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児童精神科医の気になる論文たち

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玉石金剛な医学論文の世界。児童精神科医を20年やってきて、気になる論文をチェックしていきたいと思います。読み込みが浅く、間違いがあればコメントで指摘してもらえると助かります。みん…
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#発達障害

ADHDと血圧

ADHDと血圧に関する珍しい論文を見つけました。ADHDは児童思春期において最も多く認める精神疾患です。 一方で、ADHDの基本的な病態生理はわかっていない点も多い一方で、子どもはさまざまな身体的な変化によっても、落ち着きを失うことがあります。 体と心が繋がっていることは間違い無いでしょうし、CBTでもそのような理論で展開されています。ADHDのように行動上の特徴で規定された疾患は、その影響を直接的に受けることになるでしょう。 今回の論文は、ドイツの健康調査(KiGGS

自閉スペクトラム症の併存症は?

私は二次障害という言葉が好きではありません。二次的というのが以下にもうまくいかなかったから発症したような感覚になるのが苦手なのです。 ASDの人たちはどうしても暮らしにくい時がありますし、環境にうまくフィットしない時もあるでしょう。その結果、さまざまなメンタルな問題を抱えてもおかしくないですし、二次的に生じたなんて考えると自分が失敗したように考える人も出てくるのではないでしょうか。外来の親御さんたちも二次障害にならないようにと早期から気を揉んでいる方もおられます。目の前のお

ADHDとうつ

児童期のADHDと、その後のうつ病との因果関係について調べた論文があります。 Author Lucy Riglin, et al.,ADHD and depression: investigating a causal explanation.Journal Psychological medicine. 2020 Apr 06;1-8. doi: 10.1017/S0033291720000665. 方法は、8310人を対象を対象に小児期のADHD(7歳)と若年成人期

教師と親では評価が違う

これはよく知られていることでしょうし、肌感覚でもそう思うでしょうけど、教師と親では子どもの評価が異なることはよく指摘されています。それはADHDだけに限ったことではありません。この論文ではADHDの診断を確実にするための予測因子として両者の評価を検討しています。 この論文の結論的には、どちらも同程度ということになりました。僕の予想とは違っていたということです。これはADHDという行動に特化した疾患だから起きたのでしょうか。ADHD-RSというスケールを使ったからであり、情緒

児童精神科医の気になる論文:COVID-19とADHD

COVID-19パンデミック時のADHDの治療はどうしていくのが良いのでしょうか。欧州ADHDガイドライングループが学会誌にコメントを出していました。オンライン診療の導入、薬物療法の継続、副作用のチェックなど臨床的示唆に富むものでした。 Cortese, S., … Simonoff, E. (2020). ADHD management during the COVID-19 pandemic: guidance from the European ADHD Guidel

児童精神科医の気になる論文:自閉症の性差

Research Review: A systematic review and meta- analysis of sex/gender differences in social interaction and communication in autistic and non autistic children and adolescentsHenry Wood-Downie et al https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1