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ショートショート1「ワッペン」


学校の夕方は何だかだるい。お家へ帰る街並みもぼんやりして見える。



ふわふわしている身体。



どこかおぼつかない足取り。



走馬灯のように変わっていく景色に身を預け、進んでいく。



何だか疲れてるみたいだ。




「日向!」


「…!?」



ふと我に返る私。



背が高くてどっしりとした面影を見て、何だか安心した。




「何で笑顔なの?」と聞くので、



「あの頃のままだったから。」と答える私。



それでも「?」な姿を見て私は笑う。




〜〜静かに風が通り過ぎる空〜〜




ぼんやりとした夕焼けに、ふと眺めていると




「あのさ…。」





「、、、なに?」





「ずっと決めてることがあるんだ、、、。」





「えっ、どんなこと、、、?」





「僕が将来、好きな人と結婚したら、、、手作りにウミガメのワッペンをプレゼントしようと思ってるんだけど。」






「小さい頃から好きだったウミガメの?」





「うん。宝物にしてほしくて。」





「それ良いかも!」





「えっ、そう?」





「うん!素敵な夢だよ!」





「でも、、、」





「でも?」





「その前に裁縫が全然ダメで、、、」





「じゃあ、私がその夢叶えてあげる!」





「えっほんとに…?」





「うん!約束する!」





緊張がほぐれて笑顔になった横顔を見て、私は安心した。





〜〜遠くで声が聞こえる〜〜





「日向!起きて、日向!」





「、、、うん??」





「もう帰る時間!授業中起きないなんて、オリンピックだったら最長記録だよ〜。」





そうか。私、寝てたのか、、、。 




そして、ふと我に返る。。。





「そうだ!ちょっと寄りたいとこあるんだけど。。。」






〜〜夕暮れ時〜〜






「ただいま〜。」





「日向。おかえり〜遅かったね」




夕飯を作るお母さんの姿。





「実は、お母さんに渡したいものがあって、、、」






「、、、なに?」





「これ。」 





私の手には、キラキラと青くひかるウミガメのワッペンがあった。






「これって、、、お父さんが渡せなかったワッペン、、、」





「そう。裁縫が全然ダメで諦めちゃったワッペン。」





「ありがとう。でも、まだ話したことないのに、どうして日向が知ってるの?」





日向はまっすぐお母さんを見て、つぶやく。





「…それが、私の“夢“だったから。」





懐かしむお母さんの後ろには、ぼんやりと笑顔でうつるお父さんの遺影があった。





これが、父と私と母をつなぐワッペンのはなし。





おしまい。


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