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児童精神科医の気になる論文:子どものうつ病への薬物療法の効果と安全性(Zhouらl.2020)

子どもは抗うつ薬でも効くのと効かないのがある。
子どもの抗うつ薬にはいくつか注意する点があります。一つは、子どもは抗うつ薬でも効くのと効かないのあることです。もう一つはアクチベーションシンドロームです。今回は後者に注目してみます。


Comparative efficacy and acceptability of antidepressants, psychotherapies, and their combination for acute treatment of children and adolescents with depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis


このメタ解析論文の最も注目するところは、ベンラファキシンではないでしょうか?

24歳未満のうつ病に抗うつ薬は慎重投与となっています。かつてはパキシルを代表に禁忌となっていた時代があります。


 この論文が出るまでは、ベンラファキシンがより自殺のリスクが高いとされてきました。

Emslie, G. J., Findling, R. L., Yeung, P. P., Kunz, N. R., & Li, Y. (2007). Venlafaxine ER for the treatment of pediatric subjects with depression: Results of two placebo-controlled trials. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 46(4), 479–488. https://doi.org/10.1097/chi.0b013e31802f5f03


しかしながら、この論文を見てみるとベンラファキシンが他の抗うつ薬と比べて自殺のリスクが高くないことがわかります。

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 ただし、この論文はメタ解析ですので、元の論文がどのような質なのかが大事になるかと思います。ここにはどのように研究に組み込んできたかが大きく関与するでしょう。ご存知かもしれませんが、抗うつ薬の治験では自殺の危険性が少しでもあるとエントリーすることができません。これらのメタ解析の対象となった論文がどれくらいそのスクリーニングをしていたのかが評価のポイントになるでしょう。

アメリカでは先のパキシルの件から抗うつ薬の処方は減ったけど、自殺は減らなかったという報告もあります。うつ病の症状としての自殺企図もありますので、その有効性と副作用についてよくよく患者さんや親御さんと議論して使用するべきと考えます。

ますます、抗うつ薬のエビデンスが出るたびに悩みますが、大事なことは安易に処方せず、適切な評価に時間をかけていくところではないかと思います。

この論文には有効性もありますので、そちらも後日触れておきたいと思います。