見出し画像

『Heartbeat City』 The Cars

 
【私の音楽履歴書】 # 30  The Cars


9月10日放送分『SPITZ草野マサムネのロック大陸漫遊記』(TOKYO FM系列) にて〈The Cars/ザ・カーズ〉が特集された。
「へぇ…彼もカーズ聴いてたんだ…」という感慨と共に、その選曲とコメントを注目して聴いていた。
最初にスピッツの「ハネモノ」(三日月ロック収録)が紹介されたが、なるほどアレンジはカーズっぽい。本人からそう言われるまで気がつかなかった。
その後のセトリは以下の通り。

◆ Just What I Needed (燃える欲望)
◆ Let's Go
◆ It's All I Can Do
◆ Touch And Go
◆ You Might Think
◆ Sad Song

このラインナップからも彼(草野マサムネ)の音楽的志向がよくわかって興味深かった。



80年前後から、いわゆるエレクトロ・サウンドが一世を風靡し、その機材・音響技術の進化によって、それが音楽シーンの主流となりつつあった。
一方で、生演奏に拠らない音づくりは、ある意味バンドマン泣かせで、一部には肩身の狭い思いを強いられるメンバーもいたやに訊く。
そしてその都度引き合いに出されたのが、今回取り上げるカーズ(The Cars)だ。
その音のピコピコ具合は、当時から余りにダサいものであったのだが~ 何故か耳に残りリピートしているという不思議なサウンドであり、興味を引くバンドであった。

カーズは〜
リック・オケイセック (Vo.g)
ベンジャミン・オール (Vo.b)
エリオット・イーストン (g)
グレッグ・ホークス(Key)
デヴィッド・ロビンソン(dr)

のメンバーからなる5人組で、1976年に結成され、88年に一旦の活動を終え解散した。
その後、散発・一時的に再結成もされるものの、2000年のベンジャミン・オールの死去により、オリジナルメンバーでの活動は不可能となっていた。
76年の1stアルバム『The Cars』から87年の6th『Door to Door』までの6枚のアルバムが彼らの活動の軌跡であるとも言ってよい。

そして、80年代から主要な音楽コンテンツとして注目、重視されだしたミュージックビデオ(MV)であるが、84年の彼らのシングル「You Might Think」が、第一回MTVアウォードを受賞するなど、いち早くこの分野でも実績を残してきた。

また、私が注目しているのは、特に初期のアルバムジャケットのアートワークである。バンド名である「車」をモチーフにしながら、フィフティーズアメリカン的なデザインはとても気にいっている。

The Cars (78)
Candy-O (79)
Panorama (80)
Shake It Up (81)
Heartbeat City (84)



Touch and Go (Panorama)

独特なリズムを刻むキーボードシンセが特徴的な80年のシングル。
草野が「たっちゃんがー」と聴こえると言ったサビのフレーズだが、私も「たっちゃんごー」としか聴こえなくて、当時人気だった梅宮辰夫の「たっちゃん漬け」をしきりに連想させた。

I'm Not The One (Shake It Up)


Magic (Heartbeat City)

5枚目のこのアルバムが彼らのアルバムで最も有名で商業的成功を得たものである。
私自身も作品としてもベスト1だと思っている。

Drive (Heartbeat City)

ボーカルはベンジャミン・オール。
彼らの代表曲と言っていいこの楽曲のボーカルは、多くの楽曲のボーカルを担当しているリックではない。
グループにありがちな“ボーカルを変えてみると当たる”という典型的な例でもある。
クセの強いリックの歌声はカーズの看板でもあるのだが、多くのソングライティングを担当しているリックは、その美声とルックスを持つベンジャミンの活かし方をよく理解していたといっていい。
日本でも古くはザ・タイガースの沢田研二(ジュリー)と加橋かつみ(トッポ)の例がある。
彼らの代表曲はジュリーのボーカル曲よりむしろ、トッポボーカルの「花の首飾り」や「廃虚の鳩」だと思っているので…

Heartbeat City (Heartbeat City)

アルバムのラスト曲。この曲もキーボードアレンジが独特である。
そしてこの曲が、彼らの楽曲の中で私が最も好きな一曲である。


Door to Door (87)

87年に発売されたこのアルバムが実質的な彼らのラストアルバムだと思っている。
作品の完成度からすれば、とても高いものだと思うのだが、彼ら特有の「ダサかっこよさ」が薄まり、何気にオシャレになっているのが、一面で残念なところでもある。
彼ら自身も”やり尽くした感“があったのかも知れない。翌88年に解散を迎えることとなる。


Everything You Say (Door to Door)


Wound Up on You (Door to Door)


Go Away (Door to Door)

この曲もベンジャミンのリードボーカルである。
この曲の後にラストのアルバムタイトル曲の「Door to Door」があるのだが、私にはそれがアンコール曲の様にも思えて、実質この曲がアルバムのラストを飾る曲だと勝手に解釈している。
そして、その歌詞は彼らのラストメッセージだととらえている。



グループ活動に並行して、そしてグループ解散後もリック・オケイセックはソロアルバムを発表してきた。
また『Weezer』(ウィーザー) をはじめとした、多くのバンドのプロデューサーとしても活躍していた。

Emotion In Motion (This Side of Paradise)


The Way You Look Tonight (Fireball Zone)



Keep On Laughin' (This Side of Paradise)

86年に発売されたリックのソロ第二作(This Side of Paradise)
そのアルバムリード曲なのだが、当時、今野雄二氏がグループ前作の『Heartbeat City』のラスト曲である同名タイトル「Heartbeat City」のエンディングが、この曲のイントロにそのまま繋がっている…と評していた。
まるでそれはロキシー・ミュージックの究極の名盤『Avalon』の如くと…


そのリック・オケイセックも2019年に亡くなってしまった。
今、彼らの音楽を聴くことはリックとベンジャミンへの鎮魂の想いも込めて聴くことにもなっている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?