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石坂浩二の金田一耕助

自分が一番愛する映画シリーズは、間違いなく市川崑×横溝正史×石坂浩二の金田一耕助シリーズ。毎回猟奇的連続殺人事件のストーリー展開。俳句や手毬唄など見立て殺人がパターン。
70年代にヒットしたシリーズ。全五作。特にシリーズ1作目「犬神家の一族」は角川映画の第1作目として大ヒット。その後配給元の東宝が引継ぎシリーズ化。横溝正史ブームが起こる。これをきっかけに松竹で「八つ墓村」東映で「悪魔が来たりて笛を吹く」が制作される。テレビシリーズも人気を博した。その後映像化は何度となく行われている。

金田一耕助と言えば不気味で怪奇な事件モノ。市川崑の作品もそうなるのだが、他と違う色合いがある。

まず映像が美しい。
昭和の田舎風景を引で撮る。何とも映画らしい画創り。趣きのある画が続く。
そして女優の撮り方にため息が出る。往年の大女優と若手女優がとにかく綺麗だ。
犬神家の一族では
高峰三枝子と島田陽子
悪魔の手毬唄では
岸惠子と仁科亜紀子
獄門島では
司葉子と大原麗子
女王蜂に至ると
高峰三枝子、岸惠子、司葉子
ヒロインは中井貴恵
病院坂の首縊りの家では
佐久間良子と桜田淳子
女優を美しく撮る映画だった。

もう一つ。市川崑の演出には、必ずホンワカした笑いが挟まれる。石坂浩二の金田一耕助が先ず間の抜けた設定。坂口良子や草刈正雄とのやりとりが、ユーモラスでほのぼのとしている。加藤武演ずる刑事がまた良い。トンチンカンな推理と鼻持ちならない態度が笑いを誘う。三木のり平とおばちゃんもナイスなコメディリリーフ。大滝秀治の素っ頓狂な語り振りも可笑しい。
そして加藤武の刑事は嫌味な男なんだが、最後は人情味をみせる。

独特の編集は当時画期的で、最近の多くの作品群に影響を与えている。スピーディでスタイリッシュ。

そして音楽。犬神家の一族のテーマ曲は大名作。大野雄二の代表作。多くの人の心に残るメロディ。印象深い旋律を奏でるのはシタール。大正琴と間違われる事が多いが、ラジオで大野雄二本人が言っていたから間違いないだろう。その後を引継ぐ村井邦彦と田辺信一も、物悲しく美しい音楽。

そして必ず隠された悲しい女性の秘密を描いている。母親の愛が事件の下地となっているのも共通している。

恐ろしい事件ばかりだが、観た後に残るのは人の情の哀しさ。

結局何度となく観てしまう。

私の最高作は悪魔の手毬唄。とにかく若山富三郎が良い。最後の金田一との駅での別れは、何度観ても目頭が熱くなる。

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