私は二次障害という言葉が好きではありません。二次的というのが以下にもうまくいかなかったから発症したような感覚になるのが苦手なのです。
ASDの人たちはどうしても暮らしにくい時がありますし、環境にうまくフィットしない時もあるでしょう。その結果、さまざまなメンタルな問題を抱えてもおかしくないですし、二次的に生じたなんて考えると自分が失敗したように考える人も出てくるのではないでしょうか。外来の親御さんたちも二次障害にならないようにと早期から気を揉んでいる方もおられます。目の前のお子さんはまだ幼く、屈託のない笑顔で診察室を走り回っていてもです。ある意味、二次障害になったらいけないというような縛りをかけられているように思います。
そんな縛りを破っていくためにも様々なエビデンスは重要です。今回は台湾のデータです。
対象
ASD患者3,837例(自閉症:2,929例、アスペルガー症候群:447例、特定不能な広汎性発達障害:461例)
年齢、性別をマッチさせた対照群3万8,370例。
統合失調症スペクトラム障害、双極性障害、うつ病の発生率を調査した結果
・3つのASDサブタイプすべてにわたる対照群と比較し、ASD患者の精神医学的合併症の発生率は、有意に高かった。
●統合失調症スペクトラム障害:9.7人/1,000人年
●双極性障害:7.0人/1,000人年
●うつ病:3.2人/1,000人年
・特定不能な広汎性発達障害は、自閉症よりも、うつ病リスクが高かった。
・アスペルガー症候群の女性は、男性よりも、統合失調症スペクトラム障害リスクが有意に高かった。
NOSと言われる特定不能型のPDDです。これは軽症とも取れるかもしれませんが、症状が一部PDDに属しているだけで、PDDの診断を全て満たしていない場合が混在しています。そういった場合には、周囲から障害や課題を抱えているとは理解されにくく、結果的にストレスが高まり、うつ病を発症することにつながっているのかもしれません。
また、興味深いのが、アスペルガーの女性が統合失調症のリスクが高いということです。そんなことは考えたこともなかったです。ASDから統合失調症になる可能性は日々感じておりますが、女性に多く、しかもアスペルガー障害のように言語発達に遅れがない場合に顕著だということです。これも日々の臨床に生きてくるかもしれません。
医学はおもしろいです。日々是勉強!