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コロナ総括⓳東京の重症者が少ない理由と、正しい「若者は可哀そう論」

東京は地獄絵図になどならなかった

お盆が明けて、コロナウイルスの新規感染者数がようやくピークアウトし始めた。この点については、日本感染症学会にて、政府の新型コロナウイルス対策分科会会長を務める尾身茂氏も8月20日の講演にて言及している。
実は、7月末の投稿で私は、COVID19の今後の感染状況について、以下のような予想をしていた。(詳細はコロナ総括⓰コロナ総括⓮を参照)
① 新規陽性判明者は早晩、東京だけで500名、全国では1000名を超えるレベルにまでは達する。
② 現状、重症者が少ないので安心だという声を聴くが、それは7月上旬まで高齢患者が少なかったためだ。それ以降、60歳以上の陽性判明者が、急増した。したがって重症者数も今後急増していく。結果、重症者用の病床不足となり、地獄絵図となる。
③ こうした中でGOTOキャンペーンを展開しても、結果は以下のいずれかで失敗しかない。
シナリオⅠ.各地に感染が伝播し、8月中には日本全体がCOVID19の感染クラスター化する。
シナリオ2.ある程度の感染蔓延に伴い、旅客数が減り、キャンペーンが低調なまま終わる。
シナリオ3. 旅先で感染防止策が強く施され、また観光客も出歩きや飲食を減らし、観光消費が盛り上がらぬ殺伐としたキャンペーンとなる。


正直に振り返れば、①については、全国の新規感染者数はピークに1700名近くとなり、想定通りとなったが、東京のそれは472名で、500には達していないが、ま、この程度はお許しいただきたい。
一方④のGOTOキャンペーンについては、シナリオ2となり、前年同日比の人出は主要ターミナル・観光地ともに30%以上の減少を示す箇所が多くなった。こうした「自粛」により、実行再生産数は全国で8月11日、東京が8月10日、名古屋が8月9日、大阪が8月10日に1を下回っている。この予想については、及第点を上げられるだろう。
残った②が問題だ。現状、日本は地獄絵図には至っていない。その点は私の予想が外れたと、素直に反省しなければならないだろう。
以下、重症者数について週単位でプロットしてみた。

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大阪の重症者数は直近70に届き、過去ギネスを記録している。全国で見ても最少期(図表にない7月11日)に31だったものが、直近ギネスでは243名になり、ピーク比8割弱にまでなった。このことをもって「地獄絵図」と強弁することもできそうだが、私はそれに抵抗を感じる。なぜなら、肝心の東京が直近でも重症者が36名程度であり、重症者用の病床が100も用意されていることからすると、とても「地獄」にはなっていないからだ。私の当初の想定では、東京の重症者数はお盆明けには最低でも80以上になると考えていた。実際、大阪並みの重症者発現率であれば、100を超えていただろう。仮に東京の数字がそこまで伸びていれば、全国合計で重症者数は過去ギネスレベルにまで膨れ上がっており、そうした状態をもって、「地獄絵図になる」というのが正しいと考えている。
つまり、この点では予想は大外れだ。
これは死亡者数についても同様のことがいえる。東京の数字が低位安定していて、全国トレンドと異なるのだ。以下が、週別の死亡数グラフとなるが、こちらで見ても、全国と大阪が一直線で増えており、東京のみ3~5で上下している状態だ。重症や死亡が増えなかったことは良いことではあるが、なぜ、東京のみこんな幸運に恵まれているのだろうか。

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ちなみに、重症・死亡割合が高い60歳以降の高齢者の陽性判明数は東京でも増えている。下記グラフは総括⓰で示したものだが、このデータをもって、「東京でもじきに重症者は増える」と予想していたのだ。

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重症者が増えなかった言い訳として、昨今明らかになった重症者の定義の違い=「東京は集中治療室の入院患者を重症にカウントしていなかった」という話は、理由として成り立たないだろう。集中療以室入院者は以前からカウントしてなかったのだ。にもかかわらず、5月のピーク時には100を超える重症者数になっていた。ということは、昨今増えないことの理由にはなりえないのだ。

東京が地獄絵図にならなかった理由

さて、今回の予想がなぜはずれたか、つまり、東京のみラッキー状態の種明かしをする前に、まずは考え方の大前提となるデータを示しておきたい。
これは、COVID19による年齢別の死亡率を簡易計算したものだ。COVID19の場合、発症から死亡までの期間が3週間程度に人が多くなるので、陽性判明者数と死亡者数を下記のように3週間ずらして集計したものだ。
第一波/6/10までの陽性判明者(=6/30までの死亡者)
第二波/6/11~7/29までの陽性判明者(=7/1~8/17までの死亡者)

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第一波・第二波どちらで見ても、真っ先にわかるのは、この病気は40代以下では死ぬ人は、ほぼいないということだ。逆に、高齢になると死亡率は急上昇していく。
ちなみに、総感染者ベースで死亡率を出すと、第一波が5.7%に対して、第二波は0.9%。一見、6分の1程度にまで死亡率が低下しているように見え、「コロナももう“弱毒化して死ぬ病気ではなくなった”」という論調が生まれがちだが、これは要注意だ。
上記のように年代ごとの死亡率で見ると、第一波に対して第二波はおおよそ半減しかしてない。総感染者ベースの死亡率が下がっているのは、感染者に占める40代以下の割合が激増したために起きているだけのことだ。また、第二波ではPCR検査体制を拡充したために、無症状の健常者も捕捉されることで、死亡率が低下しているという話もよく聞かれるが、これもあまり正しいとは言えない。無症状者の実数はなかなか把握しづらい(その後に発症することがあるため)のだが、検査時点でも無症状者割合は、第一波に相当する5月末までで11.1%、第二派に相当する6月~7月では15.5%と若干増加したに過ぎない(IASR Vol. 41、IDWR 2020年第30号より筆者計算)。
その他、死亡率が下がった理由としては、①治療法の確立(ステロイド、レムデシビルなど)、②季節要因(高温地区の死亡率は総じて低い)などが考えられ、さらに無症状者捕捉など複数の要因が合わさって、ようやく「半減」しているに過ぎない。「安心できるほどの弱毒化」ではないだろう。

80代陽性者割合の差異がラッキー要因

話が横道にそれてしまったが、再度上記グラフを見てほしい。ここで60代の死亡率と、70代・80代のそれを比較すると、第一波・第二波とも変わらず、70代は60代の約3倍、80代は6~8倍にもなっている。高齢者とひとくくりに考えるべきではなく、さらに詳細に年齢分けしてみていかなければいかないことがわかるだろう。
これでようやく、「東京のみラッキー」状態の説明ができる。現在の死亡者は、逆算すると7月10日から7月29日の陽性判明者が主流となる。この間の「高齢者」の判明数を詳細に分類したものが下図だ。

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全国を見ると、80代の陽性判明者数が419名で26.9%を占める。対して東京は80代の陽性判明者数は26名で5.9%に過ぎない。一方60代に関しては、全国ではその割合が43.6%にとどまるが、東京は55.8%にもなる。こうした「高齢者の内訳」の違いが、重症者数・死亡者数の差となって表れたのだろう。

空寒い超高齢者の急増ペース

さて、尾身さんの言う通り、新規陽性判明者数はピークアウトしつつあるのは確かだが、重症者数はそれから2週間程度、死亡者数は3週間程度遅れた動きをする。とすると、重症者は今がようやくピーク、死亡者はこれからしばらく高止まりということになるだろう。それがどのくらいになるか、直近の高齢陽性者の内訳を挙げておく。少し怖いデータとなるのだが。

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全国で見ると80代以上の高齢者は28.7%で前クール(26.9%)よりも若干の増加にとどまるが、東京は21.1%と前クール(5.9%)の4倍4近くになる。率ではなくて実数で見ると、全国では419→1230と前クールの約3倍、東京は26→143と5倍以上にもなる。
さらに不気味なデータを示しておこう。
こうした高齢者の陽性判明数を3週間クール(GW期に一部ずれあり)で過去からたどったのが下図となる。

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第二波はもともと、若年中心の感染だったものが、直近では高齢者(中でも80代)が急増し、陽性判明数は第一波のピークである4月をはるかに上回っているのがわかる。第一波比で70代がおおよそ1.4倍、80代でも1.3倍強にもなる。死亡率が半減しているとしても、第一波のピーク時死亡者数の6~7割水準にまで達する可能性が高そうだ。

甲子園は中止でも、昼カラ喫茶はやっている矛盾

さて、この結論をどう結ぶか?
コロナ脳的な論者であれば、「結局、若い人中心の感染拡大だから大丈夫、大丈夫と言っているうちに、高齢者にまで感染が拡大してしまった。だから自粛しろと言ったのだ」となりそうだ。だが、私の結論は異なる。
正直、50歳未満の人はほとんど死んでいない。30歳未満に限れば第一波の時に一人死んだだけで、第二波では膨大な感染者がいるにもかかわらず、死亡は0だ。さらにいうなら、第一波の20代死亡者とて、糖尿の持病がある力士であり、一般人とはいえない。
こうした中で、なぜ若者は自粛を強いられなければならないのか?自分の死亡リスクはほぼないが、高齢者に「うつさない」慮りとしてそれが「当たり前に」強制されていることに、そろそろ違和感を持つべきではないか。
順当なら、自粛すべきは高齢者となるはずだ。80歳以上は基本、外食や遊興を極力控える。70代でも相当に注意すべきだ。もちろん、若者とて、高齢者と同居している場合は十分に注意が必要ではあるが、どうも力点が若者に向きすぎている。
たとえば、飲食や遊興の場では、入り口で逆年齢チェックをするのはどうか。80歳以上なら原則、「自粛」をお願いする。70歳以上であれば、まず検温。それも、高齢者は基礎体温は低いことが多いから、基準を下げて、37度以上の場合は入店お断りする。さらに言えば、入店許可者された70代にも、COCOAを必ずダウンロード願う。スマホがない場合は、「簡単スマホ」を買ってもらうこともぜひお願いしたい。
これくらいを要望しても良いのではないか?
こうした話を書くと「年齢差別だ」「弱者に厳しい」「人生の先輩に失礼だ」などと批判が渦巻くだろう。ただ、それはずいぶんとおかしな話だ。
私たちは一方で、年齢だけをあげつらって、若者には「失礼」を強要している。甲子園もインターハイも中止となり、吹奏楽部や演劇部も活動は自粛。楽しい学校生活も受験勉強も休校でズタズタになり、夏休みも半減した。それが成人を過ぎた大学生・院生にまで強要されているのだ。こうした若者への自粛強要にはあまりに鈍感だ。で、高齢者は昼カラして感染しても誰にも怒られません。昼間に、ゴルフのクラブハウスにたむろしてるのも、ジムのサウナと休憩室で幅を利かせているのも、みな高齢者。
にもかかわらず、同じ「年齢による」区分でも高齢者になると途端にセンシティブになる。そろそろこのバカげた固定観念から脱したらどうだろう。
かたや若者は、自分の身の危険ではなく、他人様のために「自粛」させられ、自らの命に係わるのに高齢者は取締りなし。変過ぎるとは思わないか?
自粛警察やマスク警察の皆さんも、そろそろこのことに気づき、昼間から歌声が聞こえるカラオケ喫茶があったら、まずドアをあけて踏み込むべきだろう。そんな時間からそこにいるのは、10中8,9高齢者に違いない。そこで「とっとと家に帰れ」とぜひ一喝願いたいものだ。
この件に関しては、経済優先の人も、集団免疫論者の方も、ご賛同いた抱けると思う。ほんの一部の超高齢者のみの自粛で、大方の経済は普通に動くのだから。

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