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循環的死後の臓器提供 DCD (donation after circulatory death) について

図はサイエンス誌のものを表示しています。

最短で説明

助かる見込みのない患者の心停止の確認のみをもって、臓器移植へ繋げる考え方。

もっと詳しく

極めて重篤な疾病や事故に伴う障害などで、生命維持装置によってなんとか生きている、ほとんど助かる見込みのない人から、一時的に生命維持装置のスイッチを切った状態で、5分間自己心拍の停止を確認し、「治療担当医師」が死の宣告をする。この「治療担当医師」の仕事はここで終わる。
ただちに「臓器移植チーム」に引き継がれ、脳への血流を遮断したのち、補助心肺システムを再開し、臓器を保護したうえで、適切な次の患者へ臓器移植する。

突然死や事故死ではない、通常の「死」は病院か自宅のベッド上で、家族が周りにいて、数週間、数日、数時間かけて行われる。身体の全ての機能が停止した時に「死」が宣告される。
しかし臓器移植を考えたとき、典型的な方法、つまり脳死後に臓器を別の患者に使うという方法では、臓器が多少なりとも虚血に伴って損傷を受けており、ベストの状態とは言えない。

サイエンス誌で紹介された(もちろん推奨はされていない)方法は、患者の回復が極めて困難な状況、誤解を恐れずに言えば「ゼッタイに助からない状態」で、患者や家族にそのような希望がある場合に、生命維持装置のスイッチを切り、たったの「5分間」心臓が止まっていることを確認して、それをもって担当医が「死の宣告」をする。

ただちに担当医から「臓器移植チーム」に引き継がれ、臓器を保護するために、生命維持装置を再開する。そして・・・脳が回復しないように(としか思えない)脳への血流を遮断する。
たった5分の臓器虚血であり、臓器そのものは極めて「新鮮」であると言える・・・これまでの循環的死では極めて重大な臓器の損傷が避けられなかった。

この手法NRP-DCD;Normothermic Regional Perfusion - DCD は必ずしも米国でも一般的ではないが、英国ケンブリッジのロイヤル・パップワース病院はこの手法で移植を受けた22例について、全員が1年生存していることを報告した。同様の手法を取られた、英国、スペイン、米国、ベルギーの157の例も報告されている。

脳血流のクランプについて、倫理的ディレンマになりそうであるが、臓器移植チームはあくまで血管クランプは死後の介入であると考えている。
例えば、ブタの場合、8分間循環停止させ、その後に脳血管のクランプの有無による脳波の変化を観察したところ、クランプせずに循環回復したグループでは脳波の活動が見られた、とのことであった。
現状では、倫理的な問題として解決はしていないと言える。

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