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のんびりバタフライ デヴィッド・リンチ

長女は毎月二回、水泳カウンセリングに行きます。
障害のある人を専門に指導している先生と泳いでいます。
水泳は呼吸を意識するし、水と肌が接するので、いわゆる感覚統合にはいいでしょう。
それよりも、なによりも、先生が大切にしていることは「会話」です。

長女はもう20年以上もこの先生についています。
長女も若いころは25メートルを泳ぎ切っていましたが、寄る年波には勝てず、最近は5メートル進んでは立ち、また泳ぎ始めるという感じです。

私は2階のギャラリーから、長女の泳ぎを見ます。
バタフライをしています。
バタフライといえば、ばっしゃん、ばっしゃんと勢いよく、両手を振り下ろし、力強くドルフィンキックして、元気よく進んでいくイメージがあります。
しかし、長女のバタフライは、のんびり、ゆったりしています。
両手をゆっくりまわして、両足をのんびりキックして、ゆっくり進みます。
水しぶきも立ちません。
その様子は、おおきなマンタがゆうらゆうら、海の中を泳いでいるかの如くです。

いいです。それで。
急ぐことなんてありません。
スイミングも人生ものんびり進めばいいのです。

そして、思い出しました。
あのデヴィッド・リンチ監督ののんびりシネマ。
最近では役者さんとしてもいい味出してたました。
ツインピークスの異才。リンチ監督のやさしい物語。

「ストレイトストーリー」
73歳のアルヴィンは腰を痛め、杖を突いて歩き、運転免許は持っていない。
運転できるのは時速8キロの芝刈り機だけ。
同居する娘は、知的障害で、「養育能力」がないからと、4人の子どもを行政に保護されている。

そんな、アルヴィンに、仲たがいしていた兄が危篤だと知らせが届く。
そこで、彼は唯一運転できる芝刈り機で、アイオワ州から、ウィスコン州まで、兄に会いに出かけることにした。
こんなにのんびりとしたロードムービーを、あの、とんがったデヴィッド・リンチ監督が描くなんて。
なんて素敵な人生。

この映画と長女のバタフライがシンクロしてしまいました。
のんびり、泳ごう。
のんびり生きよう。
自分の心を大事にしながら。

デヴィッド・リンチ監督
1999年

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