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コロナ総括❸ダイヤモンド・プリンセス号は 厄介な福音だった

~初期の災厄/瑕疵はむしろプラスに働いた~ 

感染拡大が始まった当初、日本はいくつかの不運に見舞われ、過誤を犯した。そうした初動のまずさから、えてして「日本はダメだ」というイメージが国内外に広まってしまった。ところが、通り過ぎて振り返ると、不運は後々プラスとなり、瑕疵は大した被害を出していなかったことに気づく。

世界が非難した日本の対応


COVID19の感染拡大初期、日本に降りってかかった災厄といえば、やはりダイヤモンド・プリンセス号での一件が思い出されるだろう。
3711名の乗客・乗員のうち、712名が感染し、13名が死亡したこの事件は、世界的にも注目を集め、日本の評価を大きく下げた(以下、時事ドットコム、2月25日より)。
「感染で煮え立っている鍋だ」(ガーディアン、2月18日)
「隔離計画にしくじって、中国本土以外で最大の感染拡大を引き起こした」(ザ・サン、2月18日)
「2週間も船内に大勢を押し込めた日本政府の方針に、日本国外の専門家からは疑問の声が上がっている」(ウォールストリートジャーナル、2月17日)
「(日本が)世界で最も危険な場所の一つになりつつある」(ブルームバーグ、2月19日)
この事件で日本の不手際が世界に広まった一因として、岩田健太郎医師(神戸大学病院感染症内科教授)が流した動画が挙げられる。岩田氏は日本感染症学会認定感染症専門医で、海外(特にアフリカ)での臨床経験も豊富であり、世界的に一流の専門家と認知されている存在である。手弁当で駆け付け、船内に入ったが、中の状況があまりにもひどかったために、動画の中で以下のような言葉を発している。
「ものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました」
「ひどい感染対策をしているシエラレオネの方がよっぽどましでした」
岩田氏がことのほか問題視していたのは、船内のゾーニング(仕切りわけ)がしっかりできていなかったという点だ。
ダイヤモンド・プリンセス号内部には、事後的に見ればかなりの問題があったようだ。こうした過ちに関しては雑誌や書籍、テレビ特番などが詳細まで分析しているので、本稿ではそれ以外の瑕疵(と思われたこと)について、考えていきたい。

アメリカ政府が船内隔離を指示していた

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