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PASSTOマガジン vol.4 | 暮らしの中の資源循環

みなさんこんにちは。
PASSTOマガジン編集長のガクです。

今回は「暮らしの中の資源循環」ということで、マンションに設置された回収ボックスをテーマに、どんな経緯で設置されることになったのか、どのように暮らしに変化があったか、などをご紹介します。

写真:澤 圭太




豊洲シエルタワーの近澤さん

豊洲シエルタワーから望む豊洲の景色

今回、訪問したのは東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩わずか1分という利便性の高い場所にある「豊洲シエルタワー」。ここに来たのは、「住民からの声で回収ボックスが導入された珍しい事例がある」と聞き、実際にその住民の方に話を聞いてみたいと思ったのがきっかけだ。

入り口で迎えてくれたのは、物腰柔らかでおだやかな雰囲気の近澤さん。彼女が噂の人物だ。早速、ご自身やマンションについて色々と聞いてみた。

豊洲シエルタワーの総戸数は560戸、スーパーや飲食店、病院なども入居し、施設内でほとんどの用事が済む。しかも駅直結という利便性が特徴だ。近澤さんは2006年の完成当時から住んでいるという。


「もともとここから見える場所に住んでいて、建設される過程をずっと見ていました。当時一緒に住んでいた母の『高いところに住みたい』という希望もあり、気軽な気持ちで抽選に参加したところ見事に当たって入居できることになりました。引越しまでに2ヶ月時間があったんですが、新居を楽しみにする母は毎日マンションを訪れるほど喜んでいました(笑)」

金融系企業に勤めている近澤さん。仕事や自身の価値観についても話を聞いてみた。

「ずーっと仕事一筋でやってきて、仕事もそこそこできるようになり、会社の中には高く評価してくれる人もいて、とても充実していました。おかげさまでこんなマンションも買えるようになりましたしね(笑)。でも、年齢を重ねる中で、仕事のパフォーマンスが思うように上がらなくなっていくことを実感し、会社で第一線で働き続けるのではなく、違うことに打ち込んだ方が良いのでは?と40代の頃からずっと考えていました」


そんなことを考えながら暮らしていると、自ずと色々な情報が入ってくるようになり、現在ではマンションの理事会、地域の自治会、マンション目の前の公園の花壇整備、教育機関と連携した子ども向けのお茶教室など、地域貢献にまつわる様々な活動に参加し、プライベートでも多忙な日々を過ごしている。


「以前は横須賀の一軒家に住んでいたんですが、マンションに住むと自分1人で暮らしているわけではなく、住民のみなさんと一緒に建物を守る、住みやすい環境をつくる、ということをしていかなければならないと痛感しました。集合住宅に住むことは、そういうことなんだなと。自分の都合だけでなく、様々な価値観を持つ住民の方の意見もまとめながら、みんなにとってプラスになることをやっていかないといけないと思っています」

友人のマンションで見かけたのがきかっけで

もともと洋服が大好きな近澤さん、着なくなった洋服が家にたくさんあったという。綺麗な状態で残っているため捨てるのはもったいないと思い、自治体で衣類回収していることを聞いて実際に利用してみようと思ったのだが・・・

「そもそも自分で洋服を収集場所へ持っていかなければならなくて、場所も遠い。しかも平日しか回収がなく『使えないじゃない!』と思っていたら、たまたま遊びに行った友人が住むマンションの1階で衣類と雑貨の回収ボックスを見かけて、コレだ!と思いました」

調べてみると、近澤さんが住むマンションと友人が住むパークアクシス豊洲キャナルは同じ三井不動産レジデンシャルサービスの管理する施設だったことから、すぐに管理人へ直談判し、2023年5月に回収ボックスの設置が実現した。

豊洲シエルタワー1階エントランスに設置されている回収ボックスにて

「最初は私1人でボックスがいっぱいになるぐらい利用していました(笑)。ちょうど1階にあるクリーニング屋さんが撤退してしまって、そこに季節保管として預けていた半年分の洋服が全て戻ってきてしまって困っていたところだったので、本当にタイミングが良かったです」

ちょうど回収ボックスに投函するモノがあるということで撮影させてもらった。衣替えシーズンということもあり秋冬物が目立つ

捨てることが可哀想だった

ここまでの通り、自治体の衣類回収も利用できず、フリマサービスなども利用していないため、泣く泣く洋服を捨ててしまうこともあったという。

「結局、自治体の衣類回収は1度も利用できませんでした。捨てるとは言っても、大量に捨てることもできず、そもそも捨てると思うと洋服が可哀想になってしまい箱に詰めてトランクルームに保管していたこともありました」


2年前から終活に励んでいるという近澤さん。ぬいぐるみが大好きな母親の影響で自身でも購入することがあり、家中のタンスの上にはぬいるぐみが山盛りに並んでいたという。

「1ヶ月に1回ほこりを落としてたんですが、大変になってきてなかなかできなくなってしまい、それも可哀想だなと思って、綺麗に洗濯をして回収ボックスへ入れさせてもらいました。そんなことも終活の一環として取り組んでいるのですが、そもそもぬいぐるみは洋服以上に可哀想で捨てられなかったので、とっても助かりました」


終活の取り組みとして、まずは目につくところから片付けをはじめた近澤さん。捨てずに済むことで、手放しやすくなり、片付けが進みやすくなったという。


「回収ボックスに入れたものは、きっと誰かが使って喜んでくれたに違いないと思うと、安心して箱に入れられて、終活が進みました。回収ボックスがあることで片付けよう!と思うきっかけになりましたね。結果的に部屋がスッキリして気持ちよく生活できています」


回収ボックスの設置にあたり、他の住民からクレームがないか不安もあったというが、実際に設置してみると不満の声はなく「回収ボックスがあって良かった」と言う声もたびたび上がってきたという。そんなこともあり、豊洲シエルタワーでは平均して毎月300kg以上もの衣類や雑貨が回収されている。住民の3分の2が賃貸で引越しの頻度も高く、そこでの需要も高いようだ。

取材中にもフラッと住民が回収ボックスへ訪れるシーンに遭遇した。慣れた手つきで衣類を投函している様子を目にし、近澤さんをはじめ豊洲シエルタワーの住民には、回収ボックスを通じて使わないモノを次の人へ繋げる、ということが浸透しているのだと感じた。

「暮らしの中のサス活」とは?

ここまでで紹介した、近澤さんが住む豊洲シエルタワーとその友人が住むパークアクシス豊洲キャナルで設置されている回収ボックス。それぞれ三井不動産レジデンシャルが手掛ける「暮らしのサス活」の取り組みの一環でPASSTOと連携して不要品の回収を行なっている。

担当の宍戸さんに話を聞いてみた。

三井不動産レジデンシャル Life-styling×経年優化推進部
カーボンニュートラル推進室 主査 宍戸優太さん

「暮らしのサス活は、三井不動産レジデンシャルが提供する住宅の入居者向けに、暮らしの中でサステナブルな活動を楽しみながら実践してもらうための取り組みです。具体的にはアプリを使って、自宅の電気やガスの使用量が少ない家庭にはポイントなどを付与するサービスを行っています」


三井不動産レジデンシャルでは、暮らしのサス活スタート以前から家庭で使うエネルギーを見える化するシステムを導入し、入居者の自発的な省エネ活動を支援していた。しかし、すぐに辞めてしまったり、モチベーションが維持できないなどの課題があった。

入居者だけが頑張るのではなく、三井不動産レジデンシャルやパートナー企業も応援することでより継続的に、楽しく実践していける仕組みを目指してできたのが「暮らしのサス活」だ。現在ではスポーツチームやエンタメ企業など、様々なジャンルの企業が参画している。

「もともと太陽光パネルなどの再生可能エネルギーを利用し、省エネもしくは実質消費エネルギーゼロの住宅やマンションを会社として増やしていこうとしていました。しかし、そういったハード面だけではなく、そこに住む住民がどういった生活を送るか、というソフト面も同じように重要だと考え、思わず実践したくなるような仕組みを作ろうというアイデアから暮らしのサス活が生まれました。『推し活』にかけているのですが、推しのために自発的に何かをするように、好きなサッカーや野球チームのために頑張る、など楽しんで取り組めるような仕組みになっています」


暮らしのサス活が始まって2年が経ち、取り組みは好評だという。これまではキャンペーンやイベントをメインに実施しており、参加者は2万5000人にのぼる。現在はアプリも展開し、今年の4月から自宅の消費エネルギーが可視化され、どれぐらい省エネに貢献できたかが分かるようになり、より一層環境負荷削減のための活動に貢献できる仕組みになっている。

ここで、暮らしのサス活としてマンションでの不要品回収を実施することになった経緯を聞いてみた。

「もともと家庭内で出てくるゴミもカーボンニュートラルを推進する上で減らしていく必要があると考えていた中で、PASSTOを運営するECOMMITの代表 川野さんから回収ボックスのご提案をいただいたのがきっかけでした。結果として最適なサービスだと判断し、導入に至りました」

回収ボックスを導入してみて

近澤さんが最初に見た、パークアクシス豊洲キャナルで記念すべき最初の回収ボックスが設置され、豊洲シエルタワーを含め現在は5つのマンションで導入している。実際にはじめてみて、その回収量に驚いたと言う。

パークアクシス豊洲キャナルに設置している回収ボックス
広いエントランスロビーではソファやデスクが置かれ、休憩スペースとしてもワークスペースとしても利用できる


「平均して各マンションから毎月200kg以上の回収品が出ていて、もともとニーズがあると思っていましたがこれほどとは思っていませんでした。衣類の回収ボックスはアパレルショップなどにもありますが、あまり利用者が多くない印象だったので、マンションという『生活に最も身近な場所』に置くことの意義があると感じました」

取材当日にボックス内を覗いてみると、衣類がそろそろ箱いっぱいになる頃だった

回収ボックスをはじめるにあたり、まずは1年間のトライアルとして実施。住民からの反応も好評で、近澤さんの目に留まり他のマンションでの設置リクエストもあったことから、豊洲エリアマンション5棟での設置が実現した。設置先のマンションの利用者から、こんな声があったという。


「お子様連れの方で、子ども服を投函されてたのですが、やはり今まで捨てることへの罪悪感があったそうです。ちょっと良いことをした気持ちになり、一緒にいるお子様にも捨てないで循環させられるんだよ、ということを教えてあげられる良い機会になったとおっしゃってました」

すまいとくらしの未来へ

豊洲エリアでの事例を受け、今後は順次エリアを拡大させながら、希望するマンションに回収ボックスの設置に向け取り組みを拡大していく予定だという。現在すでに30棟が具体的に進んでいる。

そもそも住宅やマンションを作って販売するというビジネスにおいて、なぜこのような取り組みをするのか、改めて聞いてみた。


「会社の理念に『すまいとくらしの未来へ』とあるように、建物だけでなく、暮らしを含めてご提供している、と考えています。時代背景に合わせてアップデートしていき、より良く暮らしていただくため、こういった取り組みは住民の利便性・満足度向上という観点から非常に価値のある取り組みだと考えています」


今後の展望について、続けて話してくれた。


「理想的にはマンション自体からゴミ置き場、という言葉自体も無くせたらいいなと思っています。もちろん、捨てなければならないものはあると思いますが、その手前で循環させられるような『サーキュラーステーション』といった空間を作っていけたらと思っています。現在は既存のマンションに回収ボックスを設置していますが、新築マンションにそういった設備自体を作っていくことも実現していきたいと考えています」

最後に、暮らしのサス活の回収ボックスについて、改めてこう語る。

「循環を阻害する最大の要因は『めんどくさい』だと思っています。頭では捨てない方が良いと分かっていながら、めんどくさくて捨ててしまうこともありますよね。これは、その『めんどくさい』に一石を投じる取り組みだと考えています。ゴミ置き場よりも手前にあるので、これ以上近くにない『循環への最短の場所』としての回収ボックスを、ぜひみなさんにご利用いただけたらと思っています」



今回は「暮らしの中の資源循環」ということで、住民の近澤さん、デベロッパーの宍戸さんそれぞれのお話をお伺いしました。

暮らしのサス活でのPASSTOによる不要品回収の取り組みが、環境負荷を下げるだけではなく、マンションの資産価値向上にも繋がる可能性が秘めているということを、偶然お二人が共通して話していたことが印象的でした。

次はあなたの暮らすマンションにPASSTOがやってくるかも?

使わないモノは次の人へ。
パストしよう!

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