『同志社短歌七号』について

虎瀬千虎です。此度後輩たちに『同志社短歌七号』を送っていただきましたので、いいなと思った歌についてもにゃもにゃ書きます。

裏切りのような夕立 気づいたら傘をさしてるのは私だけ/「蠢く季節」池田明日香

「裏切りのような」というと単純に「さっきまで晴れてたのに突然手のひらを返したみたいに空模様が変わったんだろうな」と思うし夕立とはそういうものだとも思うけれども、下の句で「突然降ってきた」ことが裏切りなのではなく「自分だけが傘をさしていた」ことがそうなのだろうという感がしてくる。夕立に対して傘をさす主体とそうではない周囲。夕立をどう捉えるかで傘をさすささないは違ってくるのだろうけど(雨脚は強いけどすぐ止むorすぐ止むだろうけど雨脚が強い)、自分以外が示し合わせたようなところに(根拠はないのだけれども)裏切られていたようなものを感じるのだろう。

飼い犬に噛まれるようなものとして 一つ、うまくきまらん前髪/「闘志」彩藤不見樹

わかりみのかまたり~~!!うまくいかない時はほんとうまくいかないし、いつも通りやったはずなのになんかだめだなとなってしまう……。自分の毛なのに何故?という気持ち。「飼い犬に噛まれる」というのは割と突発的に起きたショックな出来事を表現する部類の言葉だと思うけれども(※いぬのしつけに失敗した場合を除く、しょっちゅう噛まれるとそうでもなくなる)、そのつらい出来事の一つ目に「前髪がきまらない」ことを挙げてくるところに主体のかわいさがあるなと思いました。

「ビー玉を出してごらん」で躊躇なく瓶をかち割る君の正しさ「夏を偲ぶ」花菱三一

いや割るの!?と私の心の中のビュティさんがつっこんでしまう。(漫画史に輝く傑作『ボボボーボ・ボーボボ』ジャンプ+で期間限定全話無料公開中です、ぜひ読んでね)ラムネ(連作の前後からラムネの話だと解釈しました)のビー玉、口のところを左に回すと出せるのだけれどもこれはどの程度知られた知識なのだろうと思う。この方法だと瓶を割らずに出せるので安全だ。恐らくこれはこれで正しいのだろうけど、ここで主体が言っているのは「知識があることの正しさ」ではなく躊躇なくかち割ってしまう、よい子はまねをしてはいけませんのテロップがつけられそうな「目的に最短距離で突っ込んでいってしまう」正しさだ。そして主体は、「君」のそういう正しさが好きなのだろうなと思いました。

「ご飯短歌」も「短歌で会員紹介」も面白かったしすてきな発想だと思った。私も思いつきたかった。集まることの難しい状況の中、会員の人数もなかなかに増えているようでうれしい。学生短歌会は作るより続けるのが難しいといわれますが、続いていくようこっそり祈っています。

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