King Crimson『The Elements 2021 Tour Box』全曲解説

2014年の活動再開から毎年リリースされてきたツアーボックスも2021年で8作目となった。

2021年ツアーがKing Crimsonの最後のツアーとなるか断言できないものの、少なくとも現時点で2022年以降にツアーは予定されておらず、ツアーボックスも本作で一区切りとなる可能性が高い。

次がリリースされないかもしれないと思うとなかなか買う気になれず、発売から丸一年ぐらい経って購入した。今更かもしれないが全曲解説記事を書いた。

収録曲

Disc 1

  1. 21st Century Schizoid Man

  2. One More Red Nightmare (drum & bass mix)

  3. Indiscipline

  4. Funky Frippertronics (edit)

  5. Man With An Open Heart (alt. mix)

  6. Jamie and Bill

  7. The Talking Drum

  8. The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum

  9. Cognitive Dissonance (League of Gentlemen)

  10. Level Five

  11. Did We Make The Album?

  12. Devil Dogs Tessellation Row

  13. Drum Check

Disc 2

  1. Starless (cello extract)

  2. The Deception Of The Thrush (RF guitar)

  3. Secrets (early take)

  4. Dawn Song (cor angiais/piano)

  5. Dawn Song

  6. I Talk To The Wind (Giles, Giles & Fripp)

  7. Ahh

  8. The Court Of The Crimson King (excerpt)

  9. Exiles (foldback mix)

  10. Book Of Saturday (John Wetton)

  11. Prince Rupert Awakes

  12. Cadence And Cascade (Boz vocal)

  13. Formentera Lady (edit)

  14. Italian Afternoon

  15. Walking On Air (alt. take)

  16. Starless

全曲解説

21st Century Schizoid Man

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲のライブ・バージョン。2019年7月18日にイタリア、ペルージャにあるサンタ・ジュリアナ・アリーナで行われたライブで録音された。このライブは7月12~21日に開催された「2019 Umbria Jazz Festival」の一環として行われた(他にダイアナ・クラール、パオロ・コンテ、ロベン・フォード、ミシェル・カミロ、ジョージ・ベンソン、チック・コリア、ニック・メイスン、トム・ヨーク、ローリン・ヒルなどが出演)。現時点でイタリアで行われたKing Crimsonの最後のライブであり、アンコールで最後に演奏した曲である。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)。

One More Red Nightmare [drum and bass mix]

7thアルバム『Red』(1973年)収録曲の別バージョン。マルチトラック・テープからギター、ベース、ドラムだけを抜き出したもの。"drum & bass mix"と銘打っているもののギターの音も聞こえる。原曲は7分10秒あるがこのバージョンは4分15秒に短縮されている。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Indiscipline

8thアルバム『Discipline』(1981年)収録曲のライブ・バージョン。2019年8月27日にメキシコ、グアダラハラにあるダイアナ劇場で行われたライブで録音された。Jakko Jakszykは歌詞の最後の「I like it!」を各国の言葉で歌うのだがメキシコでは「Me gusta」と歌っている。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)。

Funky Frippertronics [edit]

Robert Frippのソロアルバム『Exposure』(1979年)のレコーディングセッションから。Robert Fripp(ギター、フリッパートロニクス)、Tony Levin(ベース)、Jerry Marotta(ドラムス)の3人による演奏。Steven Wilsonがリミックスした。当時発売予定だった(そして予定通り2022年に発売された)『Exposures』ボックスセットから先行して収録された。本バージョンは短縮されており4分7秒だが『Exposures』ボックスセット収録のフルバージョンは11分29秒となっている。

Man With An Open Heart [alt. mix]

10thアルバム『Three Of A Perfect Pair』(1984年)収録曲の別バージョン。2020年4月7日にMr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Jamie and Bill

5thアルバム『Larks' Tongues In Aspic』(1972年)のレコーディングセッションから。ボックスセット『Larks' Tongues In Aspic』(2012年)にレコーディングセッションを1トラック79分16秒にまとめた「Keep That One, Nick」という曲が収録されており、そこからの抜粋。

The Talking Drum

5thアルバム『Larks' Tongues In Aspic』(1972年)収録曲のライブ・バージョン。2017年7月にメキシコで録音された。何日の録音かはクレジットされていないが2017年7月のメキシコ公演で「The Talking Drum」を演奏したのは16日と18日である。『Meltdown: Live In Mexico』(2018年)に収録された音源と同じ。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum [bass and drums extract]

12thアルバム『The ConstruKction Of Light』(2000年)収録曲の別バージョン。2002年の『The Power To Believe』のレコーディングセッションで録音された。Trey Gunn(タッチ・ギター)、Pat Mastelotto(ドラム)の2人による演奏。なぜ前作収録曲を2人でセッションしたのかはよくわからない。途中でフェイドアウトする。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。

Cognitive Dissonance

The League Of Gentlemenの1stアルバム『The League Of Gentlemen』収録曲のリミックス・バージョン。Steven Wilsonがリミックスした。当時発売予定だった(そして予定通り2022年に発売された)『Exposures』ボックスセットから先行して収録された。

Level Five

13thアルバム『The Power To Believe』(2002年)収録曲のライブ・バージョン。2017年6月28日にアメリカ、シカゴにあるシカゴ劇場で録音された。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた。その後『Live In Chicago』(2017年)に収録された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Did We Make The Album?

11thアルバム『THRAK』(1994年)のレコーディングセッションより。ダブルトリオ編成によるセッション。2021年2月22日にMr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Devil Dogs Of Tessellation Row

ギャビン・ハリスンが作曲したトリプル・ドラムの曲。2019年9月6日にアメリカ、カリフォルニア州、オークランドにあるフォックス・シアターで行われたライブで録音された。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)。

Drum Check

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)のレコーディングセッションから。1969年7月21日に録音されたMichael Gilesのドラムチェック。『The Complete 1969 Recordings』(2020年)に収録された音源と同じ。

Starless [cello extract]

7thアルバム『Red』(1973年)収録曲のチェロのみを抜き出したもの。『Red』のレコーディングセッションで誰がチェロを演奏したかは不明(ジュリアン・ロイド・ウェバーとする説もある)。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。同じ音源が『The Elements 2018 Tour Box』にも収録されているが音質は微妙に違う。

The Deception Of The Thrush [RF guitar extract]

ProjeKct Twoのライブ音源からRobert Frippのギターのみを抜き出したもの。1998年3月18日にアメリカ、カリフォルニア州、ベンチュラにあるベンチュラ劇場で録音された。ライン経由の録音らしく他の楽器の音は一切聞こえない。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。リンク先の「RF Guitar」というトラックが同じ音源。

Secrets [early take]

Jakszyk, Fripp and Collinsのアルバム『A Scarcity Of Miracles』(2011年)収録曲の別バージョン。2009年に録音された初期テイク。発売が予定されている(そして本記事執筆時点で発売されていない)『A Scarcity Of Miracles』10周年記念盤から先行して収録された。今回が初出となる未発表音源。

Dawn Song

3rdアルバム『Lizard』(1970年)収録曲のリハーサル音源。Robin Millerが演奏するコーラングレ(イングリッシュ・ホルン)とKeith Tippettのピアノのデュオ。今回が初出となる未発表音源。

Dawn Song

3rdアルバム『Lizard』(1970年)収録曲のライブ・バージョン。2017年11月8日にアメリカ、ニューヨーク州、オールバニーにあるザ・エッグで録音された。当時はBill Rieflinの代役としてChris Gibsonが参加している。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)。その後ライブアルバム『Audio Diary 2014-2018』(2019年)に収録された。

I Talk To The Wind

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲の別バージョン。Giles, Giles & Fripp時代の録音でJudy Dybleがボーカルのバージョン。King Crimsonのアルバムに初めて収録されたのは『A Young Person's Guide To King Crimson』(1976年)。直近では『The Complete 1969 Recordings』(2020年)に収録された音源と同じ。

Ahh

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)のレコーディングセッションから。「The Court Of The Crimson King」のコーラスを抜き出したもの。Greg Lake、Ian McDonald、Michael Gilesの3人が歌っている。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信され『The Complete 1969 Recordings』(2020年)に収録された。本ツアーボックス収録バージョンはトラックの終わりに次のトラックの観客の拍手が重なっているので厳密には別バージョンとなる。

The Court Of The Crimson King [extract]

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲のライブ・バージョン。2019年9月19日にアメリカ、マサチューセッツ州、ボストン、ワン・シアターで録音された。楽曲終わりのリプライズの一部が前トラックとシームレスに繋がるように編集されている。ブックレットには未発表(Previously unreleased)と記されているが、DGM Liveから無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)ライブ音源の抜粋である。

Exiles [foldback mix]

5thアルバム『Starless And Bible Black』収録曲の別バージョン。Robert Fripp(ギター)、John Wetton(ベース、ボーカル)、Bill Bruford(ドラムス)だけを抜き出したミックス。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Book Of Saturday

5thアルバム『Starless And Bible Black』収録曲のライブ・バージョン。ライブアルバム『The Night Watch』発売時の1997年9月13日にイギリス、ロンドン、インターコンチネンタル・ホテルで行われたイベントで録音/録画された。John Wettonによるアコースティック・ギター弾き語り。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントでモノクロだが映像で見ることができる。

Prince Rpert Awakes [piano/mellotron]

3rdアルバム『Lizard』(1970年)収録曲の別バージョン。完成したトラックからKeith TippettのピアノとRobert Frippのメロトロンのみを抜き出したもの。2020年12月に著作権切れ対策で1970年のセッション音源がDGM Liveでダウンロード販売された。リンク先で「Prince Rupert Awakes Piano And Mellotron Overdubs」となっているトラックと同じ。

Cadence And Cascade [Boz vocal]

2ndアルバム『In The Wake Of Poseidon』収録曲の別バージョン。1970年にウェセックス・スタジオで録音されたバッキングトラックに、1972年3月12日にアメリカ、コロラド州、デンバーにあるサミットスタジオで行われたライブの録音からBoz Burrellのボーカルのみを抜き出しミックスしたもの。サミットスタジオ公演は1972年2~3月のアメリカツアーで唯一マルチトラック録音されている。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。YouTubeのものは(おそらくTake 7を意味する)エンジニアの"Seven"という声が聞こえるが、本ツアーボックス収録の音源は"One, Two, Three, Four…"というカウントから始まっており約1秒ほど短い。

Formentera Lady [instrumental edit]

4thアルバム『Islands』収録曲のインストゥルメンタル・バージョン。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Italian Afternoon

Robert Frippのソロアルバム『Exposure』(1979年)のレコーディングセッションから。Robert Frippのアコースティック・ギターのみの演奏。当時発売予定だった(そして予定通り2022年に発売された)『Exposures』ボックスセットから先行して収録された。

Walking On Air [alt. take]

11thアルバム『THRAK』収録曲の別バージョン(初期テイク)。『THRAK』収録曲のほとんどは1994年のアルゼンチン・ツアーで演奏されアレンジが固まっていたが、この曲は1994年ツアーでは3回しか演奏されなかったためアレンジが固まっておらず、『THRAK』に収録された完成バージョンとアレンジが大きく異なる。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Starless

7thアルバム『Red』(1973年)収録曲のライブ・バージョン。2019年10月4日に、ブラジル、サンパウロにあるエスパコ・ダス・アメリカスで録音された。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた(現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる)。

まとめ

  • DGM Liveからダウンロードできる音源

    • 2019年ツアーから:5曲

    • Mr Stormy's Monday Selectionから:12曲

    • 著作権切れ対策でダウンロード販売された音源:1曲

  • 発売済の商品から

    • 『Larks' Tongues In Aspic』ボックスセット(2012年)から:1曲

    • 『Live In Chicago』(2017年)から:1曲

    • 『Meltdown: Live In Mexico』(2018年)から:1曲

    • 『Audio Diary 2014-2018』(2019年)から:1曲

    • 『The Complete 1969 Recordings』(2020年)から:3曲

  • 発売予定の商品から先行して収録

    • 『Exposure』ボックスセットから:3曲

    • 『A Scarcity Of Miracles』10周年記念盤から:1曲

  • (初出と思われる)未発表音源:1曲

※「Ahh」はMr Stormy's Monday Selectionと『The Complete 1969 Recordings』(2020年)に重複してカウントした。