君の行く道は果てしなく遠い
老障介護の日々は、できる限り、たんたんと穏やかに過ごしたいものです。
パっとすることのない、なんとなく茶色っぽいお惣菜みたいな日々を、たんたんと続けていくのです。毎日毎日。
これが老障介護の幸せです。
知的障害のあるほかろんが小さいころは、夜眠るとか、座ってご飯を食べるとかいうような、いわゆる普通の生活ができる状態ではありませんでした。
てんかんの発作も頻繁にありましたし。
だから、パッとすることもない代わりに、ドキッとすることもあまりない(少しはある)今の生活は、夢のようです。
しかし、人間は、落ち着いてくると、そこで満足しないで、今よりももっともっと楽しく、もっともっと楽にならないかなあなどという欲が出てくる悲しい生き物です。
そんな欲が芽生え始めると、たんたんとした生活は、なんだか色あせて見えてきます。
まあ、最初から茶色っぽいんですけどね。
そんな時は、つい、口から出てきてしまいます。
「君の行く道は果てしなく遠い。」という、あの救いようのない歌ですね。
「だのに、なぜ、歯を食いしばり、君は行くのか。
そんなにしてまで。」
大昔流行った、「若者たち」というドラマ、映画の主題歌です。
映画は六本木の俳優座に見に行きました。
まだ大江戸線がなかったころです。
ドラマでは、田中邦衛がちゃぶ台をひっくり返し、佐藤オリエが片付けるというシーンが毎回ありました。
何とも救いようのないドラマで、何とも救いようのない主題歌なのですが、体の芯まで浸み込んでしまっていて、つい歌ってしまうのです。
自分がまさか、こんな、救いようのない老障介護の生活になるなんて思いもよらなかった頃から、私はずっと歌っていたのですね。
そんなに歯を食いしばらなくてもいいのに。
一度はしてみたかったな。
ちゃぶ台返し。
でも片付けるの自分だからやめておこう。