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『戦国武将列伝1 東北編』の読みどころ解説

3月の新刊、遠藤ゆり子・竹井英文編『戦国武将列伝1 東北編』が刷り上がって参りました。刊行に先がけまして、「戦国武将列伝」シリーズ第5弾となる本書の読み所を解説します。

まず本書のはしがき(竹井英文先生執筆)では、次のように記されています。
「東北戦国史の研究は着実に進展しており、通説が大きく覆ることも増えてきているのである。同時に、伊達政宗以外の武将たちの実像についても、大きく塗り替わりつつある。近年の最上義光に関する研究は、その最たるものだろう。本書は、そうした研究動向を受けて、東北の主たる戦国武将について最新研究に基づきながら、列伝という形で彼らの武将としての実像をわかりやすく紹介するものとなっている。(中略)東北の戦国武将たちの最新研究を通覧でき、かつ気軽に楽しく読める本書のような本は、これまでなかったはずである。その意味でも、本書刊行の意義は極めて大きいものと感じている。」

本書ではこのような方針に基づき、戦国時代に現在の東北地方で活躍した武将29名を収録しました。なお、東北ではありませんが、蠣崎季広・松前慶広という蝦夷地(現在の北海道)を地盤とした二人の武将も、もとは安東氏の被官で北奥諸氏との関係が強いということで本巻に掲載しています。

中でも核になるのは、やはり伊達稙宗・晴宗・輝宗・政宗の伊達氏4代および伊達成実・片倉景綱ら伊達氏関係者でしょうか。東北のみならず、戦国ファンの人気が特に高い武将たちかと思います。
とはいえ、これまで政宗ばかりがクローズアップされることが多かった中で、それ以前の稙宗・晴宗・輝宗3代の当主が取り上げられたことは大きいかと。それぞれの事績・特徴がコンパクトにまとめられたことも重要ですが、親子間での対立・確執が周辺諸氏を巻き込む騒動になっていきますので、そのあたりも読み所の一つとなっています。

また、上記の点とも関わりますが、東北の武将たちの特徴として、とにかく周辺諸領主との血縁関係が濃いことが挙げられるかと思います。伊達政宗の母は最上義守の娘、妻は田村清顕の娘ということはよく知られていますし、他の武将たちも軒並み濃い血縁関係を結んでいます。そして、岩城親隆が伊達晴宗、蘆名盛隆が二階堂盛義の息というように、他家から養子に入って当主になった人物も多数みられます。
いずれも関係が良い時期には問題ありませんが、当然、戦国の世のならいとしてそのような時期が長く続くわけもなく…。ということで、複数の家を巻き込んだ泥沼の争いは本書のメインテーマの一つとなっています。

そして、東北戦国史の終焉として、豊臣秀吉政権による「奥羽仕置」は外せません。「惣無事」を目指し、小田原北条氏を降伏させた豊臣政権の次ターゲットは東北に設定されましたが、豊臣政権への対応が多くの領主たちの将来を左右しました。それまで自律的な存在だった東北の領主たちの上に、いきなり豊臣政権という公権力が現れたことは、大なり小なりインパクトを与えたことは間違いありません。生き残った家と滅亡してしまった家、そこにはどのような選択の違いがあったのでしょうか?

ところでこれは私の個人的な感想になりますし、当たり前といえば当たり前かもしれませんが、北奥羽と南奥羽とは世界がまったく異なるなということです。もちろんそれぞれ繋がりはありますし、影響をまったく受けないということはありえませんが、そのあたりの地域的な違いも楽しんでもらえたらと考えています。

なお、本書のあとがき(遠藤ゆり子先生執筆)には「東北戦国史で、ここまで充実した一緒をまとめられるような日が来るとは、十年前にはとても想像できなかった。本書を手に取ってくださった読者のなかから、東北戦国史研究の歩をさらに進めて下さる方が現れてくれれば、これほど幸せなことはないと思う。」と記されていますが、担当編集としても同じ気持ちです。

ちなみに、『戦国武将列伝1 東北編』の特典ポストカードは↓のように伊達政宗バージョンを作成しています。

伊達政宗(「英名百雄伝」)

一部書店および弊社公式通販で購入いただいた方に差し上げています。詳細は下記リンク先をご覧ください。

また、地域的にとっても関係の深い黒田基樹編『戦国武将列伝2 関東編上』ともどもよろしくお願いいたします!!

                             文責:丸山

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