見出し画像

良い物を使う楽しみ

去年、ではなかったがもう結構前のこと。
実家で母親と一緒に夕飯の支度をしていたときだったと思う。

「えっ、ナニコレ。凄ない?」

びっくりしたのは何気なく使ったピーラーがとても勝手が良かった為だ。
一見ごく普通、シンプルな金型のピーラーなのだが、皮を剥きたいものの面にピタッと合って、ほとんど力も入れていないのにスーッと剥けてしまう。
大きくないので手のひらが小さい自分も持ちやすい。
良いね良いねと言ったが、ただそれだけの話だった。と、少なくとも自分は思っていた。
少し前に母親から「アレ見つけたから、買っといてあげたよ」とメールが入るまでは。

なんだその(無駄な)行動力は。
優しさに起因するのは分かっているので文句を言うわけにもいかない。おまけに商品の代金を請求されるわけでもないから、尚更ありがとう……と受け取る他ない。いや、本当にありがたいはありがたいんですけど。

そんなわけでいきなり手に入れたピーラーだが、今まで使っていたピーラーは古いもののまだまだちゃんと使える。

京セラのセラミックピーラー

当時京セラで働いていた人がなにかの折にくれたものだと思う。別段不便は感じていなかった。
しかし折角買ってくれたわけだし、使い勝手が良いのは間違いないし、と試しに使ってみたのだが。

「あっ、やっぱ凄ッ」

刃の滑りが全然違う。古いものも剥くということに関しては間違いがないが、使い心地がとても滑らか。こりゃやっぱすげぇ。
あっさり手のひらを返し、新しいピーラーはキッチンツール箱へのメンバー入りを果たし、古いものは敢なく2軍へ落ちた。どの世界も弱肉強食なのだ。

物を大事にという考えは良いことだろうし、古いピーラーも今すぐ捨てるつもりはない。しかしながら良いものに変えるのも、別に罪ではない。
新しいものというのは、それだけでいくらか心浮き立つものだ。別段自分の料理の腕が上がったわけでもないのに、ついフフフンと得意顔にもなってしまうし、すいすいと剥けるのも楽しい。
古いものに感謝しつつ、新しい良きものの効能、存分に堪能させていただくことにしようと思う。


新ピーラー
新潟県燕市に本社を構える下村企販という会社のもの
三条刃物鍛治がルーツなのだとか。なるほど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?