり、人間を含む地球生態系のシステムの限界を超えつつあるのです。

ただ、弊社では気候非常事態でなくて、環境・気候非常事態という名前にしました。温暖化だけが原因で、CO2だけ減らせば問題が解決するという単純化した発想にしたくなかったのが理由です。

メガソーラー建設は山を傷めてしまう

CO2削減だけを考えると、再生可能エネルギーを創出するためにメガソーラー建設を推進して、土地の源を奪ってしまう危険性があります。

山を削って建設するメガソーラーは、問題の解決になりません。かえって山地の健康を奪ってしまいます。

――具体的には。

こちらの続きはエコトピアでどうぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?