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榊莫山の写経・コンパッションの力。

今マインドフルネスを超えてコンパッションの力が必要とされているなぁ、とつくづく感じています。


【コンパッションとは】
人が生まれつき持つ「自分や相手を深く理解し、役に立ちたい」という純粋な思い。自分自身や相手と「共にいる」力のこと。
育むことで、対人調整力、意思決定の質、モチベーションが向上する。


榊莫山の般若心経が仏画と相伴って魅力的なものだから、

図書館で『大和仏心紀行』という本を借りてきて終日眺めてしまった。

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それで先日違う本で見たピンクの丸の中に納まった般若心経は「紫心経」というのだと改めて知った。


榊莫山は般若心経ばかりか他のお経もたくさん書いているけれど、展覧会には毎年「般若心経」を出品していたようだ。

しかし、そのとっかかりが昭和29年にご長男を亡くされてから書き始めたということを知り「慈しみ」というコンパッションがそうさせたのだと文章を読んで感じられた。

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引用すると

わたしは死んだ寧を抱いて、女房と長女せい子とともに伊賀へと向かった。九月三日、細い雨が降っていた。伊賀への道はながかった。女房とせい子は気分が崩れるといって、途中で電車にのりかえた。
車は大和平原をよぎり、峠の木かげをくぐりぬけ、やっと古里の家へたどりついた。あんなに辛い時間をくぐりぬけたことはなかった。戦争で艦砲射撃の下でも、けっして辛いとは思わなんだのに。
以来、わたしは莫山展のたびに、お経を書いて出すようになった。そのいちばん最初は、死んだ息子にこだわった。「香玉寧童子」という諡を印に彫り、「おんかか、かびさんまえい、そわか」と地蔵の呪文を、そのかたわらに書きそえた。
こういうこだわりは、なまぐさい。命日には、その軸をかけていたが、しだいになまぐささがわかってきた。
いつとはなく個展には般若心経をかいていた。

中略

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でも、そのうちに、わたしのかく般若心経にさえ、なまぐさい執着があるのが、わかってきた。
気随気侭な心経をかきたい、と思いはじめたのは、寧が死んで二十年がたった頃だった。わたしは五十歳。
五十歳という人生の峠に立って、しみじみと聞こえてきたのは、執着と別れろ、という声であった。中略
この「紫心経」はそんな気分のなかで生まれた、かなり気に入りの心経である。



何十年も色々な思いを抱きながら般若心経を書いてきた莫山だから「まぁるく」ほんわりとした般若心経が書けるのだと思った。

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昨今のコロナ禍のなかで見聞きする悲惨な事件や災害を見聞きしての「共感疲労」誰もが感じていることと思う。

がんばってもがんばっても状況が良くならないで「燃え尽き」と隣り合わせで日々何とかやり過ごしている方もいるだろう。

そういう時に私たちが本当に欲しいのはコンパッションという力だと思う。

共感だけではなく「わかりますよ」「一緒にいますよ」「ここに居場所がありますよ」「どうぞ、あなたのことをきかせてください」という受容の力。

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この「慈悲」と「共感」を併せ持った「人」と「場所」があると、私たちは健全でいれると思う。「安全で確固たる自分の場所」を持っていれば、だれでも利他性、共感、誠実、敬意、関与といった「良いところ」をだせる。

反対にコンパッションがないと、これらの「善良な心」は、病的で義務的な利他性や、共感疲労のようなネガティブな方に傾いてしまう。

だから自分の感情を整理していつもニュートラルでいれたらなぁ、って思いました。

今日そんな風に思ったのは三味線のお稽古で師匠のおうちの近所で殺人事件が起きて昨夜は警察の照明とサイレンで眠れなかったと聞いたからかもしれません。

20日未明、愛知県稲沢市の市営住宅で、親子とみられる男女2人が刃物で刺されてその後死亡し、警察は市営住宅の敷地内にいた25歳の容疑者を殺人未遂の疑いでその場で逮捕しました。調べに対し「父親と姉を包丁で刺した」などと、供述しているということで警察が詳しいいきさつを調べています。
20日午前0時すぎ、愛知県稲沢市西島新町の市営住宅で、住民から「叫び声が聞こえた」などと警察に通報がありました。


滅多に事件が起きない田舎町ですが、悪いニュースというのは「うわぁ」という間もなく記憶しちゃう。

殺人事件というのは家族で起きるケースが多い。

わかるよ、それ!家族だからこそ許せないことたくさんあるし。憎しみだって他人じゃないだけに深い。

こんなこと言うと「アンタ恐ろしい性格してんのね!」と言われそうですが、「何にもない家族っていないよね。どこのうちにもミイラが一つは転がっているものよ」と先日亡くなった同級生が言ってくれた。彼女こそ修羅場をくぐりぬけてきた女性だけど、本当に陽気な性格だった。何気ない会話でもコンパッションがあった。

家族の殺人事件、莫山がいうところの「執着」の魔が「その瞬間」に大暴れしてしまうんでしょうね。

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