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偉人たちの決断 読みどころ解説


みなさんは日本人の特徴と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
良い面では、礼儀正しい、忍耐力が強い。良くないとされる面では、自分を表現するのが苦手、日和見主義的などが挙がるかと思います。
ですが、まず一番に思い浮かぶのは、”思いやりの心”ではないでしょうか。
先般、カタールで開催されたワールドカップでも、ゴミを残さない日本人サポーターが話題になりました。日本人の振る舞いは世界でも取り上げられ、度々話題にも挙がります。
 
では、この日本人の”思いやりの心”は一体いつどこで育まれたものなのでしょうか。それを知る手がかりとなるのが、本書『偉人たちの決断』です。本書では、この思いやりの心を”大和心”と定義し、信念の元に己の人生を懸命に生きた偉人たちの28のエピソードを収録しております。

なんといっても本書の特徴は、文章の読みやすさでしょう。著者の加来耕三先生は、テレビや講演でも大活躍の歴史家。幅広い知識と、鮮やかな筆致で、偉人たちの等身大の姿を浮かび挙がらせます。成功エピソードだけでなく、偉業をなしとげるまでの苦労や挫折も取り入れているため、偉人たちの存在をより身近に感じることができます。
また、歴史から学べる教訓を、現代を生き抜く知恵として、一般に理解がしやすいようにかみ砕いて落とし込んでいるため、歴史の知識がない人にも楽しめる1冊です。1エピソード10ページ前後で紹介しているため、気になったところから読み進めるのもオススメです。

さらに、普段取り上げられることのない偉人たちも取り上げているところも見所です。
第六潜水艇艇長の佐久間勉。北海道開拓に大きく貢献をした伊達邦成。民生委員制度の土台を構築した大阪府福祉知事・林市蔵。
どの人物も広く世に知られている人物とはいえないかと思います。ですが、佐久間勉などは地元に記念館が建てられ、その功績を後世に伝えています。
地元にこんな偉人たちがいたんだと、意外な発見も期待できるのではないでしょうか。

現在、偉人として人々から称賛されている彼らですが、彼らだって最初から偉人だった訳ではありません。自分の人生を懸命に生き、そして誰かのために時には自己を顧みずに行動した結果、人々からあがめられるようになったのだと思います。
著者の加来耕三先生は、不安や焦燥に駆られたとき、そんな彼らのことを想い浮かべるといいます。
(以下本文から抜粋)
「世に知られていながら誤解されつづけている人、立派な人生を歩みながら広く人々に知られることのない無名の英雄、心の豪傑な人、可憐でいながら強い意志を持つ乙女、ときに放埓でそれでいて真面目で、必死に前向きに生きようとした歴史上の人々の、笑い声や嘆き、啜り泣く声を聴いていると、心の奥底が少しずつ沈着し、晴れやかになってくる。
 彼らは、一様に語りかけてくれる、
「――それでも、この世は、捨てたものじゃない」
 と。ただ、一生懸命に立ち向かえば、それでいいのだ、結果ではない、と。」」

現在、流行病や戦争など、不安が絶えない毎日が続いております。
そんなとき偉人たちの”大和心”は、時を超えて私たちに勇気を授けてくれるのではないでしょうか。

文責:原田

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