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Is there no one else?

3番手て、前過ぎへん?

第168回、天皇賞(秋)。
1.3倍の一番人気イクイノックスが、スタートして3番手につけ
そのまま追走。
前半1000mのラップが57秒台・・・

同じく圧倒的一番人気となって、今回のようなハイペースを
やはり3番手追走から直線、伸びを欠いて失速、結果8着に
敗れたトウカイテイオーの姿がよぎる。

あれは1992年・・もう30年以上も前か・・。

5番手につけたドウデュースの位置取りがやけに良く映る。
ダービーの時のように、後ろから詰めて届かずといった展開
をイクイノックスが嫌って前へ行ったのか。
だが、これだと直線でドウデュースが差すのではないか?

そんな考えが、全部無駄で的外れだったと思い知らされた直線。
残り300mあたりまで、ルメールの手綱はぴくりとも動かず、
持ったままゆうゆうと前の2頭に並びかけていく。

対するドウデュースは、順位を落としながらもがいていた。

あ・・・ソウユウ・・コトデスカ・・・。

セオリーもジンクスも、記憶さえも置き去りに、
イクイノックスは先頭でゴールを駆け抜けた。

2着、いい脚で追い込んできたジャスティンパレスとの着差は
2馬身半だが、道中を考えれば着差以上の開きを感じる。

(トップ画像はゴール板まで残り約70mほどの所。
 なお、ゴール数10メートル手前からルメールは手綱を抑え、
 ゴールした時は既にイクイノックスは”走って”いない)

残り300mを過ぎてから追い出して、ゴールまでの途中鞭も
一発入ったイクイノックス、出来は8分どころといった感じ
だろうか?

ジャパンカップも睨んでいる同馬は、今回メイチに仕上げ
られていないのは、素人目にもわかる。
それでいてこの競馬・・世界ランク1位は・・・
ダテデハアリマセンデシタネ。。。

結局トウカイテイオーはこっちだったか、というドウデュースは7着。
本来騎乗予定だった武豊が乗っていたら、恐らく5番手よりもっと後ろ
からいったのではあるまいか。

末脚のいい同馬の特性を最大限に引き出そうと、へたをすれば武なら
最後方からいったかも知れないが、恐らくそれでも届かなかったので
は、と思う。

今回、乗り替わった戸崎騎手の乗り方が悪いと言っているのではない。
ここで置いていかれたら、万に一つも勝ち目はないと5番手で食らい
ついていった、考え得る中でベストの騎乗だったのだろう。

モノが違うのだ。
勝った今日のレースを見ても、まだ底を見せていないと思える。

恐らく、現在、2000mまでなら、少なくとも国内に敵はいないと思う。
2000mまでなら。

次のジャパンカップで勝ったとしても驚きは全くないが、2400mは
この馬に最適な距離だとは思えない。
それならば、今日2着だったジャスティンパレスの方が、距離適性
の面では分があるように思える。

が、多分、関係なく勝つだろうな、イクイノックスは。

400m分の距離適性など、かき消してしまうようなモノの違いを
今日見せられた気がする。

それにしても、返す返すも武豊騎手がドウデュースに乗れな
かったのは残念だ。

今日の5レース、新馬戦、レース後装鞍所で乗り馬の鞍を外す時
に馬に右足を蹴られ、歩く事もままならなくなったそうな。
松葉づえをつきながら、「骨折はしていません」との事だったが。

武騎手自身、「初めての経験」と言っている今回の事故。
何等かの暗示のような気もする。

868本のホームランを打った王貞治氏。
引退時、まだやれる力はあったと思う。

だが、引退の年のペナントレース後半の試合、負け試合の途中、
ベンチ裏でスタッフが持っていたルービック・キューブに興味
を示し、手にとって少しの間遊んでいたのだとか。

以前なら、試合中、それも負けている時にそんな事に気持ちがいく
人では無かったと、その姿を見てとても印象に残ったのをよく覚え
ているという記者の話が、王引退の発表があったスポーツ新聞の隅
っこに書いてあったのを思い出す。

何というか、気の緩みとか油断とか、あちこち緩みっぱなしの私が
偉そうにほざく事でもないとは思うのだが。

最前線で戦う者の意識の中の、わずかな緩みは、ちょっとした事に
表れるような気がする。

54才であれだけの騎乗ができるだけですごいのだが。

第168回、秋・天皇賞馬となったイクイノックス。
久々に天覧レースとなった今日は、天皇・皇后両陛下が東京競馬場に
来られていた。

お二方への礼を、とゴール後、イクイノックスの背にルメール、
両脇で関係者が手綱を抑えながら、3者頭を下げると、イクイ
ノックスは、『何をしやがる!俺様に頭を下げさせるとは何事だ!』
とばかりに、傲然と頭を上げ、後ろ脚で立とうとする。

慌てて、3人で必死に抑えながら、頭を下げていたが。

その姿に、映画『トロイ』のブラッド・ピットが重なった。
※以下、映画『トロイ』冒頭のネタバレあり




映画冒頭、1対1の対決場面、身長2メートルはあろうかという大男
を一瞬で倒したブラピ演じるアキレス。
倒した勢いのまま敵軍勢の前まで来ると、殺気だった目で敵の集団
を睨みまわしながら、大声で2回叫ぶ。

”Is there no one else?”(他に戦いたい奴はいるか?)

せきとして誰一人声も出ない、敵軍勢。
そして敵軍の王が静かに歩み寄ってきて、アキレスに問う。

「お前は何者だ?」
「ペレウスの子、アキレスだ」

私にはこう答えているように見えた。

「キタサンブラックの子、イクイノックスや!
 離せや!早よニンジン食わせろや!」




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