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『KAMAKURA』 桑田佳祐

【私の音楽履歴書】#7 桑田佳祐 (サザンオールスターズ)

レコードの時代、二枚組を発売するというのは、そのミュージシャンが満を持して勝負を賭けた感がして期待を持たせる一方で、冗長、散漫な印象になりがちな作品も少なくない。
私にとって、日本で評価しうる二枚組アルバムは、柳ジョージ&レイニーウッドの『Woman&I』と、サザンオールスターズの『KAMAKURA』の二作品につきる。

ということで、今回はそのサザンオールスターズを長年率いる桑田佳祐にふれてみたい。このアルバム発表の後、KUWATABANDの活動を経て、ソロアルバム『Keisuke Kuwata』発売や初の映画監督作品『稲村ジェーン』公開、ソロ第二作の『孤独の太陽』と〜このくらいの時期の作品が私は好きである。今回はグループとしての最初の頂点を極めた『KAMAKURA』(85.9/14発売)を採り上げる。

『KAMAKURA』

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グループ通算8枚目のアルバム。率直な感想として「あぁここまで来たかぁ…」(遠い目…)であった。
本作はYMOのテクニカルアシスタントも務めた藤井丈司が共同プロデューサーとして名を連ねている。彼のシンセサイザープログラミングが、このアルバムをリードし、そこかしこに当時の音楽の影響も垣間見れる。私には、それがとても心地よい。

Disc ⑴
①「Computer Children」
アルバム冒頭の曲はエフェクト多用の意欲作。ミキシングがどうこういうムキもあるが、一言でカッコイイ♪

②「真昼の情景」(このせまい野原いっぱい)
アフリカンビートにフォークの森山良子のこの広い野原いっぱいをもじったサブタイトルの意味不明さ

③ 「古戦場で濡れん坊は昭和のhero」
何とも不思議なサウンド…スティング風との指摘もあるがどうだろうか

⑦「Happy Birthday」
アレンジは当時大注目のScritti Politti(スクリッティ・ポリッティ) まんま…好きです。このアルバムでのベスト。「WOOD BEEZ」が有名だが、こちらに近いかも…


⑧「メロディ」(Melody)
私にとってのサザン初期三大バラードの一曲(真夏の果実、さよならベイビー)かつ傑作。サビは日本人の心の琴線に触れる、まさに“メロディ”
コーラスはジューシー・フルーツのイリヤとのこと。ナイスな人選。

⑩「鎌倉物語」
ある意味、このアルバムを締める役割の原由子の有名ボーカル曲。

Disc ⑵
② 「Bye Bye My Love」(U are the one)
悲しみの雨が降る この街のどこかで
人々が眠る頃 俺は泣き続ける
                                      〜これも名曲

③「Brown Cherry」
詞は桑田songの真骨頂。

④「Please!」
西海岸的AOR〜ヨットロック風


⑩「悲しみはメリーゴーランド」
私はAmerica(アメリカ) の「A Horse With No Name」(名前のない馬) を連想した…


アルバムタイトルはいみじくも鎌倉〜『Kamakura』桑田佳祐にとって深い縁の地名を冠したアルバムだ。
この作品の発表の後、バンド、ソロ活動に移り、今も色褪せない魅力を放つ傑作『Keisuke Kuwata』へ向かうのだが、それはまた別の稿で…


さて数年後、ソロアルバム5作目の『がらくた』発売時に桑田佳祐はインタビューにこう答えている。

僕は歌い手だけど、歌詞を書く時はどこか作家や脚本家という職業への憧れが顔を出す。言わば角田(光代)さんや藤沢(周平)さんになりきるという物真似です。
その昔、ジョン・レノンがチャック・ベリーになりきろうとしていたようにね。それが上手くなりきれた時は快感でね。(略)
脚本家を気取って『この女優にどんな台詞を言わせようか?』と考える。完成までに逡巡もしますが、メロディを優先していた自分が、ようやく作詞·作曲·歌唱のひとり三権分立を楽しめるようになってきたんです。                                                           『Pen』(2017.9.1号) 桑田佳祐インタビューより

              

                                                                             № 12            


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