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〇『偏愛ディスクガイド』著者ディスコビーツ氏・インタヴュー~


〇『偏愛ディスクガイド』著者ディスコビーツ氏・インタヴュー~
 
【Favoritism Disco Disk Guide ~B Side of Japanese Pressing 7 Inch Singles】
 
偏愛。
 
2023年7月、自費出版で『偏愛ディスクガイド~7インチ国内版ディスコB面編~』という17センチ四方、44頁の小冊子が刊行された。
 
■『偏愛ディスコ・ディスクガイド~7inch国内版ディスコB面編』とは
 
『偏愛ディスクガイド』が届いて封筒を開けて驚いた。昔の日本盤ディスコ・シングルと同じサイズのジャケットそのものではないか。しかも、デザイン的には当時のテイチク・レコーズからでていたディスコ・シングル盤のデザインを踏襲したようなデザイン。地球儀のような丸いマークもじつにいい。



 
基本的に1972年から1982年くらいまでのディスコ・シングルの日本盤を中心に集め、しかも、それらのB面を中心にコメントしたものをまとめた。シングル盤約100枚を各ページ4枚ずつカラージャケ写とともに紹介している。



 
おなじみのヒットもあれば、こんなシングルあったっけ、などというレアのものもたくさん紹介されていて、これらのジャケ写と一言コメントを見るだけでも楽しい。
 
最後の4頁には「買物紀行」と出したレコード購買をめぐるエッセイを掲載。これが各店舗でどう買うかを具体的に書いてある。ディスコ・シングル盤好きにはお勧めの一冊だ。
 
いったいどんな人物が、これをまとめたのだろうか。その著者にメールでインタヴューを試みた。
 
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■偏愛ディスコの入手先、販売店
 
小冊子『偏愛ディスコ』は次の場所から入手可能。
 
ディスコビーツのホームページからの直販。(送料がかかりません)
 

 
偏愛ディスクガイド〜7inch国内盤ディスコB面編〜
¥1,100
 
ほかにディスクユニオン、宮城のカフェ&バー、スーパーグッド、佐賀のゴリラ・ファンク・レコーズでも販売中。
 
ディスクユニオン (送料がかかります)

 
ゴリラ・ファンク・レコーズ(送料がかかります)

 
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ディスコビーツのホームページ

 
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これまでに無料発行したジン(ZINE)のアーカイヴ

 
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■ディスコビーツ・インタヴュー
 
 
▢ディスコは未体験
 
――まず、この「ディスコビーツ」というニックネームはどのような経緯から? 本名は明かさないですか?
 
ディスコビーツ(以下DB) 匿名性があったほうがミステリアスさもあり興味を持ってもらえてやりやすいので情報非公開でニックネームのみでやらせてもらっています。
 
ディスコビーツという直球の名称は響きでなんとなく決めたキーワードです。クラブカルチャーの中で知り合いを作りたかったので、覚えやすくなおかつ好みまで一気に伝えられるので今では重宝しています。
 
またDJとしてイヴェントに参加する時の名前が欲しかったところから来ています。ですが、その時はまだ参加するイヴェントすら決めていなかったので、勇足も良いとこですね。
 
――最初に行ったディスコはどこのなんという店でいつでしたか? あるいは、行ったことがないのであれば、ディスコ・ミュージックに最初に触れたのはいつ、どこで、どの曲でしたか? ディスコ・ミュージックに惹かれるようになった最大の曲はなんでしょう。これを聞いて、この道に進もうと思った、とか。
 
DB ディスコは未体験です。かわりにディスコやソウル系のクラブイヴェントへ行く事がほとんどです。
 
ディスコ・ミュージックとの出会いはこのテレビCMです
 
参考 HONDA「That's」

(1分15秒あたりから)
 
放映されたのは2005年前後でしょうか。
 
ここで流れたリップス・インク(Lipps Inc)の「ファンキータウン(Funkytown)」が気になり、ディスコのコンピレーション・アルバムをツタヤで借りた事がきっかけです。この時期はやけにディスコ・ソングがCMに採用されていたと感じます。裏取りはまったくできていませんが、ディスコを経験した世代が仕事で決定権を持ち始めた頃だったのかなと勝手に推測しています。
 
その後ジャミロクワイに出会い、ダフト・パンクやセローンのリミックス・アルバム(『CERRONE BY BOB SINCLAR』)などディスコの影響を受けているアーティストや現行ディスコを経由しつつ音楽遍歴を重ねてきました。
 
当時のディスコのカテゴリーで一番好きなアーティストはシルヴェスターで「ユー・メイク・ミー・フィール」が好きです。この曲は初めて借りたコンピレーション・アルバムにも入っていました。
 
後にライブ盤の『リヴィング・プルーフ』を購入して「ダンス」から「ユー・メイク・ミー・フィール」に繋がる流れを聞き、スピーカーを前にして鳥肌が立ちました。
 
 
▢気分があがる明るい曲に惹かれる
 
――ディスコ・ミュージック、あるいは、ソウル、ダンス・ミュージックに惹かれた理由はなんでしょう。ほかのロック、ジャズ、歌謡曲などは聞きますか?
 
DB 音楽は気分を上げる為に聞いています。その流れでアップテンポな曲や明るい曲ばかり聴くようになり取捨選択を繰り返してディスコ・ミュージックが多くなったという顛末です。
 
ダンス・ミュージックの中でも特にディスコが好きな理由はあまり考えた事がありませんが、高度な技術を持ったスタジオ・ミュージシャンであったり、オーケストラを率いた楽曲には惹かれます。
 
現在ではなかなかできない大掛かりな形体でレコーディングすることが当時は当たり前にできていることは魅力の一つかもしれません。
 
ディスコ以外ではいわゆるディスコっぽい和モノやディスコっぽいジャズなど、ディスコっぽさがあればいろいろなジャンルにも手を伸ばしています。
 
ディスコ・ミュージックをサンプリング元としたフレンチ・ハウスは余裕があればレコードを買うようにしています。ルーレット・レーベルは重点的に探しています。
 
 
▢ロゴ、邦題、ライナーを求めて日本盤シングルを
 
――7インチ、それも日本盤の7インチに特化して、コレクションを進めているのはなにか理由がありますか?
 
DB  買い集める決め手となったポイントは3つあります。タイトルロゴ、邦題、ライナーノーツの内容です。
 
当時のタイトルロゴは時代的にコンピューターを使わないデザインで、それが現代のデザインから比べると良い意味で新鮮でコレクションしたくなります。
 
邦題もヘンテコだったり似たり寄ったりな付け方であったり原題を完全に無視していたりとどこか思い切りの良さがクセになります。
 
そしてライナーノーツは軽快な文章で読んでいて楽しいです。シングル盤はかなり自由で特にデニス・ラ・セールの「アイム・セクシー」(VIP-1368)のライナーノーツはそれが凝縮されています。
 
曲の解説が少なく曲の印象から妄想を繰り広げている文章に多大なる影響を受けてフリーペーパーは発行されています。ちなみにこのライナーノーツを書いたのは紺野慧さんです。
 
 
▢7インチ・シングル盤の入手の仕方
 
――ジン(小冊子)の中にも詳しく書かれていますが、いまは、主に7インチはどこで手に入れていますか?
 
DB 最近はレコード屋に通うことが多くなってきました。それに加えてヤフー・オークションを使っています。たまにしか見ないレーベルのレコードがコレクション対象になってきたので、専門的にしっかり仕入れをするレコード屋で見つけることが多くなってきました。
 
――自分が買う時に、なにかモットーにしていることはありますか? たとえば、シングル1枚千円以上は出さない、とか。コンディションの悪いものは安くても買わない、とか。
 
DB 持っていなかったら買います。コンディションは気にしません。たまにある落書きはコレクションに付加価値を与えてくれるという認識です。優先順位としては、知らない方を選ぶように心がけています。
 
現状知らないものは100円〜380円ぐらいの時が多いため、2000円以上のシングル盤を買うときは思い切った判断力が必要です。
 
――シングル盤はご自宅でどのように整理、ファイルしていますか? アーティストのABC順、あるいは、アイウエオ順でしょうか。『偏愛』では、アーティストの最初表記のABC順になっていますが。
 
DB 基本的にABC順です。DJをする時もあるので付箋に両面の曲から感じる印象とBPMを書いてDJでの選曲のガイドにして管理しています。
 
――いま、どうしても欲しい7インチ・シングルはありますか? それはなんですか。
 
欲しいものは、まだわからない、知られていないレコードです。Discogs(インターネット・サイト)に情報が載っていないものを見つけると少し特別な気持ちになります。
 
以前Mr. Presidentの「ラ・ラ・アキンボ」(YK-131-SR)という日本盤シングルを偶然手に入れたのですが、B面(「ドゥ・イット」)に思わぬレゲエ・ソウル&カリプソ・ファンクのような曲が入っていました。そんな経験をまたしたいと思っています。
 
Mr. President La La Akimbo

 
Mr. President – Do It

 
https://www.youtube.com/watch?v=3b_vv3aJgR4
 
――アルバムは買われないのでしょうか。
 
DB シングル盤ほどの頻度ではありませんが、これぞというものはたまに買っています。(ただし、部屋を圧迫してしまうのでなかなか買わなくなりました。)


ディスコビーツ氏のターンテーブル、仕事場


 
 
▢情報収集の方法
 
――現状、情報収集の主な方法はなんですか? インターネットですか?
 
DB 過去の雑誌を見つけるのはなかなか苦労するので情報はほぼインターネットです。今は国内盤シングル盤に絞っているのでレコード屋に通うことやヤフオクのチェックが情報収集になりますが、それより以前は国内外のディスコ関連、レアグルーヴ系のブログを見てユーチューブで検索して音源を辿っていました。アーティストの知識もままならない時期は菊地正憲さんのブログをひたすら読んでいました
 
「ディスコ堂」 by mrkick

 
――どこかでDJをしたりすることはありますか? あれば過去やったところなども含めて教えてください。その場合は、どの年代あたり、どのアーティストなどを中心にプレイされるのでしょうか。
 
DB ほとんどこもって制作の時間に充てることが多く、「自宅DJ」の意で「ハウスDJ」と自虐するぐらいです。
 
直近だと西荻窪のCreative Space Fusion (https://creativespacefusion.com/

)(東京都杉並区西荻南)にてDJさせてもらいました。昨年、「余韻hair studio &gallery」(福岡県久留米市)にて制作物の展示とDJで空間作りをさせてもらいました。(https://www.yoin-hairstudio.com/posts/37750403


 
 
▢1972~1982、BPM130を目安に
 
DB DJをするときは主に7インチ・ディスコを中心にセットを組み立てています。個人的なディスコの定義として主に1972~1982のリリースでまとめています。自分なりのプレイのスパイスとしてフレンチ・ハウスや現行ディスコや和モノに振りながらBPM130を目指しています。BPM130の理由はシルヴェスターの「ユー・メイク・ミー・フィール(You Make Me Feel)」がBPM 133だからです。是非掛けたいと思いながら選曲しています。
基本は『偏愛ディスクガイド』掲載盤をよく使っています。他に多用する盤を以下に抜粋します。
 
・Melba Moore /Pick Me Up, I'll Dance (邦題:あなたと踊りたい) 06/5P-57
 

 
とてつもない名曲という敬意をこめて「鬼アンセム」と評させていただきます。何度聞いても踊りたくなる衝動が呼び起こされます。
 
・Clio & Kay / Keep On Dancing (Radio version) ※プロモEP SEP-40
 

 
1988年リリースのユーロビートで音色は少しセットリストから浮いてしまいますが、曲がかなり好きなので隙あらばかけさせてもらってます。
 
・KOXO / Step by Step FRS-040
 

 
国内盤が無いですが、こちらも好きすぎるという理由でレコードバッグに鎮座させています。イタロ・ディスコやフランス産のディスコがかなりツボです。
 
・Corine / Pourquoi Pourquoi KW068T
 

 

 
2017年リリースのフランス産のディスコ。初めて聞いておしゃれだなと思い購入。多分これをかけてる間は少し気取った顔つきになっていると思います。
 
――今後の展開について教えてください
 
DB 現在はZINE(ジン、小冊子)はVol.17まで発行しています。初めてZINEを発行したのは2018年頃で不定期発行となっています。当初はLPサイズのライナーノーツをイメージしていました。オモテのみの印刷で、ZINEというよりチラシでしたが近所の美容院やバーやクラブに置かせてもらっていました。内容は現在まで変わらず、音楽にまつわるエッセイ・新譜紹介・30分のMIX (MIXクラウドにQRコードからリンク)となっています。
 
こちらは基本的にタダで配り歩いていたので、(自分の)財布の事情によって形式が華麗に変化しサイズダウンや一色印刷となっています。お時間があれば是非お読み下さい。(上記にリンク)
 
今後については、もちろんこれからもディスコ・カルチャーを通した表現活動は続けていきます。私はディスコ・カルチャーを通った世代ではないので、そこをポジティブに捉えて歴史や知識を同時進行で学びつつ、別の無垢な着眼点も持ちながら、ディスコという現象の再構築をしたいと思っています。
 
――ありがとうございます。
 
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ディスコビーツのホームページ

 
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