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乳がんと肥満

「乳癌を持つ太った人の絵を描いて」とAIに頼んだらこれを描いてくれました。

がんと肥満
これまでの情報によると、多くのがん(以後は、癌)は肥満と関連していることが示されています。具体的には体格比(Body-Mass Index; BMI)といって、体重を身長(メートル換算)の二乗で割った数字が増えると癌になりやすいと言われています。様々な国のデータで28万人を含む研究では、女性であれば子宮体癌はBMIが5ポイント増えるごとに、リスクが1.5倍になると言われています。その同じ研究において、アジア太平洋地域の女性の場合は、閉経前も閉経後もBMIの上昇が乳癌の発生率が上がることが示されています。
※BMI = 体重㎏ ÷ (身長m)^2 身長で2回割る
例:体重60㎏、身長170㎝の人の場合、BMI = 60÷(1.7)^2 = 20.76

閉経後乳癌とBMI
肥満は、閉経後の女性における浸潤性乳癌のリスク増加と関連しています。この研究は、1993~1998年に登録された、50~79歳の閉経後女性67,142人について2010年まで追跡調査されました。追跡期間期間の中央値は13年でした。そのうち、3,388 人が浸潤性乳癌と診断されました。結果は、過体重および肥満の女性は、標準体重の女性と比較して浸潤性乳癌のリスクが増加していました。

高度肥満 BMI > 35.0 kg/m 2 の女性は1.58倍(95% CI 1.40 ~ 1.79)高いリスクとなっていました。しかも、より大きな腫瘍サイズ、リンパ節転移、乳癌死亡とも関係していました。
また標準的な体重の人でBMI 25.0 kg/m 2未満の人であっても、追跡期間中に5%以上体重が増えた人も乳癌になるリスクが1.36倍上昇していました。
この臨床研究の結果は、肥満予防プログラムの動機付けとなるはずです。

次の研究では、標準的な体重(正常なBMI)の女性における体脂肪の乳癌のリスクについて調べていました。
上と同じ集団について、3460人について調べ、DXAという手法で体脂肪を測定しました。結論として、BMIが正常な閉経後の女性であっても、体脂肪レベルが比較的高いと、浸潤性乳癌のリスクが上昇し、循環代謝因子や炎症因子のレベルが変化することに関連していた。正常な BMI だからと言っても安心できないという結果でした。

閉経前乳癌とBMI
758,592 人の閉経前女性について調べた研究で、18 歳から 54 歳までの女性について、 BMI と関連した閉経前乳癌のリスクを推定しました。追跡期間の中央値は参加者あたり9.3年で、乳癌の発生件数は13,082件でした。
結果では、驚いたことに、18 ~ 24 歳においては BMI が増えるほど乳癌のリスクは減っていました。BMI が5 kg/m2増えるごとにリスクが0.77倍(95% CI、0.73-0.80)と減っています。また45 ~ 54 歳の場合も同様で BMIが5.0-U増えるとリスクが0.88倍(95% CI、0.86-0.91)と減っていることが分かります。

日本人の場合は?

単一施設のデータで、2002年から2014年の間に登録された乳癌患者さん、3223人について、BMIがやせ(18.5以下)、普通(18.5-24.9)、ポチャ(25-29.9)、肥満(30以上)の4群に分けて調べたところ、肥満群は普通群に比べて閉経後のER陽性乳癌のリスクが高いことが分かりました。

日本の全国行政データベースのデータを使用して、この関連性を調査されています。
2005年1月から2020年4月までのBMIに関する健康診断データが入手可能な45歳未満の女性785,703人を調べています。
結果は、まずBMI 中央値は 20.5kg/m 2で、年齢中央値は 37歳でした。追跡調査中央値1,034日中に、年齢中央値44歳で5,597人の参加者(0.71%)が乳癌を発症しました。BMI ≧ 22.0 kg/m 2 は、全乳癌、45 歳以下の乳癌の発生率低下と有意な関連がありました。
結論としては、日本の全国データベースを使用したこの研究は、西洋人女性で観察されたものと同様に、BMIが増えるほど日本人女性の閉経前乳癌発症が減ることが示されました。ただこれは最初のランセットの論文とは異なる結果ですので、引き続き調査する人数や期間などを増やして研究を続ける必要がありそうです。


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