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『薔薇色の明日』 高橋幸宏

【私の音楽履歴書】#12 高橋幸宏 ①

秋の気配もわずかに感じる夏のこの時期、毎年のように聴きたくなるアルバムがある。高橋幸宏の『薔薇色の明日』(83.8/25発売) がその一枚だ。
また『WHAT,ME WORRY?〜ボク、大丈夫』(82.6/21発売) からの80年代の彼のアルバムも当時よく聴いたものだった。
言わずとしれたYMOの一員であった高橋だが、世間一般的には細野晴臣や坂本龍一に次ぐ三番手の位置づけという認識が正直なところあるだろう。
しかし、私自身は高橋幸宏を他の二人より聴いてきた。
ちなみに、細野晴臣は『フィルハーモニー』(82.5/21) 『S.F.X』(84.12/16)
 坂本龍一は『音楽図鑑』(84.10/24) 『未来派野郎』(85.10/5) などの傑作アルバムを同時期に発表している。

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コンピュータプログラミングが音楽制作の主流にならんかなの時代、まさにその中心だったYMOでの高橋の存在は際立っていたと言える。
ある意味ドラマー不遇の時代とも言えるあの時期に、高橋は常に正確無比なドラミングをしていた。私がフィルインなどという音楽用語を知るのも、彼のプレイあってこそだ。
もう一つの魅力は彼の歌声にある。決して太く安定したボーカルスタイルではないが、独特の艶を含んだ声質に魅了される。



1.『WHAT ME WORRY? ボク、大丈夫』(82.6/21)

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当初、高橋のソロ作の『 WHAT ME WORRY?〜ボク、大丈夫』のなかで、中原中也の別離をモチーフにしたという「サヨナラ」が、特に惹かれた。

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中原中也 『別離』(一部)


また、この時期の高橋はアルバムに数曲カバー作品を取り入れている。
このアルバムではジョージ・ハリスンの「IT'S ALL TOO MUCH」(すべて素晴らしすぎる) が収録されている。
これに限らず他のカバーも、何らかの必然性と理由があってのカバーのはずで、そのセレクトも素晴らしい。


2.『薔薇色の明日』(83.8/25)

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サブスク等でアルバム全体を通して聴いていただきたいが、敢えての三曲のオリジナルを…


このアルバムにもカバーとして、ブライアン・フェリーの「THIS ISLAND EARTH」(この地球という島) が収められている。
サディスティックミカバンド時代、ロキシー・ミュージックとのツアーのオープニングアクトとしてステージでプレイしたことのある彼には、うってつけの一曲だ。
当時ロキシーのアルバム『アヴァロン』に魅せられていた私もこの選曲に唸った記憶がある。
また、ミカバンドといえば加藤和彦であるが、ブライアン・フェリーと共に、世の東西でダンディズムの象徴たる二人ではないかと思っている。
その上で言えば、個人的には加藤以上に高橋が「カッコいい」存在であり続けた。

そして、もう一曲のカバーがアルバムラストを飾る『THE APRIL FOOLS』である。当時は余りピンときてなかったが、今ではとても気に入っている。バート・バカラック作曲、ディオンヌ・ワーウィック歌唱の元歌は、同名映画(1969年 邦題/幸せはパリで)の主題歌である。ジャック・レモン、カトリーヌ・ドヌーヴ出演の本編ラストに流れるこの歌が魅力的だ。さて、バート・バカラックとディオンヌ・ワーウィックのコンビでの代表作といえば「アルフィー」が有名である。これも同名映画の主題歌で(1966年)あった。後に日本では、田村正和、木村拓哉、宮沢りえ出演のTBSドラマ『協奏曲』(1996年10月から12月) の主題歌として再び脚光を浴びた。ただし、この時はヴァネッサ・ウィリアムスが歌っていた。


3.その後のカバー曲

『WILD&MOODY』(84.11/10) ではニール・ヤングの作品(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング) の「HELPLESS」
『Once A Fool,-遥かなる想い-』(85.11/1) ではトッド・ラングレンの「I SAW THE LIGHT」
『...Only When I Laugh』(86.8/21) ではスターバックの「Moonlight Feels Right」(邦題/恋のムーンライト)をそれぞれカバーしている。
中でもスターバックの本作は独特の世界観でのカバーで、本家に勝るとも劣らないパフォーマンスといえるのではないか。

本家ではマリンバ演奏だが、越美晴のキーボードプレイが出色のライブ映像とオリジナル楽曲を紹介しておく。

4.THE BEATNIKS

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ザ·ビートニクスは1981年にムーンライダーズの鈴木慶一と結成された音楽ユニットである。
二作目になる『EXITENTIALIST A GO GO ビートで行こう』(87.6/21)では、 鈴木慶一は(当時の) バンドブームに対しての憤りから本作が生まれたと語っている。(MUSIC MAGAZINE 21年2月号)
ザ・バンド「STAGE FRIGHT」プロコル・ハルム「Pilgrims Progress」が収録されていて彼らの60年代ロックの解釈と要素を含んだ内容になっている。
そんな中でムーンライダーズ色も濃い「ちょっとツラインダ」を最後に紹介する。


【追記】

9月18日の50周年記念ライブ『LOVE TOGETHER』の有料配信が決定したとのこと是非とも観てみたい♪


【改めての追記】
幸宏さんの訃報が届く…
何とも言葉にならない


ご冥福をお祈りします。

2023.1.15

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